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 移行後のはてなブログ:izumino’s note

“回る”と“ひきかえす”──語彙の収集について

 漫研さんより、今日読んだLDさんの記事を紹介します。

 タメになります。週刊誌の漫画の感想を書く人は、是非参考にしましょう。*1

*1:勿論そのままマネしろ、ってわけじゃないですが

関係無いかもしれない余談

 最近良く感じることは、「語彙の少なさは、そのまま思考の乏しさに直結する」という問題です。具体的に説明するのは難しいのですが、人間は言語を用いて思考する存在である以上、「持っている語彙のレパートリーの範囲のみでしか物事を考えることができない」ということを自覚する必要があります。


 例えば、あいつはバカだ、アホだ、いやボケだ、と言って他人を評するのは簡単なのですが、そういう言葉が口から出る(口から出るだけでなく、本人もそう思い込もうとしている)のは、ひとえに「その言葉以外にその人を表現する言葉を知らない(思い付かない)」からに他ならないからだと思います。
 そこでひょんなことから「せっかち」という言葉を知らされる(思い付く)と、「ああ! 確かにあいつは“せっかち”だ!」と膝を叩けるようになり、それからはバカとかアホとかボケとかいった言葉は用いられなくなります。本当の「あいつ自身」は、アホでもバカでもボケでもない、ということは薄々感じていたからです。


 本当は「あいつ自身」のことを語りたいのに、うまく語れない、というのと良く似たジレンマを抱えたまま、我々はいつも他人について/自分について/作品について考え、語っているのだと言えるでしょう。
 語彙を増やすということは、そのジレンマをいくらか解消してくれる行為です。ブログ時代と言われる今のインターネットですが、テキストの世界、つまり「文章が支配する世界」に新規参入してくる若い皆さんにこそ、「まず語彙を増やすことから始めよ」という意識を強く持ってもらいたいなと思っています。無論、闇雲に語彙を増やすだけでなく、自分の中にうまく消化吸収していかなければなりません。
 ただ言葉を覚えるだけでは、語彙を増やしたことにはなりませんから、その言葉が「どういう使われ方をしているのか」「その言葉を口にした時、他の人はどんなことを思うか」といった様々なことを感覚的に把握できなければならないでしょう。
 またそれには、難しい専門用語などよりも、平易で日常会話で用いられるような、柔軟でソフトな語彙を中心にして集めるようにすると尚良いと思います。学術的すぎる専門用語は、「用いられる分野が限られた定義」と常にセットになっていて、それは思考の硬直化を招きやすいからです。