語学留学は英語習得の特効薬にはならない

14年間アメリカに住んで日本人留学生の英語力を見てきた経験から確信を持って言えるのは、英語圏で住むことによる成果は、日本出国時の英語力に比例する、ということ。英語力が低ければ低いほど、英語圏では英語力は伸びない。

具体的に言うと、英検2級保持者が1年語学留学しても、英検準1級レベルをクリアできない人の方が多い。

もう一例。日本の中堅大学の日本人学生のグループが大学の留学にやってきた。

英語環境ドップリの1年間です。多くの学生が英検二級のA合格レベル(2級と準1の中間)さえクリアー出来なくて問題になってた。

それが厳しい現実です。

高額な金額&貴重な1年とまるで見合わない。

英語圏に住むのは、少なくともは英検準1レベルをクリアしてからの方が効果的。

わからない英語は英語ではなくて雑音。膨大な雑音を聞きに行くことになるような留学は避けた方が無難。

分かるからインプットがある。分かれば分かるほどインプットが増える。生活自体も「分かれば」それだけ面白い。

しかし、今年間の英検受験者は300万くらい?英検準1級以上の合格者は3万人くらいだから、単純計算だとわずか1%。

私の入試改革論

①本来『学習指導要領』の記述は到達の「目標」であり、②その目標到達の為に教材選択やシラバスティーチングプランが作られ、③その目標の到達度を評価(テスト)する。その評価を基に、教材・シラバスティーチングプランの改良、教育環境の改善へと具体的に進めていくことが可能となる。①②③は三位一体で、切っても切り離せない。

日本の英語教育では、例えば①の『学習指導要領』の「英語表現」では、発音、対話、スピーチ、プレゼンテーション、ディベートのそれぞれの項目に目標が示されているが(到達目標としてはかなりハードルが高すぎると思うが)、③の評価がゼロかかなり貧弱であり、②の日々のクラス活動が混乱していると思う。

文科省としては、①の『学習指導要領』から③『評価』がお互い同士で矛盾し合っている状況を何とかすべく、最近いろいろな方針を打ち出して来ている。方向性は今までやってこなかった「スピーキングのスキル」の評価の導入。

・基本クラスでは英語を英語で教える(2013年)
・CAN-DOリスト製作(2013年)
・中学・高校へのスピーキングを含んだテストの導入方針(2015年)
・英語の大学入試にスピーキングを含んだテストの導入方針(2017年)

去年文科省主宰でCAN-DOリストの作成導入された理由は、「英語の基礎をつける」といった抽象論から「英語で実践的に何が出来るか」といった具体論へ転換させたい意図が伺える。よく言われる「学校は英語の基礎を付けるところ」といった表現は、余りにも漠然としている分、この語の使用者それぞれで解釈がまちまちになる。抽象的過ぎて『学習指導要領』の目標の欄には書けないし、より具体性が求められるシラバスにも当然書けない(具体的ということであれば、ACTFL言語運用能力基準には10段階のレベルが細かく定義されている。それぞれの段階に+−を利用すれば30段階となる。ヨーロッパ共通参照枠の利用なども・・・)。

この肝心のスピーキングスキルの評価が貧弱であるという問題は、学校の英語プログラムだけでなく民間の英語プログラムでも当てはまる。日本の英語教育界に何が起こっているかというと、日々「画期的な」英語教育法、英語習得法が新たに生み出され続けるという現象が続いてしまっている。日本人の英語力はこの大変な英語ブームの中ほぼ横ばい。アジアでは最下位グループが定位置だと指摘され続けている。公教育では生徒の英語力はむしろ下がってきていると指摘されることも少なくない。

結論

英語の大学入試にスピーキングのテストの導入はもう待ったなし。それにより、学生指導要領に掲げられている①「目標」、その目標を達成するための②「カリキュラム」、その究極の③「評価」である入試に一貫性が生まれる。現状では①と③が互いに矛盾している。その結果②カリキュラムが大混乱を来たしているという状況で、それは生徒にとっても先生にとっても大変不幸なことだと思う。一刻も早くスピーキングを含めた英語の4スキルをバランスよく評価できる入試を導入して欲しい。TOEFL junior comprehensiveなどの外部試験の利用や文科省がテスト開発しても良いと思う。

http://d.hatena.ne.jp/anfieldroad/20140301/p1

新時代に相応しい高校生英語塾を目指して

時代を先取りする形の高校生英語塾を立ち上げました。

http://treebell-ivy.com/highschool.html

文科省はスピーキングを含めた英語のテストを開発して再来年から中学、高校に導入方針です。それに合わせる形で5年後の入試にスピーキングを入れる方向です。

これは方向性としては大変好ましいものだと思っています。スピーキングは他の3スキルを下支えしているからです。それ抜きのリーディングやライティング、そしてリスニングはなかなか伸びていきません。

例えば冠詞ですが、何年間にもわたりかなりカバーしても、冠詞を使ったセンテンスを生徒に使わせてみれば相当ガタガタであることが分かります。スピーキング中心ではそれは有り得ません。スピーキングスキルは、読みと違って英語のより深い理解とインプット・インテイクを求めるからです。

