移転しました

長らくはてなダイアリーを使ってきた「スーさん的SF日記」ですが,Webページの方の"TYE's Tech. Lab."のコンテンツが増えてきたこともあり,
WebページのWordpressにBlogを移転・統合することにしました.
新しいURLは以下のとおりです.
http://t-techlab.com/blog/
まだ写真類の移動などが完璧ではないので,おそらくこちらもそのまま残すことになるとは思います.
みなさまよろしくお願いします.

MCC Advent Calender2016:3Dプリンターを改造した話

こんにちは,JA1TYEです.
私の所属している大学のコンピュータ系サークルであるMCC(マイクロコンピュータクラブ)の有志により,アドベントカレンダー企画が開催されたので1日だけ乗ってみることにしました.
(以前にも田町アドベントカレンダーに参加したりしています.)
ちなみに前日,19日の記事はsasamijpさんによる「jQueryで投げやりなアニメーション - ささみろぐ」でした.

さて,事前のコメントにも書いていましたが,最近した工作の中でまだこれといってまとめていなかった3Dプリンターの改造の話を書きたいと思います.

そもそもなぜ3Dプリンターを買ったのか

私が3Dプリンタを購入したのは2012年の冬のことでした.2012年の夏には念願のCNCフライスを買って色々と切削して遊んでいたのですが,
バイト先にあったStratasysの業務用3DプリンターがニュルニュルとCADでモデリングしたデータを実体化していくのを見たときにこれは面白いと思い,
CNCフライスの次はこれだ,と思っていたのでした*1.折しも2012年ごろはRepRapをベースにした激安完成品3Dプリンターが出回り始めたころで,
私が購入したSolidoodle 2 Proもそのような激安3Dプリンタの1つでした.
為替レートも手伝い送料込みで7万円程度だったと記憶しています.(今も変わりませんがMakerBotは20万円台でした.)
現在はDaVinciシリーズなど各社がこの価格帯やそれ以下の3Dプリンターを投入しているので珍しくもないですが…
2013年の2月の頭に到着し,その後は調整に苦労しつつもいろいろなサンプルを出力したり,電子レンジの壊れたノブの代用品をモデリングして
作成したりと,ぼちぼち活用していました.

やわなエクストルーダー


気が向いたときに時折動かして遊んでいたSolidoodle 2でしたが,1つだけ短所を挙げるとするとすれば素材であるフィラメントをノズルに送り込むエクストルーダーの貧弱さになるかと思います.*2
上の動画にあるように,Solidoodle 2のエクストルーダーの主要な部分は3mm厚のアクリルプレートを重ね合わせたパーツできています.
このパーツで保持されるボールベアリングとスプリングの力でモーターについているギアにフィラメントを押し付け,フィラメントを送るようになっているのですが,
このアクリルパーツにスプリングの力が思いっきりかかる設計のために,フィラメントが詰まったり,スプリングの圧を強くしすぎた場合に
簡単にアクリルパーツが割れてしまうのです.割れた場所によってはごまかしごまかし使用できるのですが,どうしようもなくなり,
泣く泣く高い送料を払って薄っぺらいアクリルのパーツをUSのSolidoodle社から輸入したりもしました.

改造のきっかけ

さて,そんな難ありのエクストルーダー部の補修パーツを買って修理した後にも,そもそもの設計の問題ということもあり
またアクリルが割れたりしました.その後も修理前のパーツのうち破損していないパーツと新しいパーツをニコイチして使ったりしていました.
また,段々とノズルの目詰まりが起きてきたため,ヒーテッドベッド側にのりを塗るなどの工夫をしても出力が安定しなくなってきていました.
そんな事情とその他の活動が忙しくなったこともあり,段々と自宅の3Dプリンターを使うことは減っていきました.

そんな今年の9月末,Solidoodleって今も新モデルを出していたりするのかなとふと気になって検索してみたときのことです.
Solidoodle社のWebサイトを見るとそこには,
Solidoodle Has Suspended Operations
の文字が.
あーやっぱりだめでしたか,安い以上の特色がなかったからなあ…と思いつつも,もはや私の3Dプリンターは純正補修パーツを購入することすら
ままならない状況であるということが明らかになったことだし,思い切って改造してしまおう,と踏ん切りが付いたのでした.

