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2012-06-23

高校生へのオススメ本の紹介や声かけ  高校生に読書を勧めない理由 に続けて。

以前、高校生に読書を勧めない理由という日記を書きました。

そのときは「読書は、高校生の成績に直結しません。学力向上のために読書を勧めるのは、指導として寧ろ不親切です。」でも「オススメ本の紹介や図書館利用についての声かけは随時行っています。」と続けています。その、紹介と声かけについて書いてみます。

 

異動と言いますか、着任なさった方が「一昔前の方針のまま授業しているようですね」と評したとかしないとか、という「教え込み」型が勤務校の現状です。当然、ペアワーク、グループワーク、言語活動を含めた授業もほとんど行われていません。況や図書館利用(調べ学習・読書指導・図書館の利用教育)をや。残念です、せっかく国語の教員なのに。司書の資格も司書教諭の免許も持ってるのに。

時間がなくても、学校図書館に協力をお願いできなくても、ほんの数分・少しだけの手間でできる何かはないものか……と考えた結果、やはり紹介することだろう思い至りました。twitterでフォローさせて戴いている司書教諭学校図書館司書の方々のお仕事を拝見すると些細に過ぎて恥ずかしい限りなのですが。

 

■授業中のアプローチ

基本的には、授業の進行に影響が出ない程度に行う、数分程度の紹介です。どれだけ効果をあげられるのか、まだ模索中。

ただ、「こういう本があってね…」ではなく、実物(自前の本)を持って紹介するように努めています。生徒は学校図書館に行くことをあまりしません。理由は様々で、遠い*1・休み時間は部活*2・個人面談や補習、教員への質問学習……など。ですから、目の前に実物があるって、実は影響力があるようです。更に「本を読む」というだけでもう敷居が高い生徒たちもいます。図書館だと背表紙がどどんと並んでいて、これまた敷居が高いようで。実際に本を見て「意外と薄っぺらいから読めそう」「表紙気に入った」などの感想もちらほら。

文学史と小説を扱うときには、必ず作者と作品紹介をします。そこで主要作品のあらすじをかいつまんで紹介。どの時代のどの作家でも、教科書に出てきたらそれなりに話せるようにしておきます。学校図書館に代表作品があるかどうかはチェックしておいてアナウンス。高校現代文の定番教材*3とその作者の代表作は紹介用・自前の本を常備しています。併せて豆知識―中島敦は実は子煩悩でパラオからたくさんの手紙を送っていた、などのエピソード―を話すと意外らしくって喜んできいてくれます。作家も人間ですもんね、身近に感じてほしいです。

文学作品についてのハードルを下げるように下げるように、画策中。

扱う教材は年度当初に決まっています。たとえば、芸術論・科学論・文化論・言語論・国際論・社会論……などと。教材研究の際に引用元の論文・著者の他の出版物・同じ分野の類書を、読む本リストにします*4。後は探して読む。流し読み程度でいいし、メモも雑に。教材研究の一環ですし、「著者はほかの本でもこう言ってて…」という小話にもなります。そして主に行っているのは類書紹介。昨年、とても幸運な教材がありました。リービ英雄『越えてきた者の記録』。国際論、或いは文化論。文学の越境についてのもので、教科書掲載箇所に次のような文章があります。

英文学では、サルマン・ラシュディカズオ・イシグロ、ベン・オクリといった、アングロサクソンの一員でない作家たちが、生粋のイギリス人として生まれた作家よりも独創的な作品を発表するようになった。日本人の多和田葉子ドイツ語で小説を書き、「私はドイツ語の歴史をつくっている」と発言した。

これは作品について話す絶好のチャンス。言及されている作家と類書にのリストを作成*5し、自分で作品と論文を集め、借り、買い、「ついでだけどね…」と授業終了直前に何気なく話してみました。食いついてくれた生徒がいた、幸運な例です。

古典も、必ず文学史の紹介をします。*6 これは単なる話題でなく覚えないといけません。もちろん定期考査にも出題します。時代・ジャンル・作品と作者、物語の成立順まで覚えるのです。

覚えなさい! と押しつけるよりも、あらすじや豆知識を紹介して興味をひくほうがずっといい。

紫式部日記』にある清少納言批判を紹介して、ほら、ふたりは同じときに宮仕えをしていたのよ。『更級日記』にある「なんとしても源氏物語が読みたいのっ」というくだりを話して、だから更級のが後だからね。……たぶん、どのような先生もなさっていると思います。小ネタ*7を話して文学史を終え、学校図書館に揃っている角川ビギナーズクラシックスを紹介したり。源氏メディアミックス(変ないい方ですが)されているのが代表的ですが、古典をヒントにした小説(やライトノベル)・漫画・映画もチェックして、できるだけ買います。そして授業に持って行って紹介。

 

■授業前後のアプローチ

上記、授業中のアプローチは教室にいる生徒全体に行うこと。けれど、ただ全体に話すだけ、で終わらせるなんてもったいない。

まず、授業で話すときに全体をよく見まわします。こちらの話題に反応している生徒、たとえば熱心に本を見ていたり、メモを始めたり。そういう生徒がこちらを見ているとき、必ず彼らと目を合わせます。ほら、って感じで。私がおもしろそうに話すことも大切だけれど、こうやって目を見て話すと反応がよくなります。

そうやって授業中に反応した生徒は、授業後に「今の本、見せてください」とやってきます。やってこない生徒にはさりげなく近づいて、「さっきの本あるけど、見てみる?」と声をかけます。これは本当に成功率が高いのです。(授業でひっかける、と、ひとりで呼んでいます。)

もっとダイレクトに、生徒個人にいきなり話しかけることもあります。授業開始前に席で本を開いていたり、生徒同士で本の話題をしているのが聞こえたりするときに。

 

これらの地味な声かけをするために、デスクにひとつ、本専用の抽斗を作っています。貸出用と、自分の教材研究に役立ちそうなものと。ここから貸し出したら、いつの間にかクラスの女子で回し読みしていたこともあります。また、アプローチに成功して、このささやかな私設図書館の常連になってくれる生徒ができました。彼女らのために、自宅の本棚を眺めながら蔵書構成を変えたり考えたり。

 

制約が多い中でできることは、ただ地味に、でもやめずに、紹介してゆくことだけです。そのときに気をつけているのは、本というものについての敷居をできる限り下げること。実物をもってゆくこと。そして、私が楽しんで話すこと。……なんてことない終結になってしまいました。お恥ずかしい。

*1:中高併せて4棟あるのです。私も数分かけてわざわざ出かけるところ。大儀です。

*2:昼練。野球部だと昼食をきちんと大量に食べているかを顧問に点検して貰ったり。

*3:『羅生門』→芥川龍之介、『山月記』→中島敦、『こゝろ』→夏目漱石…の作品

*4:教師用の指導書には大抵リストがあります。

*5:この記事を書くために、カーリルのレシピに投稿してみました。「国と言葉を越えてゆくこと

*6:さっきから文学史ぶんがくしと言っていますが、受験で問われるので大事です。私大文系であれば、日本史・古典・現代文のどれでも出題される可能性あり。

*7:そういう小ネタが詰まっているのは『日本人なら知っておきたい日本文学』。話の運び方、盛り上げ方をお勉強させて戴いてます。

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