スーさん的SF日記

2016-12-20 MCC Advent Calender2016:3Dプリンターを改造した話

MCC Advent Calender2016:3Dプリンターを改造した話

こんにちは,JA1TYEです.

私の所属している大学のコンピュータ系サークルであるMCC(マイクロコンピュータクラブ)の有志により,アドベントカレンダー企画が開催されたので1日だけ乗ってみることにしました.

(以前にも田町アドベントカレンダーに参加したりしています.)

ちなみに前日,19日の記事はsasamijpさんによる「jQueryで投げやりなアニメーション - ささみろぐ」でした.

さて,事前のコメントにも書いていましたが,最近した工作の中でまだこれといってまとめていなかった3Dプリンターの改造の話を書きたいと思います.

そもそもなぜ3Dプリンターを買ったのか

私が3Dプリンタを購入したのは2012年の冬のことでした.2012年の夏には念願のCNCフライスを買って色々と切削して遊んでいたのですが,

バイト先にあったStratasysの業務3DプリンターがニュルニュルとCADモデリングしたデータを実体化していくのを見たときにこれは面白いと思い,

CNCフライスの次はこれだ,と思っていたのでした*1.折しも2012年ごろはRepRapをベースにした激安完成品3Dプリンターが出回り始めたころで,

私が購入したSolidoodle 2 Proもそのような激安3Dプリンタの1つでした.

為替レートも手伝い送料込みで7万円程度だったと記憶しています.(今も変わりませんがMakerBotは20万円台でした.)

現在はDaVinciシリーズなど各社がこの価格帯やそれ以下の3Dプリンターを投入しているので珍しくもないですが…

2013年の2月の頭に到着し,その後は調整に苦労しつつもいろいろなサンプルを出力したり,電子レンジの壊れたノブの代用品をモデリングして

作成したりと,ぼちぼち活用していました.

やわなエクストルーダー

D

気が向いたときに時折動かして遊んでいたSolidoodle 2でしたが,1つだけ短所を挙げるとするとすれば素材であるフィラメントをノズルに送り込むエクストルーダーの貧弱さになるかと思います.*2

上の動画にあるように,Solidoodle 2のエクストルーダーの主要な部分は3mm厚のアクリルプレートを重ね合わせたパーツできています.

このパーツで保持されるボールベアリングとスプリングの力でモーターについているギアにフィラメントを押し付け,フィラメントを送るようになっているのですが,

このアクリルパーツにスプリングの力が思いっきりかかる設計のために,フィラメントが詰まったり,スプリングの圧を強くしすぎた場合に

簡単にアクリルパーツが割れてしまうのです.割れた場所によってはごまかしごまかし使用できるのですが,どうしようもなくなり,

泣く泣く高い送料を払って薄っぺらいアクリルのパーツをUSのSolidoodle社から輸入したりもしました.

改造のきっかけ

さて,そんな難ありのエクストルーダー部の補修パーツを買って修理した後にも,そもそもの設計の問題ということもあり

またアクリルが割れたりしました.その後も修理前のパーツのうち破損していないパーツと新しいパーツをニコイチして使ったりしていました.

また,段々とノズルの目詰まりが起きてきたため,ヒーテッドベッド側にのりを塗るなどの工夫をしても出力が安定しなくなってきていました.

そんな事情とその他の活動が忙しくなったこともあり,段々と自宅の3Dプリンターを使うことは減っていきました.

そんな今年の9月末,Solidoodleって今も新モデルを出していたりするのかなとふと気になって検索してみたときのことです.

Solidoodle社のWebサイトを見るとそこには,

Solidoodle Has Suspended Operations

の文字が.

あーやっぱりだめでしたか,安い以上の特色がなかったからなあ…と思いつつも,もはや私の3Dプリンターは純正補修パーツを購入することすら

ままならない状況であるということが明らかになったことだし,思い切って改造してしまおう,と踏ん切りが付いたのでした.

AliExpressでパーツを漁る

そんなわけで改造に踏み切ろうと考え,中国の通販サイトであるAliExpressで使えそうなパーツを漁りました.

その結果購入したのが以下の3つのパーツです.

