30歳過ぎから工学 vol.2

http://d.hatena.ne.jp/j130s/ から移行しました.オープンソースロボットソフトウェア技術者兼主夫. 高校・大学学部文系-->何となくソフトウェア開発業-->退職・渡米,テキサス州でシステムズ工学修士取得,しかし実装の方が楽しいと気付き縁があったロボティクス業界で再就職.現在 Texas 州内の産業用オートメーションのスタートアップに Georgia 州から遠隔勤務.

[robotics] 起業一周年

先日2014年8月8日は私達の興した協会の一周年でした.一年間なんとか持ち堪えることができお客様はじめ周りの方々に感謝するばかりです.そもそも起業することにまるで興味がない人間でしたが,そういう状況になったため頑張ってみています.なんとか運営できているのは他の創業者達のおかげ.

個人の話としても,この一年間はこれまでの人生でもひときわ変化ばかりでした.とりわけ,一生涯に渡る決め事を三つも行った:

  • 生涯の伴侶を得る.自宅は米国,仕事は東京なので,日米間を行ったり来たりしています.
  • 創り主を信じるに至る.
  • ロボットを一生の仕事と決める.
  • 屋根裏のハクビシンとの格闘,意外な結末

最後のはどうでも良さそうですがw,40歳を目の前にして新しいことばかり,日-米往復,東京-栃木の往復 (日本にいる間は実家から東京のオフィスに行ってます) など,めまぐるしい毎日.朝起きた時に今自分がどのタイムゾーンにいるのか,どの県にいるのか判らなくなる時はしょっちゅう.

ロボット業界に転身してそろそろ五年経ちますが,この一年の仕事は産業用ロボット方面で,これまで扱ってきた技術ともまた違っているので日々勉強です.この一年で教科書何冊か買いました*1.ロボットは極めて工学的なので,この業界で周りで仕事してる方々達も,高校・大学と数学は学年トップレベルでした,みたいな人ばっかりで,かたや自分はこのブログタイトルでも分かるように30歳過ぎて工学に転身した身*2.周囲に付いて行けてるのかすらアヤシイですが,一方で,自分みたいな人でも居場所はあるのかなと;どんどん先に行きたがる秀才な人達があまりやりたがらない細かい仕事を,盆栽な自分が怠けずにきっちりやることで,業界の穴を少しでも埋めて来れているかなと思っています (そしてそういう細かい部分が,システムを実用的にするかどうかにおいて結構大事だったりするのかも)*3

そして今やっていることを生涯の仕事にすると決めることもできた一年でした.秀才達とは脳の作り/センスが違い過ぎるので絶対追い付けないと気付いたけど,経験を重ねることでソコソコまともなロボット屋になれるかも,という期待を持つのに十分な経験を,この十二ヶ月で踏むことができた.33歳で仕事を辞めて工学留学した時もその後も暫くの間は,将来腰を据えて何かやるようになるのかどうかすら見えていなかったですが.いろいろ運が重なり,これ以外あり得ないだろという状況に来れた;ロボット界で (工学界で?) Isaac といえばアイザック・アシモフですが,世界のオープンソース・ロボット業界で Isaac といえば何番目かに自分が想起してもらえる状況 (含む大妄想).あーでもないこーでもないと試行錯誤し,地を這うような毎日ですが,そのくらいやらないと自分ごときには見えて来なかった結論でした.

地道にあと40年やっていけるよう祈りつつ.2054年にはいろいろどうなってますかねー.

或る蒸し暑い日本の夜,人知れず実家の壁でアブラゼミが大事な時を迎えていたらしいです.地下に七年地上に一週間.この一途さに比べればふらふらしてきた自分の人生なんて恥ずかしいわい.

*1:これまで工学の教科書といえばアメリカの分厚いのばっかりでした;説明が十二分にされてるので何度も読めば結構いろいろ解るんですが,ささーっと読むには長いし,何しろ重たい (物理的に).日本にいるので最近日本語の教科書も買うようになり,コンパクトにまとまっていて使い易い・一方深く理解するには他の資料をあたらないといけないことも多い,というのを発見しました.一長一短ですね.

*2:日本は幸か不幸か企業のソフトウェア開発者採用が理工系バックグラウンドを要求しないので,いわゆる文系出身でエンジニアのタイトルが付く方がとても多い.その是非はここでは問いませんが,ロボットのような物理を伴うシステムの開発業界は,これまでのところは少しも数学知らない人が開発できるようにはあまりなっていない.ただし,基幹系,WEB 系等の大きなソフトウェア分野がそうなったように,ロボットソフト分野も今後は間口が拡がっていくと思います.そうならなくてはならない.

*3:よくよく見てると,秀才な人達が集まる組織内においても,同じ力学は実は働いている;秀才達の中でも秀才階層が発生し,微妙に役割がわかれていくようです.去年までシリコンバレーのトップロボット企業に在籍できたのはそういう観察をできた点でも自分には意味が大きかった.