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「改心する悪い女の子」という属性に萌える

身辺雑感/脳をとろ火で煮詰める日記: 「改心する女の子」キャラクターの一覧

 みやもさんが一覧にもまとめてくれていますが、ちょっと前からこの「悪役の女の子が善玉に改心する」というヒロイン属性が燃えています。
 mixiTwitterでさんざ主張していたのですが、そろそろ周囲の人達からも認知を受けてきたっぽい(たぶん錯覚)ので、自分でもエントリにしてみようと思いました。


 まずこれは「悪役」というのがたぶんポイントで、決して根っからの「悪人」ではないということ。
 みやもさんがその前のエントリ(こっちは男女の性別を問わないリスト)で、

極端な悪はその純性ゆえに何かのきっかけであっさり善へと極端な属性転換が行われることもあり、これもまた我々に大きな感化作用をおよぼすものである。

……と書いているように「改心」(宗教的に言えば改悛、転向)とは、単なる属性の上書きなどではなくて、その純粋さによる「本性の目覚め」であることが多いのだと思います。
 一言で言ってしまえば、ただのいい子が口にする「愛」や「善」よりも、反省した悪い子が目覚めた「愛」や「善」の方が重い! そして純度も高い、と感じるわけです。


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属性発見のきっかけ

 ことのはじまりは、架神さんの『完全覇道マニュアル』を興味深く読んでいた時で、


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……このクライマックスにおいて、主人公・ひろしくんと最後まで雌雄を争うことになるライバルの女子、「雪の女王」ことりょうこちゃんがいかにも象徴的な描かれ方をされていたのです。



りょうこちゃん(10さい)

5年3組の女帝。成績優秀、運動神経抜群、可憐な面立ち、人を惹き付けるカリスマを併せ持ち、さらに家が金持ちという完璧超人。1〜4年生の間、常にクラスを制覇してきた。吸収合併のスペシャリストであることから「ハイエナりょうこ」と呼ばれ、雪上戦闘を得意とすることから「雪の女王」とも呼ばれる。ひろしくんの前に立ちはだかる最強最大の敵。


 女帝と恐れられ、他者は敵か愚民としか認識せず、悪行のかぎりを尽くしながら支配者としての人生を送ってきた少女が、やがて孤立し、凋落し、プライドを打ち砕かれた時に気付いたのは「それでも自分を慈しんでくれる人が側にいた」という愛だった……(ちなみにくっつくのはひろしくんではなく、りょうこちゃんの片腕であるイケメン幼馴染みのかおるくん)。


 これを読んだ瞬間、「悪から愛(善)へ」と人格がシフトするヒロインが自分のツボなのでは? とスイッチが入ったんですね。
 前々からなんとなく好きだったんだろうとは思うんですが、それをキャラ属性として意識するようになったのはこれが初めてでした。去年の10月の話です。
 そう考えると出てくるわ出てくるわ、スプラッシュスターの薫と満とか、当時まだ見始めたばかりの『遊戯王5D's』の十六夜アキとか……。


 まぁドラマトゥルギー的には、『愛と誠』の高原由紀とか、非道を尽くした「女幹部」ポジションのキャラを後腐れ無く戦線離脱させるには「愛」が最も手っ取り早いとも考えられて、そういう意味ではりょうこちゃんも「ていのいい無力化の口実」として「愛」に目覚めてもらった、くらいのオチの付け方ではありました(作者も救済の場面をかなり戯画化して描写していて、あまり「読者を萌えさせよう」という意識は感じられない)。
 でも、愛情のカケラも無かったような子が急激に丸くなると、反動でむしろ無垢で純真に感じられる。「ヒナがインプリンティングされる」感覚に近い装いがあります。


 当時の十六夜アキは主人公の遊星とデュエルした回(いわゆる神回)が放送された直後で、ファンの間でも「遊アキ」のカップリング妄想や救済への期待がひっきりなしでした。
 これはちょっと先物買い的なものもあって、「これから丸くなりそうなタイプのヒロインだから萌える」という部分があったのだと思います(その時にはもうすでに「無垢さ・純粋さ」にスポットが当たっていたので物語的には当然の期待と呼べるのですが。今だと『フレッシュプリキュア』のイース様への期待がちょっと近いかも?)。

