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Fri 2007.02/23

一文字付け加えてみる遊び

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一人はみんなの為に、みんなは一人の為に ――One for all, All for one

一人はみんなの所為に、みんなは一人の所為に ――One blames all, All blame one

ステンドグラスと物語

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 最近西洋美術史について簡単に勉強している最中なのですが……。

 興味深い研究だったのでクリップPDFファイルです)。

 難解なテクスト(視覚的イメージも含む)の受容者は、そのリテラシーの差によって「読める層」と「読めない層」に二分されるのではなく、「その中間を媒介する、説明役の層」もあったんじゃないかという考え方も提示されていて、それは現代の物語全般にもあてはまる話だと思います。


 ステンドグラスの歴史も面白そうですね。

 西洋の方のコミック研究じゃ、日本鳥獣戯画や絵巻物と同じような文脈でステンドグラスが出てきたりして。コマ割りっぽいと言えばそういう所もありますしね。

 「漫画起源はラスコーの壁画から」式のジョークで言うなら、エジプト美術とかも起源の内に入るのかもしれませんが。

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Thu 2007.02/22

漫画購入録/武富智『EVIL HEART 気編』

| 漫画購入録/武富智『EVIL HEART 気編』を含むブックマーク

 既刊が3巻まで出ていた『EVIL HEART』の、オール描き下ろしとなる完結編。

 合気道という武道武道精神を学べる漫画ではありますが、個人的な興味の観点から言えば「漫画登場人物における、成長とは何か?」というテーマにも一つの答えを与えているような感覚が『EVIL HEART』にはありました。「成長」というのは、漫画に限らず、物語における永遠テーマの一つだなぁといつも考えてますので。

 ここでキーワードとなるのは、「変化させるのではなく」「潜在能力を開くように」です。


 『EVIL HEART』で描かれているのは、少年漫画的な「ひたすら強くなる」の先にある世界であって、だからこそ「青年漫画らしい」テーマだとも言えそうですね。*1


EVIL HEART 気編EVIL HEART 気編
武富 智

集英社 2007-02-19
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*1:これは、更に私見的に言えば、荒木飛呂彦SBRで展開している「生長」の概念とも組み合わせて論じられそうだなと思ってたりします

izuminoizumino 2007/02/23 03:17 あぁ、あと「『拳児』が描ききれなかった所まで描ききった」という見方の評価もアリですね

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Wed 2007.02/21

izumino2007-02-21

先週をおさらいしながら読む今週のスクラン(♯212,213)

| 先週をおさらいしながら読む今週のスクラン(♯212,213)を含むブックマーク

 上ふたつの記事の続きとしてどうぞ。


 さて今週の話は、「先週までの時点で暗示されていたこと」をそのまま利用したエピソードになっていると思います。

 その先週と言いますと、

f:id:izumino:20070222023052j:image

この天満を見る沢近の表情」をどう読むか? というのが大きな問題になってきます(作中では何の説明も無し!)。

 ぼくがまっさきに連想したのは、♯205のココ↓でした。

f:id:izumino:20070222023130j:image

私に魅力が ないってこと? ありえない!!

ハッキリ言って 見た目も中身も 天満より断然 私の方が上じゃない!!*1

 多分、沢近の心の中では、この時まで気持ちが遡ってるんですよね。

 更にその前にも、


「自分に無くて、天満にある(播磨を惹きつけられる)要素ってなんだろう」

f:id:izumino:20070222023957j:image

って考え込むわけですが……(♯203)。

f:id:izumino:20070221075954j:image

 その時点では、「ドジでアホなところ」という仮の答えで自分を納得させていた所に、「本当の答えが見つかった」という――。

 つまり、天満女友達に好かれる才能」を、「男(播磨)にも好かれる要素」としても認識できていなかった所に沢近の転落劇があったと思うのですが、先々週と先週で天満の魅力」を思い知らされたわけですよね。


 そして、その沢近が素直に頭を働かせば播磨にも好かれる充分な理由」として「天満の魅力」を受け入れられるわけで。

 「自分並のいい女」でなければ恋敵にはなりえない、なんていうプライドの高い思考をしていた沢近が、天満を「いい女」だとやっと認めることができて、かつて「女としては自分より下」だと思っていたことを心の中で悔いつつも謝罪している表情なんじゃないかと。どうですかね?


