スクラン二年生最後のイベント「歩行祭」の予習に『夜のピクニック』を読んでみたよ
恩田陸の小説は『六番目の小夜子』だけを読んでいて、他の作品は知らなかったのですが……。
最近のスクランでは、その恩田陸の『夜のピクニック』がオマージュされているようだったので、原作を読んでみることにしました。
最近の小説界には疎かったので、とんと知らなかったのが、いつの間にやら「本屋大賞」なんてのを受賞していたベストセラー小説だったという事実。ちと不明を恥じる所です。
今となれば、恩田陸の代表作といえば『六番目の小夜子』ではなくて『夜のピクニック』になっている……のかな。
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『六番目の小夜子』の頃から変わらず、「(読者は経験したことが無い筈なのに)ノスタルジーを感じさせる学校行事」というモチーフが冴え渡っていて、物語後半は何度も手が震えるような感動を味わったのですが…………、それはひとまず置いておいて、当の『School Rumble』との関係性を抜き出してみます。
スタートとゴール
夜ピクは「一周して戻る」のに対して、スクランには明確な「別の場所」にゴール地点がある。
「一周する」のか「別の場所に行き着く」のかという違いは、「ぐるぐる回る」がキーワードになっているスクランのテーマ的にはとても重要。
また、夜ピクは途中の海岸線で日没や日の出を眺めるのに対して、スクランの場合は「日の出を見る」こと自体がゴールになっている。
(ちなみに「海岸線で日の出を見る」は、播磨の理想のシチュエーションに出てくるモチーフでもある。)
秘密と和解
夜ピクのメインテーマは、打ち明けられない秘密をクラスメイトに打ち明けるということと、気まずい関係のままディスコミュニケーションに陥っていた二人が和解してコミュニケーションできるようになること、の二つ。
スクランでも、播磨が天満に正体を隠していたり、烏丸の考えていることがわからなかったり、天満、八雲、沢近その他諸々が言い出せないこと、聞き出せないことを残したままだったり、ディスコミュニケーションが極限まで高められた状態で歩行祭に突入している。
小林尽がテーマ的な部分まで汲み取った上で『夜のピクニック』のオマージュを選択していたとするなら、それなりの意図はあるのかもしれない。
補足/作品自体の時系列
スクランの連載開始は2002年。
夜ピクの刊行が2004年、映画化が2006年。
小林尽は『夏のあらし!』のヒロインに「小夜子」という名前を付けてるくらいだし、多分元々恩田陸ファンなんだろうと思います(『十二国記』のファンだったりするあたり、そこそこの小説読みっぽいですし)。
だから夜ピクも原作から入ったと仮定すると……、小林尽が夜ピクを読んだと思われるのは……ちょうどマグロ漁船から帰ってきて漫画描いてる頃(笑)。アニメ化が決まった頃でもありますね。
この頃のスクランは、文化祭すら済ませてなくて先も長いし、ネタストックとして「歩行祭」を視野に入れるにしても遅くはない時期だろうと思います(つまり、最近になっていきなり思い付いた展開ではないんだろう、ということ)。
ただ、個人的な予想としては、「歩行祭」がスクランのラストエピソードだとは考えていなくて、歩行祭編が済んだ後に、連載前から想定していたであろうエピローグに繋げる形になるのではないか、というビジョンを持って今は読んでいます。
なんにしろスクランの歩行祭も、8時スタート翌朝5時ゴールだと思えば20時間近く歩き続けるわけで、相応のボリュームが期待できますね。
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