私たちのこの新しい英語プログラムは、米国務省アイビーリーグの大学の超異言語プログラムの行なっている考え方・方法と同じで、スピーキング中心に英語の4スキルをバランスよく習得していくというものです。

グラマーの詳しい説明があり、スピーキング中心の勉強が可能な『完全マスター英文法』がメインのテキストです。英語のコミュニケーションのやり方など英語文化を扱った『完全マスターナチュラル英会話教本』もサブテキストとして使います。

私たちの英語塾は、大学入試のレベルを超えたTOEFL iBTの受験出来るレベルにすることも目的ですので、リーディングとライティングもカバーします。英語の4スキルをテストするTOEFL iBTは、留学のみならず公務員試験など(一部の大学入試にも)に使われる可能性があります。それと、来年から日本上陸のTOEFL junior comprehensive(やはり英語の4スキルをカバーしており、受験料は4千円ほどで、日本で急速に広がる可能性があると思われます)はいろいろな学問分野、つまりアカデミックイングリッシュを扱っています。

なので、英語のリーディングでアカデミックな内容、自然科学、社会科学、人文科学分野を扱う必要があります。これは当然高校生が学んでいる科目に密接に関係あるし、大学に入っても一般教養で勉強する内容です。私たちの塾では、例えば生徒が学校で今「太陽系」について習っているとすると、リーディングのトピックで「太陽系」をカバーし、高校でのクラスの予習か復習になるようにしています。

そのリーディングのためのテキストプックですが、私たちは紙のテキストブックを中心には使いません。ネットで英語での情報が無限にある時代になっており、紙のテキストは古風になりつつあります。たとえばネットではwiki juniorやsimple English wikipediaがありますが、英語力がまだ限られていてもこのレベルの英語はかなり大丈夫です。自然科学、社会科学、人文科学からのさまざまな分野をカバーしており、細部に渡っての項目に分かれています。

例えばSolar Systemのintroductionでは以下のようになっています。https://en.wikibooks.org/wiki/Wikijunior:Solar_System/Solar_System
イラストや写真が充実しており、テキストよりかなり充実した内容です。それぞれのトピックがほどよい長さで読み切りになっています。英語の勉強になるのみならず、学校の勉強の助けになるし、TOEFLを受験する場合圧倒的に有利です。

私たちの塾の特長は、グラマーのセッション以外は英語で行なう直接法です。『完全マスター英文法』を使ったスピーキング中心の圧倒的な量の英語のインプット・インテイクでオーラル英語習得を進めていき、リーディングのセッションが英語でのやりとりが可能になって行きますので、リーディングのセッションは日本語ではなく、英語で行なえるのです。つまりリーディングで、「話す」「聞く」の復習となり、「書く」ための予習となっています。

2時間のクラス時間は『完全マスター英文法』を使ったオーラルスキルアップのセッションが5分の2、英語でディスカッションするアカデミックリーディングのクラスが5分の2、残りの5分の1は日本語でのグラマーのセッションです。クイズがあり、オーラルテストもあり、ライティングの宿題もあります。

高校3年生時は、大学入試の英語のテスト対策、TOEFL iBT受験対策がかなり入ってきます。しかしパターンは同じで『完全マスター英文法』でスピーキングのスキルを上げながら、受験のテスト対策をします。冒頭に述べたように、スピーキングのスキル向上がベースにないと、リスニング、リーディング、ライティングのスキルアップはなかなか難しいからです。

① T: You are visiting your American friend Tom, OK?

(クラスの状況の記述:黒板にTomの部屋のドアのビジュアルエイドがあり、訪問する役の生徒達はその黒板の横に立たせます。Tomの役の学生にはTomのポストイットを張っています)

生徒は黒板に貼ってあるビジュエルエイドのドアをノックします(注1)。

注1:日本ではドアのノックは2度ですが、アメリカではその倍前後で、2度だけのノックであれば少し奇妙な響きになりますので、そう言ったアイテムの自然さも生徒に気を付けさせます。

② S1 (Tom役): Who is it?
③ S2: Yoko and Takashi.

(クラスの状況の記述:先生がTom役の生徒にドアを開けるジェスチャーをさせます。先生が無言でその開けるジェスチャーを見せればその生徒に伝わります)

④ S1: Oh, Hi! How are you?
⑤ S3: Fine. And you?

これが1つのまとまったシーンですが、すんなりこのドアの所でのシーンのインターアクションが上手く行かない場合、他のグループの生徒に同じことを繰り返させます。生徒の英語の不自然な部分は、先生から、又は他の生徒からこまめにモデルを示しフィードバックをしていきます。又、指名された生徒から英語が出て来なかった場合、他の生徒にふりモデルとなる英語を引出し、その指名された生徒に戻し繰り返させたりもします。

(クラスの状況の記述:ビジュアルエイドでTomの部屋がかなり乱雑であり、靴が非常に汚れていることを示します。この時点ではTom, Takashi, Yokoの役は他の生徒になっています。ビジュアルエイドを提示したり、生徒をチェンジしたり等はdead timeを少なくする為にテキパキと行います)

⑥ S4: Hey Tom. Your room is very messy!
⑦ S5: And your shoes are very dirty, too!

