衛星「ひとみ2」打ち上げへ 20年代前半目標に再挑戦 [47NEWS]
軌道上で分解したエックス線天文衛星「ひとみ」の代替機の打ち上げを宇宙航空研究開発機構(JAXA)が検討していることが21日、政府関係者への取材で分かった。主力ロケットH2Aの後継機となるH3ロケットに搭載し、2020年代前半の打ち上げを目指す。ブラックホールなどに焦点を当てた新しい宇宙研究を停滞させないため、開発期間が短い、ほぼ同型機での再挑戦となる。
関係者によると、代替機は全長14メートル、重さ2.7トン、エックス線望遠鏡4台とガンマ線検出器2台を搭載したひとみの基本設計を踏襲する。
検討は当然行われているでしょうね。国際協力ミッションですし、各国からの期待は依然として大きいでしょう。JAXAが物凄い早さで、ミッション単位ではなく組織レベルで見直しを図る背景にはこうした空白期間を拡大したくないという思いからもあるでしょうし。「ひとみ」の設計そのものには、設計思想の傾向というものはあるものの優れた機体だったことには違いありません。5年後となっても確実に最新鋭でしょう。運用ミスの連鎖で取り返しの付かない結果を引き起こしましたが、ミスを確実にリカバリーする態勢を構築し、機会が得られるならば次こそ使命を全うして欲しいと思います。
X線天文衛星ASTRO-H「ひとみ」の今後の運用について [JAXA]
また、複数の海外機関からも太陽電池パドルの両翼分離を示唆する情報を得たことから、これらの情報に基づき、今後衛星が機能回復することは期待できない状態にあるとの判断に至りました。
以上の判断を踏まえ、衛星の復旧に向けた活動は取りやめ、今後、今回の異常に至った原因究明に専念することとし、ASTRO-Hとしての設計/製造/検証/運用の各段階において今回の事態に至った要因を調査し、背後要因も含めた原因を徹底的に究明いたします。
非常に残念な結果です。2月の夕刻、美しい軌跡を残して飛び立ち、新たな叡智をもたらしてくれるという期待と希望を胸に「ひとみ」と名付けられたこの衛星が、わずか1ヶ月でこのような最期を迎えるとはあまりにも胸が痛んで言葉になりません。
パドルが根元から破断したとなるとおそらくバッテリーが枯渇した時点で衛星機能は完全に喪失されていたと思われます。ソフトウェア的な問題でハードウェアを暴走させ結果的に致命的な破壊をもたらすという前代未聞のトラブルです。今後JAXAをあげて原因究明・組織的対策が講じられると思われますが、各国の協力のもと国際的にも期待の高かったこの衛星が失われたことで生じる空白はとても大きいですし、「すざく」の例のようにASTRO-HIIとしてリベンジが行われる可能性も無いことは無いと思いますが、鳴り物入りの大型計画がこのようなトラブルに見舞われたとあってはかなりシビアな対応を迫られることでしょう。もちろん今後予定されている数々の計画に対しても一斉チェックの水平展開は避けられません。
これから宇宙に飛び立つ衛星たちをこのような悲しい目に遭わさぬよう、徹底的に洗い出しを行ってもらいたいと思います。
UAEドバイのMBRSC から火星探査機打上げ輸送サービスを受注 海外顧客から4件目 [三菱重工]
おお!?
三菱重工業は、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ政府宇宙機関であるMBRSC(The Mohammed bin Rashid Space Centre)から、火星探査機の打上げ輸送サービスを受注しました。UAE建国50周年を迎える2021年に、中東初となる無人探査機の火星到着を目指すもので、2020年にH-IIAロケットでの打上げを予定しています。今回は海外顧客から4件目の衛星打上げ輸送サービス受注となります。
この火星探査ミッションは、アブダビやドバイなど7首長国によるUAE連邦政府が2014年7月に設立したUAE宇宙庁(Space Agency)が統括し、MBRSCは火星探査機設計等技術面の取りまとめを実施しています。
なんと、深宇宙探査機の打ち上げを受注。これは予想外でしたw でも確かに探査機打ち上げとなると単純にコスパの話だけでなく、オンタイム性の非常に高いH-IIAはだいぶ有利そうです。
■アラブ首長国連邦宇宙機関との機関間協定の締結について [JAXA]
本協定を締結することで、JAXAがこれまで培った宇宙開発利用の技術・人材を活用し、互恵的な協力関係の構築を目指します。今後、宇宙活動に関する研究開発・利用、国際宇宙ステーション「きぼう」の利用、人材育成等の分野で相互協力を深めるため、協議を進めていきます。
関連してかこのような話も。
はやぶさ2 Ryuguへ向けてイオンエンジンによる動力航行開始! [JAXA]
火星の生命調査へ 欧州とロシアがロケット打ち上げ [NHK]
カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられたのは、ヨーロッパ宇宙機関とロシア宇宙庁が共同で進めているプロジェクト「ExoMars」のロケットです。
このプロジェクトは火星で生命の存在を探ることを目的としていて、ことしと2年後の2018年に実施される2つのミッションで構成されています。今回のミッションでは、ロケットの先端に載った宇宙船が今後7か月火星まで飛行を続け、ことし10月に到着する予定で、陸上探査機を切り離したあと宇宙船みずからが火星の軌道を周回する衛星となり、大気のサンプルを回収することになっています。
ロシアの火星探査は昔からなかなか上手く行かないことが多く、近年では「フォボス・グルント」の失敗もありました。今回は見事に打ち上げに成功したようです。無事に到着することを祈ります!
