鎌倉は山上に茶室を構える某数寄者の恒例の茶事、毎年初冬から春にかけて開かれるが、今年は諸事情から2ヶ月以上も早い9月21日に行うこととなった。
懐石を依頼された当方は、近年9月に手がけた記憶がなく、一週間前から食材売り場を見て歩き、献立を決めたのは茶事2日前のことだ。
亭主と客の4人はいずれも男性。席入りは11時、懐石ののち中立ちがあり、続く後座は濃茶、薄茶の流れだ。
この日の手伝いは3人、水屋を仕切る老舗茶道具商の某氏、お庭方、そして料理方の当方である。
器は目利きの亭主が蒐集した桃山期や朝鮮の古陶磁であり、毎度のことながら料理の盛付けに心が躍った。
席中は慌しい水屋とは異なり、わきあいあいとした様子。「美味い」との声も聞こえてきた。
幸いなことにおかわり所望の声もいただき、茶事手伝いも久方ぶりの当方、胸をなでおろしたものである。
献立
- 向 う 平目昆布〆 冥加・大根、山葵
- 煮物椀 海老真蒸、松茸、短冊人参、青菜、青柚子
- 進 肴 海鼠酢
- 穴子、里芋、隠元の炊き合わせ
- 菊花、春菊、しめじの和え物
- 小吸物 冬瓜、梅干、味噌仕立て
- 飯 蟹と生姜の蒸飯(筍の皮に包んで)
- 香 物 水茄子、胡瓜
- 菓 子 金沢 秋の月
香の物が運ばれると亭主は席中にて相伴となり、何やら会談に移られたようであった。この間、手伝い方3人は慌しく昼食をとる。
ほどなくして膳が下げられると、また水屋は多忙となる。懐石道具の清めを終えれば、料理方の仕事は完了である。
当方は後座の途中で辞したが、水屋を取り仕切る某氏はこれからが本番であり、茶事の終了後、道具の仕舞付けまでを手伝われる。
当日は始まりから辞するまで氏の適切な指示に助けられた。感謝である。