AliExpressでパーツを漁る

そんなわけで改造に踏み切ろうと考え,中国の通販サイトであるAliExpressで使えそうなパーツを漁りました.
その結果購入したのが以下の3つのパーツです.

品目 説明 URL*3
Bowdenエクストルーダー ホットエンドの直上ではなく離れたところからフィラメントを送るためのエクストルーダー URL
E3Dタイプのホットエンド フィラメントを加熱して吐き出す部分.本来不必要な部分でフィラメントが融けないように冷却ファンもついている URL
PTFEチューブ Bowdenエクストルーダーとホットエンドとの間を接続するチューブ.フィラメントを確実に送るために必要. URL

ヘッドの直上ではなく,固定された離れた箇所からフィラメントを送るBowdenエクストルーダーを採用したのは,
もともとのエクストルーダーがアクリル製で軽量であったため,ヘッドの耐荷重がさほど大きそうに見えなかったことと,
移動部の荷重を減らすことで不要な振動を抑えることができるのではないかと考えたためです.

届いたパーツを取り付ける

しばらく待っているとAliExpressで購入したパーツが届いたので,ヘッド部分を分解して,改造にとりかかりました.

まず最初に,BowdenエクストルーダーはY軸駆動用モーターの取り付け穴がちょうどいい位置にあったため,上の写真のようにそこに反対側からブラケットを共締めして取り付けることにしました.
ちなみに購入したBowdenエクストルーダーにはモーターは付いていなかったので,適当に秋月で売っているステッピングモーターを取り付けました.

次にホットエンドですが,もともと付いていたホットエンドはE3Dタイプのものではないので,当然今までの取り付けパーツは使うことができず,
ヘッドの土台部分のみを残して取り付けられているパーツをすべて取り外しました.

その後,土台部分のネジ穴の位置や新しいホットエンドの取り付け部分の径などを計測し,DesignSpark Mechanicalで取付用のパーツを
適当に設計・モデリングしました.

モデリングしたデータは別の3Dプリンター*4で出力しました.
上の写真のパーツの半円部にホットエンドのパイプがはまり,さらに別のパーツでそれを押さえつけることで固定するようになっています.
これらのパーツを取り付け,Bowdenエクストルーダーとホットエンドの間にPTFEチューブを取り付け,試運転を行いました.
しかし,上の3Dモデルのパーツ形状では,X軸の原点検出スイッチが押せなかったため,X軸が原点出しの際に暴走してしまいました.そのため,
応急処置でFRISKのケースの破片*5をスペーサとして貼り付けて正常に動くようにしました.

応急処置をしてヒーテッドベッドとのクリアランスの調整などを行って試運転を続けると,改造前と比べてかなり安定していたので,先ほどのホットエンド取り付けパーツを
改修したものを出力し,応急処置をしていたパーツと入れ替えました.

もともとのパーツに比べると積層跡が目立ちますが,特に造形物の品質に影響があるようには見えませんでした.
ちなみに上の方で黒い編組チューブを押さえているパーツもこの3Dプリンターで出力したものです.

ここまでは主にハードウェア的な調整の部分しか言及していませんが,ホットエンドが変わったために,ヒーターのPID制御のパラメータを調整したり,
ステージとホットエンドの位置関係が変わったためにその部分の設定をいじったりといった手間もありました.

しかし,ここまで購入したパーツは全部の合計でだいたい3000円程度なので,安上がりに3Dプリンターを復活・改善することができたといえます.
もともとこの3Dプリンターにはケースが付いていたのですが,Bowdenエクストルーダーを共締めした結果,ケースが使えなくなってしまったので,
今は室温が造形エリアの温度に直接影響する状況になっています.適当な板を買ってきて造形エリアの温度を保つ工夫をするというのが,
当面の今後の課題といったところでしょうか.