 しかし、そういった葛藤沢近の心の中だけで解決してしまう」*2というのが凄いですが。沢近、一言も天満に謝ってませんからね(笑)。*3

 その分、天満への負い目や借りの感情も積み重ねられて、余計に天満に対して甘くなりもする……という関係性がスクランらしい所なのですが、まぁタチが悪いですね(笑)。沢近萌えの友人はむしろ「ますます萌えるようになった」と言ってましたが。


f:id:izumino:20070222023312j:image


 それにしても、なんとなく目は笑っているのに、眉はひそめてて口は引き締められているという、なんとも表現しづらい複雑な表情ですね。無言だし。

 これをラストのコマに持ってこれる小林尽は度胸あるなぁと。

結局どこまで気付けたのか?

 で、その「答え」に辿り着くことができた沢近がもう少し物分かりが良ければ、八雲「エビが好きなんです」っていう言葉にも辿り着ける筈なんですよね。

f:id:izumino:20070221080225j:image(♯205)


…いいえ

まだ 気がつかないん ですか?

播磨さんは… エビが 好きなんです

 もし、うまく沢近の頭の中で「エビが好きなんです」に繋がってたなら、「ああ、播磨天満のこういう所が好きなのか」って理解するカタチでしょうね。


f:id:izumino:20070222020239j:image(♯213)

もしかして… ってのなら あるけど

きいてない

 今週のこのシーンでも沢近は無言ですが、頭の中にあるのは多分その「理解」でしょう(と思いますが)。


 更に言うと沢近は「播磨天満が好かれる理由」と一緒に八雲天満尊敬している理由」も今回認識させられたと思うので、「八雲に対する理解」も少しは深まっている筈じゃないか、という気もします。


f:id:izumino:20070222022426j:image(♯212)


 表面上はあまり進展が無いように見える沢近八雲関係ですが、今後のキーになってくるのは、この理解の有無かもしれません。


 ちなみに八雲主観では、「自分にとっての天満の魅力」播磨にとっての天満の魅力」イコールにして認識してるっぽい所があって、だからこそ「播磨天満が好き」という構図にも疑問を挟まなかった、というのが沢近との違いだったんでしょう。

 人間的魅力」「女としての魅力」を完全に別物として考えていたあたりが、恋愛願望の強い沢近らしくはあります。

「一番大切」から「どっちもハズさない」へ

f:id:izumino:20070222022546j:image(♯211)

 そういう♯212から♯213への流れなのですが、先々週の「一番大切」発言が効いた形で、沢近の中での優先順位が「天満播磨」になっていることがはっきり本人の口から言葉にされます。


f:id:izumino:20070222011732j:image(♯213)


 これに対して高野はボウリングスプリット処理」「友情と恋愛の両天秤」にひっかけて、


f:id:izumino:20070222014327j:image

どっちも。ハズさない…

私は 欲張りな女

……という言葉を投げかけ、ほぼ戦線離脱宣言を出していたも同然の沢近を、再び戦地へと誘導させるわけですが。


f:id:izumino:20070222020025j:image


 ここらへんの会話劇はうまいですね。絶対わざと言ってる高野。


 いや、もう一度戦いに赴くのはいいんですが、それは負け戦だってさっき理解してたんじゃないの? と読者も思うような所で次週へ。

関連

*1:しかし改めて読み返してみても、モノローグとはいえ酷い失言だ

*2:♯205の「失言」が沢近の頭の中なら、その反省や謝罪すらも沢近の頭の中という

*3:ちなみに美琴とケンカした時も、悪いのは明らかに沢近なのに一言も謝れてなかったりする

Sun 2007.02/18

戦隊シリーズと中国拳法の歴史をまとめてみる

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 特撮アクション好き、そして『五星戦隊ダイレンジャー』のファンならみんな期待しまくりの『獣拳戦隊ゲキレンジャー』なわけですが、戦隊シリーズカンフーアクション歴史をちょっと振り返ってみます。

放送開始前の予備知識

 まず、一番最初に「東洋」と「武術」という要素をフィーチャーしたのが『光戦隊マスクマン』で、アクション監督竹田道弘


D

 そしてブルーマスクの変身前を演じた広田一成太極拳の選手で、大会での優勝経験もあるらしい。


D

 更にブルーマスクスーツアクターである喜多川務広田さんから太極拳を直接習って、後のダイレンジャーでシシレンジャーを演じる時にも活かしたそうな(シシレンジャーが使う技は「南拳」なんですが、広田さんが表演の選手だとしたら太極拳南拳の両方をやっててもおかしくないでしょうね)。