X線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)の通信異常について [JAXA]
平成28(2016)年2月17日に打ち上げられたX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)は、3月26日(土)の運用開始時(午後4時40分頃)に衛星からの電波を正常に受信できず、その後も衛星の状態を確認できない状況が続いています。現時点で、通信不良の原因は不明ですが、短時間ではあるものの衛星からの電波を受信できたことから、引き続き衛星の復旧に努めております。
この衛星状態を受け、復旧及び原因調査に万全を期すため、本日、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構内に理事長を長とする対策本部を設置し、第1回会合を開催いたしました。ひとみの通信の復旧及び原因調査について全社的に取り組んでおります。対応状況、調査結果については随時お知らせいたします。
これは非常に心配な事態です。
米戦略軍統合宇宙運用センター(JSpOC)によると、ひとみ(ASTRO-H)のブレークアップは世界時26日午前1時42分頃(日本時間10時42分頃)とのこと https://t.co/kgSPt3rbyB
— isana (@lizard_isana) 2016年3月28日
通信が途絶したX線天文衛星「ひとみ」。28日20時20分、詳細を確認するため500mmで拡大撮影。機体の破壊が心配されますが、8等級までの破片は確認できず。小刻みな変光が見て取れ、姿勢を崩して複雑にスピンしていることが考えられます。 pic.twitter.com/XpOuvD2JHD
— 三島和久・アニリン・レモンパスタ部 (@C6H5NH2) 2016年3月28日
【参考】ASTRO-Hの近地点・遠地点高度の変化(新しいTLEがでていたのでグラフを更新) https://t.co/kLrLQpPAls
— isana (@lizard_isana) 2016年3月28日
地上からの観測報告では、明るくなったり暗くなったりを繰り返している(機体が回転している)のと併せて、1つの物体しか見えなかったとも報告されています。つまり「ひとみ」から発生した5つの物体は、地上から望遠鏡では見えないほど小さなもので、機体の大部分は残っている可能性が高いです。
— Shinya Torishima (@Kosmograd_Info) 2016年3月28日
米軍が「5つの物体が発生しているのを確認した」としているのは、望遠鏡ではなく、レーダーを使って検知したものです。レーダーを使えば、望遠鏡では見えない数cm程度の小さな物体でも、「そういったものが存在すること」は検知できます。ただ、その物体の正確な大きさや形、色などはわかりません。
— Shinya Torishima (@Kosmograd_Info) 2016年3月28日
米軍のレーダー観測によると、何らかの物体が「ひとみ」周辺に5つ発生したとのこと。これらが何であるかは不明ですが、「ひとみ」由来である可能性が高そうです。スペースデブリの衝突による影響も考えられますが、「ひとみ」の推進剤あるいは液体ヘリウムタンクの急激なリークによる可能性も指摘されており、いずれにしろまずは通信だけでも回復することが望まれますね。
あくまで希望的観測ですが、もしこれが推進剤などのリークによるもので、発生した物体が断熱材などの一部の外装であれば、機能を回復できる可能性は少なくないのではと思います。「ひとみ」は先月打ち上げられたばかりでバッテリは新品同様ですし、また液体ヘリウムが蒸発してしまっても5Kまで冷却可能な機械式冷凍機を備えており、その場合でも時間的制約付きですが観測ミッションを継続することは可能です。
「あかつき」の状態について [ISAS/JAXA]
一部報道にありましたように、金星探査機「あかつき」について、2月20日(土)の臼田局運用でテレメトリが取れず、コマンドも効かない状況になりました。翌2月21日(日)に、当初から仕込まれたタイムラインコマンドにより、通信するためのアンテナが自動的に変更され、地球との通信が回復しました。
今回の通信不通の原因は、コマンド入力の際に、不適切な姿勢系制御パラメータを探査機に送ってしまったためで、あかつきの通信・観測機器の問題ではありません。また、探査機の状態が健全であることを確認しました。
対策として、運用方法を見直すと同時に、コマンド入力項目について、チェックする手順を整えました。
今後の観測への影響はなく、2016年4月頃から本格的な観測を開始する予定です。
うむ、一部パラメータに誤りがあったため姿勢が乱れたということのようです。あらかじめ設定されていた通信復旧コマンドが作動して通信が回復したとのこと。機体に問題は無いようで一安心です。まあ、こんなふうに姿勢の乱れで通信が一時的に途切れるということは気象衛星や通信衛星でもたまに起こっていますので、しっかりリカバリできているのなら何よりです。