救済前の二次創作

救済イベント(こちらも神回)後の二次創作

  • ※何度も勝手に引用しててスミマセン


 『魔人探偵脳噛ネウロ』のアヤ・エイジアもそうか……。というかサイは「そうなるかもしれない」キャラで、アイは「そうなっていたはずなのに……」というキャラだったわけで、とか。
 「ああ、自分はこの属性が好みなんだなあ」という自覚と「この属性はきっといいものだ」という評価(分析)が始まったわけです。


 ちなみにみやもさんが一覧にしたヒロインの中には当然ぼくの好きなキャラも混ざっていて、

……あたりが「ツボ」と呼んでいいキャラたちですね。
 あと別に美少女じゃないからこういうリストには入らないけど『クライング フリーマン』の白牙扇が、あまりにもコロッと改心するキャラだったので印象深いです。

なぜ改心して赦されると純真さと可愛さが増すのか

 このパターンの気持ち良さというのは、「本人が反省してるし、凄い健気だから、今までの罪も全部赦してあげちゃおう」という気分になれる所でしょう。そこに醍醐味があると考えていい。


 客観的に鑑みれば社会復帰できないくらいの罪を犯している悪役でも、「これからは幸せに生きてくれ」って思うくらいの転身を見せることがあって、法とか倫理とかどうでも良くなる瞬間が物語のカタルシスでは生まれるものです。
 まぁそういうキャラに限って「身を挺して死ぬ」「死によって罪をあがなう」みたいな展開がまた似合うもんだから、物語的には結局余生を過ごせずにお亡くなりになったりすることも多いのですが……(一覧のキャラでいえばリルル、ノヴァ、ダークドリームのパターン)。


 しかし逆に考えてみれば「命をもってあがなうような罪を背負っている」というのはスゴイことで、つまり「過去の行いの贖罪」として「愛」に傾けるエネルギーが大きく見えるから、普通の人よりも純真に感じるんでしょう。
 取り返しの付かないことをしたキャラほど改心後の善良さものっぴきならぬものになる(ならざるをえない)ということかもしれません。


 また、こうも考えられます。「改心して赦される女の子」は倫理的な意味で「責任能力の無い未熟な子供」として扱われるのだと。倫理的に、であって、法的に、ではないのがキモでしょうね。
 だから「無害」と判断された時点で「監督付きを条件にした無罪放免」が許される……という仕組みがありそうです。
 「リタイヤした女悪役」が、純真になると同時に保護者やダーリン役(りょうこちゃんにとってはかおるくん)の庇護下に入るのは、この「無害さ」を強調するためでもあるでしょう。
 インプリンティングされた直後の「ヒナ」に戻るからこそ、その後の自立を見守りたくなる父性愛をくすぐるのだと思います(まぁ、そういう希望を持たせておくほど死亡フラグも立てやすくなるから困るんですが……)。


 『コードギアス』のルルーシュが「死ななければ許されない」キャラだったのに対して、妹のナナリーが無罪放免だったのは「責任能力のない純真さ+監督としてのゼロ(スザク)」という組み合わせがあったから、と考えられます。

 ちなみに「客観的な責任能力の無さ」と、「本人の反省や後悔」は別で、「客観的には赦されている」状況に反して「本人の後悔や改悛」が強ければ強いほど純真無垢に映るのは言わずもがなですね。

「改心して赦されるから可愛い」のではなく「可愛いから赦される」→「改心ヒロインは総じて可愛い」という逆説

 ところで「物語的な請求」というのは恐ろしいもので、作者や読者が「できれば赦したい悪役」としてのヒロインに気付いた場合、相応の「赦されるに足る理由の描写」が必要になってきます。
 どれだけ道を外れた後でも、「実は根は純粋ないい子でした!」と納得させられないといけないんでしょうね。


