(6)〜(12) マンガと基本文献で学ぶ社会学

一回ずつに分けて掲載してきた、「マンガと基本文献で学ぶ社会学」をテーマとしたブックレビュー。
面倒くさくなった(笑)のと、学生向けブックガイドのニーズがあるのとで、一挙にまとめて掲載。






<第6回>つまらない「世の中」を楽しく生きられるか(その2)
〜人は、まったり生きられない? やはり何か「目標」「夢」は必要か?いつまでも戯れてはいられない?



ヘルタースケルター (Feelコミックス)

ヘルタースケルター (Feelコミックス)

『へルター・スケルター』岡崎京子
 第5回目で紹介した『東京ガールズブラボー』とともに読んで欲しい。その、あえて戯れる生き方の危うさを問題化した一作。本作の直後、岡崎自身が事故に遭い、その後の作品は途絶えてしまった。しかし、その問いかけは今もなお続いている。


『絶望 断念 福音 映画』宮台真司
 “あえて”ではなく、誰もが“素で”「まったり」してしまった21世紀。これは永久に続く退屈の序章であり、我々はこの退屈に生きるしかないのか、それとも抜け出すべきなのか。「まったり革命」からの「転向宣言」の一冊。








<第7回>戦争について考えよう
〜「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」が相次いで公開。平和国家日本に生きる我々であっても、考えずにすむことはありえないテーマを考えよう!



〔コミック版〕はだしのゲン 全10巻

〔コミック版〕はだしのゲン 全10巻

はだしのゲン中沢啓治
 戦争映画が数多く上映される今、読んでおきたい作品。小学生のときに読んで以来、記憶に焼きついて離れない人も多いはず。戦争体験の証言者が減り続ける中で、マンガだけは雄弁に語り続けてくれる。私たちもそれに耳を傾け続けなければならないだろう。



戦後日本のなかの「戦争」

戦後日本のなかの「戦争」

『戦後日本のなかの「戦争」』中久郎編・世界思想社
 敗戦を境に、日本は直ちに平和国家となったわけではない。むしろ戦後社会の中で、「戦争」の影はいたるところに残された。男の子文化、自衛隊、そしてナショナル・アイデンティティ・・・。新たなる時代へのスタート地点だからこそ、振り返って読みたい一冊。








<第8回>戦後日本を考える
〜戦争の次は、戦後の日本社会を考えてみよう!



手塚治虫物語―オサムシ登場1928~1945

手塚治虫物語―オサムシ登場1928~1945

手塚治虫物語 オサムシ登場1928〜1959 』『手塚治虫物語 漫画の夢、アニメの夢1960〜1989』伴俊男+手塚プロダクション
 戦前〜戦後の昭和文化史を知るための一冊。ある一つの人生を通して、マンガだけでなく、この社会全体の変化をわかりやすく理解することが出来る。私は机の傍らに置いて、眠気覚ましによく読む(徹夜続きであったという手塚のエピソードを私自身の糧として)。


嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス)

嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス)

『嗤う日本のナショナリズム北田暁大
戦後〜平成期の文化を考えるための一冊。1970年代以降、中身のないものへのウラ読みを楽しんできたはずの若者文化。それが今、なぜ素朴に右傾化し純愛にハマるのか。2ちゃんねるなどを題材に「反省」の変容史を描く。新進気鋭の社会学者の書き下ろし。







<第9回>SF再考
〜社会を少し引いた目から見るための訓練としてSFに注目する。




藤子・F・不二雄異色短編集1 ミノタウルスの皿』藤子・F・不二雄小学館文庫)
 『ドラえもん』で有名な作者の異色短編集。表題作「ミノタウルスの皿」では、宇宙船搭乗員が、ヒトがウシの家畜として飼われる星に不時着する。作者の言葉を借りれば、こうした「少し・ふしぎ(S・F)」な体験は、自分の世界観を見つめなおすきっかけにもなる。


UFOとポストモダン (平凡社新書)

UFOとポストモダン (平凡社新書)

『UFOとポストモダン木原善彦平凡社新書
 当初、優れた科学を持った金髪の白人として描かれていた宇宙人は、やがて灰色をした邪悪な存在や、昆虫などへとそのイメージを変えていく。その変化から、現代の社会が「ふしぎなもの」を喪失し、さらに「現実感」すら希薄化させていく様子を描いた好著。







<第10回>男らしさ再考〜社会を引いた目から見ると、「あたり前」だと思っていたものの「あたり前さ」が崩れてくる。
そんな一つの事例として、昨今の「鉄子ブーム」から、女性と(鉄道)趣味の関連について考えてみたい。



鉄子の旅 (1) (IKKI COMIX)

鉄子の旅 (1) (IKKI COMIX)

鉄子の旅菊池直恵小学館
 テレビドラマの放映も始まり、今、鉄道ファンが注目を集めている。作中の「旅の案内人」こと横見氏は、国内鉄道全線全駅下車というタイトルホルダー。一般人や特に女性からすれば一見意味不明の、しかしその奥深い楽しみの世界をわかりやすく知るために。


女子と鉄道

女子と鉄道

『女子と鉄道』酒井順子(光文社)
「茶道や華道に勝るとも劣らぬ、深い魅力」を鉄道に感じる女性ファンも増加中という。『負け犬の遠吠え』で有名なエッセイストが、新幹線の「イケメン度チェック」などユニークな分析を展開する本書からは、いい意味で「男らしさの文化」の時代変容を感じる。







<第11回>多元的現実を考える〜「社会を引いた目から見る」、その見方が一つではなく、複数あるということを体得するために。



ラヴァーズ・キス (小学館文庫)

ラヴァーズ・キス (小学館文庫)

ラヴァーズ・キス吉田秋生
 主人公の高校生男女カップルに加え、その男子に憧れる男子(にさらに憧れる男子)、その女子に憧れる女子(に憧れる女子)たちの青春群像。時間を共有していても、考えていることは異なる。異質な他者と繰り返し出会う現代に、現実の「多元さ」を知るための一作。


放送禁止歌 (知恵の森文庫)

放送禁止歌 (知恵の森文庫)

放送禁止歌森達也
同名のテレビドキュメンタリー番組の製作過程を描いた一作。世に知られる「放送禁止歌」は数多いが、それらに明確な根拠などなく、ただマスメディアが「自主規制」しているだけだった。思考停止しがちなアタマに、世の中の当たり前さを疑うための好著。





<第12回>終わりなき日常を生きる
〜かつて思い描いていたより、何もなかった「未来」。しかしながら、そこに到達した我々は、それでも生きていかなければならない…。そのために必要な知恵とは何か?



ソラニン 1 (ヤングサンデーコミックス)

ソラニン 1 (ヤングサンデーコミックス)

ソラニン浅野いにお
何もない現代を、それでも懸命に生きる若者たちをさわやかに描いた一作。ラストシーンの切なさに、不覚にも涙してしまいました…。 アジアンカンフージェネレーション(特に名曲『ループ&ループ』!)を聞きながら読みたい一作。


デジタルメディア・トレーニング―情報化時代の社会学的思考法 (有斐閣選書)

デジタルメディア・トレーニング―情報化時代の社会学的思考法 (有斐閣選書)

『デジタルメディア・トレーニング』
ケータイにネット・・・。私たちは、今まで思い描いてきた「未来」の中にいる。いわば、ドラえもんのヒミツ道具の多くを、手にしてしまったようなものだ。果たして次は、どうすればいいのだろうか。そんな「便利すぎる未来」を生き抜くための思考法を説く一冊。