 広田さんは喜多川さん以外のスーツアクターにも中国拳法を教えてて、決めポーズアイディアを出したりもしていたそうですから、戦隊シリーズにおける(というかJAEにおける)カンフーアクションの源流の一つはこの人にあるのかもしれません。


 竹田道弘もどういう系統から学んだのかは良くわからないのですが、マスクマンから引き続き、我らが『五星戦隊ダイレンジャー』のアクション監督を務めています(2003年アバレンジャーまで続投)。

 ダイレンジャーには、先述した喜多川務がスーツアクターで参加し、南拳を演じます。


D

 そしてキリンレンジャースーツアクターとして酔拳を演じた石垣広文は、『特捜戦隊デカレンジャー』以降のアクション監督となります。

 その為、デカレン菊地美香が酔拳やった時に「おおっ、キリンレンジャー直伝!」と大喜びした特撮ファンは多かったと思います。*1

 デカレン酔拳だけじゃなくて、八極拳っぽい動きの敵も出てましたね。

そして蓋を開けてみれば

D

 肝心のアクションは割とモッサリした感じでしたが、OP映像や二話の予告はキレが良かったので、次第にこなれてくるだろうと期待してみます。レッドもまだ拳法覚えてないような段階ですしね。


 スタッフクレジットを確認してみると……レッドスーツアクターは例年通り福沢博文。ちなみにダイレンジャーで龍星王やってた人でもあります。

 アクション監督石垣さんが続投。

 げ! 中国武術指導に喜多川さんが! キリンレンジャーとシシレンジャーの二人がかりで武術指導ですよ(笑)。*2

 多分、「殺陣監督」(振り付け)をするのが石垣さんで、役者を「訓練する」のが喜多川さんという役職分担なんじゃないでしょうか。


 これで注目するポイントがまた一つ増えました。物語的にも、メインライター横手美智子さんだったりしますし、また愛すべき戦隊が生まれるのではないかと楽しみにしています。

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*1動画URLはこちら→http://www.youtube.com/watch?v=FzBvjqQy--c

*2:そしてレッドは龍星王

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Fri 2007.02/16

China Music Orchestra

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 前から欲しいと思っていた、チャイナミュージックオーケストラアルバム中古で購入。

Made in China(CCCD)

Made in China(CCCD)


 一時期、PVで良く流れていたので聴いたことのある人も多いと思いますが、「RYDEEN」のカバーはやっぱたまりませんね。

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Sun 2007.02/11

izumino2007-02-11

近況

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 最近DTPの勉強を始めています。難しいです。

 そして積ん読が減らないという。

忘れてしまいそうになるので、定期的に書いておきたいこと

| 忘れてしまいそうになるので、定期的に書いておきたいことを含むブックマーク

 高橋紳也先生は今どうされているのでしょうか。

2006-05-21 - 四分六三昧2006年5月21日より)

高橋紳也の生存が確認できない件について

ビジネスジャンプの増刊に読みきりを乗せたあと、消息を絶ったままですね」

「『THE BLACK』のセンスはブリーチを軽く凌駕していたのに。彼はヤングキング最後の鉱山だったはずなのに」

「まあ、デビューマンの例もありますから」

「七年も待てっつーのかよ……あれは90年代最後の遺産で作られた21世紀初頭らしすぎるバトルガイノイド漫画だったのに。あるいは、泥臭いノワールとしても素晴らしい作品だったのに。なぜ休載かっ……」

「あまりにもヘルシング的すぎたのが不味かったのかも」

「なんてことだ……」

THE BLACK 1 (1)THE BLACK 1 (1)
高橋 紳也

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 『THE BLACK』は超面白いのでみんな読みましょう。

 ……と思ったら絶版だし。すると印税収入も無いわけですかこの作者は。

 復刊ドットコムにリンク張っておきます……。

ArashiArashi 2007/02/14 12:24 当時ヤングキング買ってたのに単行本未掲載分を取っておかなかった事が未だに悔やまれます。<『THE BLACK』

izuminoizumino 2007/02/14 23:07 ぼくは買ってもいなかったので……また読みたいなぁ。あの片目の人のバトル回とか熱かったのに

ROMROM 2007/03/05 13:29 1巻だけは確保済み。…せめて黄戦までだけで纏めて大増版にして復刻してもらえないものでしょうか ( つT皿T)