品目説明URL*3
Bowdenエクストルーダーホットエンドの直上ではなく離れたところからフィラメントを送るためのエクストルーダーURL
E3Dタイプのホットエンドフィラメントを加熱して吐き出す部分.本来不必要な部分でフィラメントが融けないように冷却ファンもついているURL
PTFEチューブBowdenエクストルーダーとホットエンドとの間を接続するチューブ.フィラメントを確実に送るために必要.URL

ヘッドの直上ではなく,固定された離れた箇所からフィラメントを送るBowdenエクストルーダーを採用したのは,

もともとのエクストルーダーがアクリル製で軽量であったため,ヘッドの耐荷重がさほど大きそうに見えなかったことと,

移動部の荷重を減らすことで不要な振動を抑えることができるのではないかと考えたためです.

届いたパーツを取り付ける

しばらく待っているとAliExpressで購入したパーツが届いたので,ヘッド部分を分解して,改造にとりかかりました.

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まず最初に,BowdenエクストルーダーはY軸駆動用モーターの取り付け穴がちょうどいい位置にあったため,上の写真のようにそこに反対側からブラケットを共締めして取り付けることにしました.

ちなみに購入したBowdenエクストルーダーにはモーターは付いていなかったので,適当に秋月で売っているステッピングモーターを取り付けました.

次にホットエンドですが,もともと付いていたホットエンドはE3Dタイプのものではないので,当然今までの取り付けパーツは使うことができず,

ヘッドの土台部分のみを残して取り付けられているパーツをすべて取り外しました.

f:id:ja1tye:20161220015422p:image:w640

その後,土台部分のネジ穴の位置や新しいホットエンドの取り付け部分の径などを計測し,DesignSpark Mechanicalで取付用のパーツを

適当に設計・モデリングしました.

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モデリングしたデータは別の3Dプリンター*4で出力しました.

上の写真のパーツの半円部にホットエンドのパイプがはまり,さらに別のパーツでそれを押さえつけることで固定するようになっています.

これらのパーツを取り付け,Bowdenエクストルーダーとホットエンドの間にPTFEチューブを取り付け,試運転を行いました.

しかし,上の3Dモデルのパーツ形状では,X軸の原点検出スイッチが押せなかったため,X軸が原点出しの際に暴走してしまいました.そのため,

応急処置でFRISKのケースの破片*5をスペーサとして貼り付けて正常に動くようにしました.

応急処置をしてヒーテッドベッドとのクリアランスの調整などを行って試運転を続けると,改造前と比べてかなり安定していたので,先ほどのホットエンド取り付けパーツを

改修したものを出力し,応急処置をしていたパーツと入れ替えました.

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もともとのパーツに比べると積層跡が目立ちますが,特に造形物の品質に影響があるようには見えませんでした.

ちなみに上の方で黒い編組チューブを押さえているパーツもこの3Dプリンターで出力したものです.

ここまでは主にハードウェア的な調整の部分しか言及していませんが,ホットエンドが変わったために,ヒーターのPID制御のパラメータを調整したり,

ステージとホットエンドの位置関係が変わったためにその部分の設定をいじったりといった手間もありました.

しかし,ここまで購入したパーツは全部の合計でだいたい3000円程度なので,安上がりに3Dプリンターを復活・改善することができたといえます.

もともとこの3Dプリンターにはケースが付いていたのですが,Bowdenエクストルーダーを共締めした結果,ケースが使えなくなってしまったので,

今は室温が造形エリアの温度に直接影響する状況になっています.適当な板を買ってきて造形エリアの温度を保つ工夫をするというのが,

当面の今後の課題といったところでしょうか.

まとめ

今回はMCC Advent Calendar 2016の一環として私物の3Dプリンターを3000円で修理・改造する話を書きました.

最近はてなダイアリーの方はただの旅行記と化しているので,この手の技術系の記事に興味がある方は私のWebサイトであるTYE’s Tech Lab.もご覧ください.

明日はPiyoPiyoPiratesさんです.お楽しみに!

*1:もちろんStratasysのは数百万しますので買えませんが…

*2:本当はネジがインチ規格だとかネジがインチ規格だとかネジがインチ規格だとかという点も気になりますが!

*3:一応,私が買ったお店のURLですが,探せばもっと安いのもあるかもしれません

*4:Zortraxで出力しましたが別に複雑な形状ではないので適当な3Dプリントサービス等でも大丈夫だと思います.

*5:ほどよい薄さのABSでできているので加工がしやすくて便利です.

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