⑥と⑦のセンテンスは生徒がクラスの準備の為に暗記して来たものですが、センテンスに含まれているグラマーの説明も理解して来ているのを前提でクラスを進めて行きますので、下の⑧のような応用的なセンテンスもビジュアルエイドを使って生徒から引き出して行きます。

⑧ S6: Your glasses are under the table.
⑨ T: Where are Tom’s glasses?
⑩ S7: They’re under the table.

⑨の先生の英語での質問は、⑧までのシナリオの流れから一時的に離れたもので、生徒に文法的な理解の確認をしたセンテンスです。ですので、“カンバセーションパートナー”の役割ではなく“クラスルームディレクター”として生徒に質問をしたという感じになります。⑩で答えている生徒は、「1つのメガネ」はglassesの複数形ですので、代名詞はtheyで受けるのであってitで受けるのは誤りであることを知っているかどうかテストされているわけです。

そして、再びシナリオの流れのあるコンテクストドリルに戻ります。

⑪ T: Ask Tom where his roommate is.

(先生の“クラスルームディレクター”としての英語での指示です)

⑫ S8: Where’s your roommate?

(クラスの状況の記述:ビジュアルエイドであるアメリカの地図があり、トラックに家具を積んでオレゴンに引越しして行ったビジュアルエイドを使います)

⑬ S9: He moved to Oregon.

(この時点でシナリオの流れから逸れて、「引っ越して行った」の他のバラエティーをビジュアルエイドを使ってチェックします)

⑭ S10: He moved up to Minnesota.
⑮ S11: He moved down to Mississippi.

以上がシナリオとそれをサポートするビジュアルエイドを使ってのドリルの大まかな流れですが、このシナリオドリルタイプのものはオーラルテストでも使います。

ここで注意して頂きたいことは、シナリオ的なティーチングプランは使いますが、このメソッドはドラマメソッド的に生徒に物語をそっくり丸暗記させる方法とは質が全く異なると言うことです。私がここでご紹介していますドリルのシナリオは、あくまでも先生の側が生徒から引き出したいと言う英文の羅列です。しかもそれらのセンテンスにシナリオ的なつながりがあります。生徒は、先生が導く物語がどんな展開を見せるのか事前には分かりません。先生が生徒に状況を与えて、それに反応する形で生徒に英語のクリエイトをさせると言うことですが、これは実際の英語でのコミュニケーションのパターンと同じです。実際の英会話でも、英語を使う状況があって、その状況の変化に応じて話者は英語をクリエイトしていくわけです。

vs[名詞+of+名詞]

[名詞の所有格+名詞]vs[名詞+of+名詞]

[名詞の所有格+名詞](Elizabeth Taylor's eyes)が[名詞+of+名詞](the eyes of Elizabeth Taylor)にいつも書き換え可能なわけではなく、一応3つのルールがある。下の順序は(1)から(2)そして(3)で、その順序が崩れると不自然な句になりやすい。

(1) 人を表す名詞、または体の部分を表す名詞が先行する:Tom, actress, eye, leg

(2) 人を除く生物は(1)の名詞より後で、(3)の無生物を表す名詞より前:dog, cat

(3) 無生物を表す名詞が一番後ろ:cushion, table

Tom's dogはいいがthe dog of Tomは不自然。 the actress's hairとthe hair of the actressはどちらも可能である。the cat's cushionは自然で、the cushion of the catは不自然。a leg of the tableはいいが、a table's leg は不自然である。

ただし、名詞が他品詞からの派生語であれば例外となる:discovery(動詞discoverより)など多数:Columbus's discovery ― the discovery of Columbus (the discovery of Columbus'sも可能であるが、'sのない方が一般的。Columbus'sの-s'sの発音は-sesと同じ発音)

韓国で遂に大学入試にスピーキングのテスト導入か

あるブログにこう書いてありました。

>2015年を期して、全国的に大学入試としてスピーキングテスト(キューに対してスピーチを録音するもの)を導入する計画で準備をすすめている、そうな。

ツイッターで英語で書くこと

ツイッターのタイムラインに、英語での投稿が流れ出すのはちょっと辛いものがあります。日本人の英語ですから、様々なレベルの英語で、多かれ少なかれ間違いや不自然さが書き手の英語力に比例して出てくると思います。

ラジオをつけたら、多かれ少なかれ日本人的間違いのある英語でのトークだったと言ったような話で、英語の勉強をしているのであればそういったラジオ放送はやはり聴かない方が無難だと思う。その中の英語の間違いや不自然さに応じて英語学習者にとっては害が大きくなりかねないと思うからです。読んだり聞いたりする本人が日本語が分からなくて英語で書いてあげたり喋ってあげたりするのは必然性がありますが、そうでなければ発信するご本人達中心の考え方での行為だと思う。

出来るだけ英語の勉強をしようという姿勢は大変貴重なことだとは思いますが、もっと他の必然性のある方法があるのではないでしょうか。