TT 2007/07/19 12:28 ホームページがあった頃の情報からすると、病気療養中みたいでしたね。 たしか、一度マージャン漫画も描いていたはず。

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Thu 2007.02/08

izumino2007-02-08

漫画購入録/川口まどか『死と彼女とぼく』

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 抜けもありますが、最近買って読んだ漫画です。

 『死と彼女とぼく』はいずれ改めて感想を書きたくなるような秀作でした(マイナーっぽいですが)。

 ホラー漫画なんですが、作者の優しい視点で描かれていて、かなり泣ける所もあります(ちょっとテイストが異なりますが、乙一小説の印象に近いかも)。

 4巻収録の「開かれた死の夢」が一番感動できて好きですね。

死と彼女とぼく ドラマCD死と彼女とぼく ドラマCD
イメージアルバム 子安武人 野田順子

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Wed 2007.02/07

ショートコミックを雑誌で読むことの難しさ/今週のスクラン(♯211)から

| ショートコミックを雑誌で読むことの難しさ/今週のスクラン(♯211)からを含むブックマーク

 今週も面白い『School Rumble』ですが、解説しないとわかってもらえないと思うので感想を書いてみます。

 

 ここ数週間で「潜りに潜った」情報をとっかかりにして読まないと、表層的な所での情報しか読み取れない回でしょう、多分。

 以前、↓で書いたことの続きになるのですが、

週刊連載と単行本の読みやすさの差/今週のスクラン(♯209)から - ピアノ・ファイア

 しかし、いつか「拾われる」まで、その暗示は潜在情報として「潜った」ままになるわけです。


 この「潜った」潜在情報を、「二週間、三週間先まで」連続して覚えてられるか?


 「描かれてないからといって、無かったことになるわけじゃない」という見方(物語キャラへの感情移入)を保てるかどうか?


……というのが、雑誌スクランに「ついてける人」と「ついてけない人」を二分している、という印象を持っています。


(中略)


 しかし良く考えてみれば、スクランに描かれた「情報」が一回や二回くらい「潜る」のは自然なことなんですよね。スクランは基本的に9頁ずつ掲載されますから、単純に「2話分を足して、普通ならようやく一話分*1」だからです。

 スクランは時々「ショートコミック」のカテゴリに納まりきらない心理劇に突入することがあって、その時は確実に、この「9頁」という頁制限が足枷になります。


……というわけで、とりあえず細かい演出に触れつつ、今週を読んでいくことにします。

 今週のキーポイントとなるのは、多分このコマです。


f:id:izumino:20070207210044j:image


 めちゃくちゃ緊張感のあるカット。

 このコマの直前までは、全て八雲主観で進んでるんですが、主観ショットによって読者は沢近主観に放り込まれることになります。

 沢近主観である」ということが、これ見よがしに強調されるということは、逆説的に「コマから八雲主観が完全に消えた」ことを表していて、読者は「この時、八雲がどんな気持ちでいるのか?」をコマから窺い知ることができなくなります。ですが、「このシーンで、感情の変動値が一番高いのは八雲なんだよな」っていうことが読者にもわかっているので、何を考えているのかが描かれないだけに、ただならぬ様子(「怒り」に値する感情)を想像させる構図になっています。

f:id:izumino:20070125021209j:image


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 ここでようやく先々週の八雲現在天満に、かつての天満を重ねて見た」ことが意味を持ってきます。しかし、雑誌派でそこまでキャラの心情を追いながら読めてる読者はどのくらい居るんでしょう。

 八雲は、子供の頃に「天満の愛情の強さ」を目の当たりにしてしまって物凄いショックと感銘を受けただろうキャラクターですが、そしてその「天満の強さ」に気付けない他人や、自分のように感銘を受けたりしない他人は許せなくて、心の中では怒りの感情を覚えるキャラなんだっていうのは、何度かに分けて描かれていることです。


Vol.1収録 Vol.13巻収録
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 そんな八雲の内心を想像させられつつも、沢近主観のまま漫画は進んでいきます。


f:id:izumino:20070207230356j:image


 上から順番に、どんどん沢近の目が生々しく、写実性を増した絵柄に変化していく流れ。

 これはスクランの特徴的な演出の一つで、沢近の内心がクローズアップされ、感情的に崩壊していく様子が読み手にも感じ取れるようになっています。


 そして感情が崩れきった後に出てくる、極めつけなのがこの横顔。


f:id:izumino:20070207230200j:image


 絵を描く人ならわかると思いますが、露骨にデッサンがいびつになっていて、いかにも「ムリに作った表情」のように感じられる横顔。

 「かわいくていい女」という自己イメージを自分からは絶対に崩そうとしてこなかった沢近が、露悪的に「イヤな女」を演じてて、それを悔いていることも読む側に伝わってきます。

