洗練された漫画のたたずまい/津田雅美『ちょっと江戸まで』4巻
津田雅美さんの大ファンなんです。
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4巻は、映画館の待ち時間中に喫茶店で読んでたんですが、ページをめくりながら「うまい……面白い……」と悶えてばかりでした。
とは言っても、前作の『eensy-weensyモンスター』以上にのほほんとした、マイペースな雰囲気で描かれている本作は、「さすがうまいなー」とは思っても「大作」っていうイメージはなかったんですよね。
まるで日記でも書いてるように、作者がそのとき感じたり考えたりしていることを漫画にしてみました、というナチュラルなお話が続くような感じです。
単行本の作者日記と併せて読むと、まさに「作者の日常」と「お話の内容」がシンクロしている様子が伺えます。
本当に「徒然なるままに〜」の、放縦な世界。
『ちょい江戸』は、SF的な設定をうまく利用した「江戸時代の世界への入門漫画」です。
時代小説を読むのにハマッた作者が、自分で江戸時代について勉強しながら、その勉強で感じたことを漫画で解説しているわけだから、活き活きとしたライブ感があるわけですね。
特に、江戸時代でしかありえないような考え方・価値観をスッと表現するのがすっごく巧い。
一応は少女漫画として描かれているという価値観の前提があって、そこからの落差で「江戸時代の価値観」の異質さへとスッと誘導する手際が素晴らしいです。
津田雅美のキャリアならでは、な洗練されまくった漫画表現が堪能できます。
でも4巻は読み進めているうちに、「あれ、これはなんか違うぞ?」っていう感覚がじわじわしてくるんですよね。
いままでのように、「たまたまその時の作者が興味を持ったテーマ」を徒然と描いているようでいて、気をつけて読むと、ミシェル(水戸藩の若様)のキャラ格がガンガン上げられてくことがわかるんですよね。
ミシェルに人徳……というかリーダーの器がありすぎて、これはもうコメディ漫画や学習漫画のキャラの格じゃない! と(笑)。
この感覚には、4巻のラストページで納得できる「ヒキ」が来るんですが、鳥肌立ちました。ああ、この漫画ってそういう「終わり」も見据えていたんだと。これは油断ならん漫画だった……と。
「津田雅美が時代モノ?」と思って買い控えしていた人にはぜひオススメです。
あと、津田雅美の「これぞカリスマ! これぞエリート!」というエリートへの偏愛が好物なヒトにもぜひ読んでほしいですね(笑)。
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