まとめ

今回はMCC Advent Calendar 2016の一環として私物の3Dプリンターを3000円で修理・改造する話を書きました.
最近はてなダイアリーの方はただの旅行記と化しているので,この手の技術系の記事に興味がある方は私のWebサイトであるTYE's Tech Lab.もご覧ください.
明日はPiyoPiyoPiratesさんです.お楽しみに!

*1:もちろんStratasysのは数百万しますので買えませんが…

*2:本当はネジがインチ規格だとかネジがインチ規格だとかネジがインチ規格だとかという点も気になりますが!

*3:一応,私が買ったお店のURLですが,探せばもっと安いのもあるかもしれません

*4:Zortraxで出力しましたが別に複雑な形状ではないので適当な3Dプリントサービス等でも大丈夫だと思います.

*5:ほどよい薄さのABSでできているので加工がしやすくて便利です.

2016年アジアの旅まとめ

2016年夏のアジアの旅はかなりいろいろな所に移動し,深センレポとそれ以外では読者層が違いそうな気もするので一応ここにまとめておきます.
(この記事の作成日は9/13ですが先頭に表示するために9/30付の記事としています.)

旅行記形式

2013年や2014年に書いていたような旅行記形式のレポート.一応行程別に分けておきした.
それぞれの記事のダイジェストというか,それぞれの日について簡単な説明を付けておきました.

東京〜香港(マカオ

8/12:春巻でGo!
東京出発から香港到着,マカオへ行き香港の宿に戻ってくるまでの顛末記.

香港〜深セン

8/13:乗り物特集号
あまりに香港でクタクタになったため深センに1日早く移動することにした話.

深セン滞在中

8/14:ツアー0日目:初華強北&北京ダック
ツアーの前日入り組と合流し,深センで本格的に動いた初日のレポート.
8/15:ツアー1日目:SeeedとPCB工場とNXROBO
ツアー初日で,タイトルの通りSeeed StudioやPCB工場,ロボベンチャーNXROBOを訪問したレポート.
8/16:ツアー2日目:アクシデント日和
ツアー2日目はやたらとアクシデントというかハプニングの多い1日でした.
8/17:ツアー3日目(最終日):華強北三昧
ツアー最終日は華強北電気街周辺を中心に回りました.電気街はこの日と翌日8/18を中心に回りました.

深セン〜南寧

8/18:さらば深セン!行くぜ南寧!
深センでおみやげを買い,南寧へ向かうべくバスに乗った話.強烈なバスの写真は一見の価値ありかと.

南寧〜ハノイ

8/19:道路は続くよどこまでも
南寧に到着してからハノイ行きのバスに乗り,中越国境を越えてハノイに着くも夜中にさまようはめになった話.はっきり行って移動しかしてません.

ハノイ滞在

8/20:土曜に水曜どうでしょう
インターンで行っていた頃に通い慣れたあたりや,当時行きそびれていた場所などを中心に回った話.
8/21:ハロン湾へGo!
日本で申し込んでいた世界遺産ハロン湾へツアーで行った話.
8/22:走る激痛,さまよう私
前日に食べた何か(多分串焼き!)に当たり,苦しみながらもおみやげを買ったり電子部品街を見に行った話.

ハノイ〜香港

8/23:漢字の世界へ逆戻り
早朝にノイバイ空港へ移動し,香港に戻ってきて電子部品街やヴィクトリア・ピークへ行く話.

香港〜東京

8/24:さらば香港!帰るぜ日本!
電子部品街に再訪したり,香港島側をちょっと観光したりしてから帰国するまでの話.

その他感想

旅行記形式とは違って,ある程度深セン観察会ツアー全体を俯瞰して書いた記事.
深センで700円のアクションカムを買った話
深センで買った700円のアクションカムの話をきっかけに,深センの「公板」「公模」文化を取り上げた記事.
「公板」「公模」について,かなり推測の混じった記事なので今後手を入れる予定です.

分解レポ

上記の深センで買った700円のアクションカムや,帰国後のOFF会で頂いたガジェットの分解記事については,
私のWebサイトのTeardownにまとまっています.