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 先々々週のこのコマ(=覚悟のスマイル)も、「自分から悪い女を演じる」という意味で「自己イメージを裏切る」ものだったろうでしょうが、今回はそれに輪をかけて沢近イメージが崩れることになります(読者にとってじゃなくて、沢近自身にとってのイメージの話です)。

 当たり前ですけど、こういう状況に一番耐えられないのは沢近本人の筈ですから、これだけ顔も歪んでしまうわけです。


f:id:izumino:20070207230354j:image


 で、今回は「一番大切」言葉で説明してしまってますね。二番目のキーポイントだと思います。

 また前回の記事で書いたことを再掲しますが……

週刊連載と単行本の読みやすさの差/今週のスクラン(♯209)から - ピアノ・ファイア

 その為、前回のヒキ(究極の選択…!?)で読者に暗示させた、


「選択……って、天満播磨?(どっちを選ぶかは大体予想できるけど)」


とか、


「ひょっとして、沢近播磨のこと(=恋愛感情)が割とどうでも良くなってる?」


とか、


「あ、沢近は4巻の頃の美琴*2と同じことを繰り返してるんだな」

f:id:izumino:20070125042603j:image


……といったフックの数々が、完全に「潜った」形になっています。沢近天満をほったらかして播磨との絡みに終始し、天満のことを意識する描写が無い。

……結果的に、今週の「一番大切」という言葉が、先々々週の「究極の選択…!?」という暗示の答えになっているわけで、三週間分「潜っていた」暗示が今開示されたことになりそうです。

 この「潜っていた」情報を(感覚的にでも)覚えているかいないか、というのが「話についてこれてるか」を分ける境目になるんでしょう。


 で、ラスト八雲がひっぱたく*3わけですが……、八雲「姉さんの凄さをこの人は理解してない」つもりでひっぱたいてるんですよね、多分。

 でも実はそうじゃなくて、沢近天満の大事さ」を充分理解できてる筈なので……そこを八雲は誤解している。ディスコミュニケーション認識の相違)が発生していると言えば、そうでしょう。

 ディスコミュニケーションによって愛情や恩義が深まりやすいスクラン世界において、不思議とケンカばかりになる八雲沢近の関係は、特殊なケースに入るのかもしれません。

 でも、沢近は「八雲にひっぱたかれたおかげで、天満を失わずに済んでいる」んですよね。そして、八雲は多分そこまで気を利かした行動をできる性格じゃないので、それは偶然の結果でしょう。

 そういう意味では、やはりディスコミュニケーションが「幸運な結果」を招いてもいるわけで……ちょっと考えてみると深い問題です。

ここ8回の連載ペースのおさらい

 今週の内容については以上の通りなのですが、少し視点を変えて、新年号以降の掲載内容を並べてみましょう(どの回も頁数は9です)。

 こうして思い出してみると、「エビパーティ〜究極の選択…!?」までの5回は「週刊連載」でも楽しめる「ヒキ」がありましたが、♯209以降の3回分は「27pで1話」として読まれるべきなのが解ります。

 ちなみに27pなら、普通に『花とゆめ』なんかにおける一話分なんですよね。

そして次回は

 さて、♯209〜211の3話をワンエピソードとして捉えてみると、「来週はまた視点が変わる」可能性も充分ありえます。一つの「強力なヒキ(暗示)」を作った後に場面転換して、またすかさず「暗示を拾う」、という手法*6スクランでは良くありますから。

 つまりその時に、今回の「八雲がひっぱたいた」という暗示が、一,二週間「潜る」ことを読者がどう受け止めるか、という所で週刊連載の読み方が変わってくるわけです。


(※単なる「ひっぱいた」という具体的事実だけでなく、「何故そうなったのか」「八雲はどういう気持ちでそうしたのか」「逆に沢近はどういう気持ちだったのか」という、潜在的な情報を「覚えてられるか?」という問題です。)

男性にとってと女性にとっての読みやすさの違い

 最後に私見なのですが、「その回の内容の中に、具体的なことが描かれているかいないか」ということにこだわるのが男性読者で、「具体的な描写の有無にあまりこだわらない」のが女性読者、という風な捉え方もしています。

