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Silver bracelet

2016-08-26

ち合わせたちも気さ

11:51

「まさか、あんたがこんなところで働いてるなんて、あの世のお父さんもお母さんもびっくりしてるだろうな。時々は思い出すだろ?親のこともさ」

「そうだね。でも、今は自分が親だからね」

「だよなぁ…。あたしが女将やってた頃は、ももちゃんのお父さんもよく店使ってくれてたよなぁ」

「覚えてるよ、綺麗な人だなぁって思ってたよ。岸元さんのこと」

「あら、そう?へへへ…、そうだね、あんたとお母さんも、お父さんと一緒によく来てくれてたものね」

「そうそう」

「あんたはさ、ぼたんエビとか、ウニとか、アワビとか、やっぱりお嬢さんだから高級なもの好きだったよね。きっと、舌は超えてるんだろうな、育ちがイイから……」

「ああ、そうね、えび!忘れてた。ははっ…そうそう。ぼたんエビとか、ウニとか、アワビとか!」

「子供にも、たまにはうまいもの食わせてやってるのか?」

「ああ…」

私は大きくため息をついた。

「たまにファミレスとか、近所のランチくらいかな…。たまーにね」

「そっかあ、そうだよな。あたしらは、あたしらの人生だ。でもさ、ももちゃん、世の中は公平にできてるんだよ。お父さんを恨むなよ。息子は今、いろんな我慢している分だけ、大人になったらいい人生待ってるさ。ももちゃんも、あたしも、人生前半よかったからな。これでおあいこってやつだよ。イイ運は、若い頃に使い果たしたのさ。世の中、そんな風にできてるんだよ」

 アパートの斜向かいには、たまに顔を出すショットバーがある。息子が眠ると、そっと抜け出して1時間程度飲んでくる店だ。

オーナーは、脱サラして都内から引っ越してきた40代の人だった。自宅の一角を10坪程度改築して、昼はカフェ、夜はショットバーになる。

休みの日には、たまに息子とランチも食べにいくような顔なじみの店である。

「こんばんわ」

「やあ、ももちゃん、久しぶりだね」

オーナーだけではなく、2、3人いる店の常連の人くに声をかけてくれる。みんな地元の人間ではなく、私は、そこも気に入っていた。

「ひさしぶり!」

「いつものにする?」

「うん」

私はいつも、ジンライムを2、3杯と、野菜スティックというのが定番だった。

この日は、三田くんと待ち合わせをしていた。

「今日はね、仕事場の人と待してるの」

すると、常連の石川さんが、

「珍しいね、彼氏?」

と、冷やかすような顔つきをする。オーナーもニヤニヤと私をのぞき込む。

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