 ここははっきり言い切った方がいいでしょう。改心ヒロインは、罪の深さと比例して可愛く描かれる必要が生まれる、と。


 フィクションでは、精神の純粋さや善良さがルックスによって象徴的に担保されることがしばしばです。
 いくら「見た目は関係無い」と言われても「可愛い女の子に本当の悪人なんかいない」と思いたくなるもの。
 いやむしろ、「内面の邪心は外見の醜さとしてにじみ出る」という教訓もフィクションにおいては真理として通用します。
 設定的には「美人」扱いされる女性キャラなのに、嫉妬や悪意に歪んだヒロインは醜い表情で描かれ、その世界での善意を代表する「平凡なルックスとされる少女」が萌え萌えしたヒロインに描かれる、というケースを私達は常に目撃してきたはずです。


(余談ですが、ここらへん「美人」は魅力的に描かれないのに「少女」は魅力的に描こうとする少女漫画の文脈が発見できる所です。少年漫画の男性キャラでも、『エンジェル伝説』の主人公が「悪魔のように怖い顔」という設定なのに、「心は善良」という設定があるばかりに作者はどうしても可愛い顔で描いてしまったりしますね。)


 そして、ただ善意を象徴するだけのヒロインなら「平凡なルックスだけど可愛い」程度の描写(しかしこれ言い訳っぽいですよね、ホントは美少女なのを謙遜してるだけなんじゃ?)で済むのですが、改心ヒロインならばそうはいきません。


 そう、改心ヒロインは「すごい美少女」でなければいけない圧力が高くなるのです
 っていうか、一覧にリストアップされてるヒロインたちって、ほぼ例外なくすごい美少女っていう設定だよねトゥーランドット姫なんか惜しげもなく「世界一の美女」設定だし)。
 仮にそういう設定が付いてなくても「そう見える」よね

 ぼくのもうひとつのツボ属性である「すごい美少女」の魅力については語ることが尽きませんが、こと「改心する悪い女の子」と掛け合わせた時の相性の良さ、については目を見張るものがあります。
 最近の例でそれを実感したのが『人造人間カティサーク』のツヴァイで、改心後はもう過剰なまでに可愛く描かれているのですが、これなんて明らかに「可愛くしないと説得力が足りない」というドラマ上の請求から生じたビジュアル上昇だったと思います。

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  • この表紙の左側がツヴァイ。この時点ではなんてことない普通の顔。このあと可愛く描かれることによってすごいことになる

補遺

 それから「改心・和解・デレ」の微妙な違いについてと、それに絡む「誰でも助けるハーレムメーカー」との関係について書いてみたかったんですが、長くなったので今回はここまでってことにします。
 あぁあと、改心イベントを含めない単なる「悪い子」についても。「悪い女の子」はそれだけでもいわく言い難い魅力があるもので、普通は「ツンデレ」とか「ドS」といった属性にカテゴライズされそうなんですが、「悪い子」は「悪い子」で可愛いよね、という(最近だとガンダム00のネーナとか。あとエヴァのアスカってツンデレとかヤンデレとかいうよりもむしろ普通に「性格が悪い」ことによる魅力だと思います)。
 ただ、改心するしないに関わらず、ただの「イヤな子」なら「悪い子」としての可愛げはありませんよね。っていうのはいわば「性根が腐っている者」と「根は悪くないのに悪いことをしている者」との違いかなあと思います。

追記

 そういえば何の前提も無く語ってましたが、ここまで書いてきたことって(男性の場合は)「第三者視点でヒロインに萌える」か、「ヒロイン視点に感情移入して萌える」という感じ方をする人でないと通じにくいことかもしれませんね。
 愛に目覚めると言っても、別に誰かにデレるとか、そういうのはあまり関係無かったりしますからね(ツンデレというと全然違う属性のように感じるのはそこが理由。あとツンデレ好きの男の人って「主人公=俺」っていう男性視点で感じる人が主流っていう気もしますし)。