 「具体的な事実」しか印象に残らないタイプと、そうでないタイプの違いですね。


 一度頭の中に印象づけられた関係性があれば、特に具体的な描写や言及が無くても(情報的に「潜って」いても)持続的に読み続けることができるのが、大抵の女性読者で。大抵の男性読者に比べて、複雑な人間関係恋愛心理のドラマを、割と自然に読むことができるのは、そういう意識の力が強いからじゃないか、という気もしています。大雑把な分け方ですが。


 これは「やおいの裏読み」にも通じてくる話かもしれません。勿論、男性の中にも、そういう女性的な読み方が得意な人も多いと思いますし、意識すれば鍛えられるものでもあるでしょう。

 ただ、潜在情報の読み方が不器用な人は、「ストーリーと関係の無い暗示」をうっかり読んでしまって、それに振り回されることが多いのかもしれません(器用な人は、妄想を妄想として区別して片付けることもできるのですが)。

*1マガジンの他の漫画は18頁がデフォルト

*2:「友達との約束」と「好きな男」を天秤にかけて男を選ぶ話

*3:件の沢近主観ショットから、ラストページにかけての間、八雲の感情も「潜って」いるので(話数単位ではなく、ページ単位で)、そのことを意識しながら読んでいないとこれも意味の理解できない行動として感じる筈

*4:これは10頁

*5:これも10頁

*6:例えば「まだ気がつかないんですか?」→「ひなまつり」→「オハイオ」のようなパターン

タカタカ 2007/02/08 10:49 めちゃくちゃ参考になりました。
意外と深いんすね、スクランの話って。
小林尽の作品に何故ここまで引き込まれたかの理由がちょっと分かった気がします。

izuminoizumino 2007/02/09 00:35 コメントありがとうます。深い……とも言えますけど、説明台詞も少ない上に、具体的な情報をかなり削って描かれてる漫画ですから、「行間が広い」んですよね。そこを読み取るのが醍醐味なんですが、感覚的なレベルでも読者には伝わる部分だと思います

izuminoizumino 2007/02/09 00:49 雑誌を買い置きしたり、単行本でじっくり読んだりした方が「お話」としては掴みやすいのは間違い無いのですが、その一方で、雑誌連載でも一定の人気を保っているあたりが、不思議な作品だなーと思う所ですね(これだけ解りにくい話なのに雑誌人気がある、っていうのは、単に絵が可愛いから、とかそういう要素での人気だとは思いますが)

semosemo 2007/02/09 06:54 最後の私見がイイ! アリストテレスの言葉に「我の性格は、我の行為の結果なり。」というものがあるそうで、これなんかは典型的な男の考え方なんですかね?

izuminoizumino 2007/02/09 14:53 >semoさん いや、それと同じかはどうか解りませんが(笑)。まぁ左脳か右脳かっていう話ですよね

アホーガンアホーガン 2007/02/09 19:58 スクランは好きで第一話から、ほぼ抜けなく雑誌を読んでいるのですが、今までizuminoさんのように考察しながら読んだことはありませんでした。今回のビンタも単純に「大好きなおねえちゃんを馬鹿にしたなビンタ」だと思っていたのですが、前回までの天満、八雲、愛理の行動や感情を踏まえて読むと、確かに愛理が播磨を誘うときの表情や、今回のビンタも違って見えてきます。特に、天満が愛理に謝るために体を張るということが、幼い頃に八雲に謝ったときと同じだということなど、こちらのサイトを拝見するまでスッカラカンと忘れておりました。ページの少ないマンガだからか、どうも僕は先週以前の内容を片っ端から忘れている気がします。こちらのサイトのおかげで、スクランをマンガ喫茶で読み返したくなりました。

izuminoizumino 2007/02/10 01:26 >アホーガンさん それは是非読み返していただければ。お話が、一本の線で通して繋がってる様子も見えてくると思います。その後で、このブログの一番下にある「小林尽『School Rumble』考」も読んでもらえると嬉しいですね。その「一本の線」について私見を述べてますので

exsoyexsoy 2007/02/10 08:00 とても興味深かったです。今までスクランの漫画をしっかり読んだことがなかったので(弟のを少し読んだ程度)、「ギャグマンガ」という自分の中のスクランのイメージが一変しました…

izuminoizumino 2007/02/10 16:10 >exsoyさん そう思って頂けると嬉しいですね。ちなみに、ギャグ漫画としてスタートしたからこそ、こういう風になった作品だとも思います



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