深センで700円のアクションカムを買った話

みなさんこんにちは.「ニコニコ技術部深セン観察会」を含めて,香港・マカオ・中国・ベトナムと旅行をして,無事に*1帰国しております.
それぞれの日の旅行記がまだ書けていないのですが,とりあえず先に深セン観察会の感想を書いてしまいたいと思います.
ツアーで回ったそれぞれの場所についての詳しい話は旅行記に書くと思いますので,しばしお待ちを.
(日付などのリンクでそれぞれの日の旅行記にも飛べるように更新していく予定です.)


【2016/08/31 17:00追記】本記事はあくまで私の感想で,基板工場が横流しをしているという言質を取ったわけではないので,
間違いが含まれている可能性も大いにあります.極力断定するような表現は避け,私の思ったこと,として書くよう努めましたが,
断定のように見える点があったとしても,あくまで私の感想であります.(間違いについては訂正したいので詳しい方は是非お知らせください!)
一応,「公板」や「公模」については,帰国後にAlibabaのB2Bサイトである1688.com等で検索を行うと幾つかヒットすることは確認したうえで,
記事を書いています.

*1:実はハノイで食べ物に当たってしまい若干無事ではないのですが・・・

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さらば香港!帰るぜ日本!

ネイホウ!*1ついに旅行12日目,最終日の記事です.

世界の電子部品街から・香港編その2

まず朝起きて,身支度を整えてから,日曜日にブンチャーとアイスをおごってもらったハノイの友人2人にお礼のはがきを書きました.
さらに自宅へ出すはがきも書き終え,最終日はどこを回るのかを考えたり,妹からのお土産要求リストの物はどこへ行けば買えそうなのかといったことを
調べていました.その中で昨日行った深水捗の鴨寮街には昨日見落としていた,純粋に抵抗やトランジスタなどの電子部品を小売している店舗があるということが判明しました.
これはもう一度調査しにいかねばなるまいと思い,リュックサックにすべての荷物を詰め込み,宿をチェックアウトして深水捗へ向かいました.
IMG_20160824_105921
ネット上の情報を元に注意して歩いていると,華輝電子というお店を無事発見できました.

*1:特に言及してませんが,基本的に最初の挨拶はその日の出発地の挨拶になっています!

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漢字の世界へ逆戻り

シンチャオ!ついに旅行11日目,ハノイから香港へ戻る日です!

早々にチェックアウト

前日に宿のお兄さんに6時半には宿を出発したほうがよい,と言われていたのと,
相変わらず腹痛で寝付きが悪かったこともあって5時半に起床.
その後,身支度をして,飲み物を飲んだりとまったりしながら過ごし,
6時20分ごろにフロントへ降りてチェックインしました.
このときに予想より支払金額が安く,1泊1700円程度だと判明.4階建てなのにエレベーターがなかったり,
インフレ率を考慮しても2年前の1泊3000円程度だったサイゴンのホテルに見劣りするなあと思っていたのですが,
1700円ならば十分すぎる設備でした.大して困るようなこともなかったですし,バックパックなら4階と1階の荷物の移動もさほど苦にならないと思います.
タクシーはなかなか来ず,結局7時ちょっと前に空港へ向けて出発.9時35分の便なので,7時でも全然余裕はあるはずなので全く焦らずの移動でした.

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走る激痛,さまよう私

シンチャオ!旅行10日目にして最大のアクシデントが起こってしまいました…

激痛で目が覚める

前日ハロン湾から帰ってきて,ナイトマーケットで晩ごはんを食べた後にビールを飲んで寝たわけですが,
夜の2時頃,猛烈に腸のあたりが痛くなり,目が覚めてしまいました.
トイレではひどく下してしまい,ほとんど水が出ているというような状態でした.
トイレに入ってからしばらく経つと腸のあたりがキリキリと痛むのは収まったので
ビールの飲み過ぎで消化器がおかしくなったかなーと思ったのですが,その後も再び激痛が走り,
寝転がっては激痛が走ると起きてトイレへ行きの繰り返しで,そこからはほとんど寝ずに朝を迎えてしまいました.
晩ごはんでもなま物は食べていなかったし,この時点では,ひどい二日酔いにちょっと食べ物が合わなかったのが合わさって
ちょっとお腹の調子が悪くなったのだろう,程度に思っていました.

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