night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

5/4(金)皇居東御苑、プーシキン美術館展、名作誕生展など

 この日も午前中にLFJを聴いたあと、天気が良いので散歩することにした。


 ふと思い立って、大手門から皇居東御苑に入ってみた。東京で暮らしていてもなかなか来ない場所である。外国人観光客と一緒に行列して、入場口で手荷物検査を受け、プラスティックの入場証のプレートを受け取る。これは出口で返却することになっている。

 三の丸尚蔵館に立ち寄った。皇室の持つ美術品を展示する施設だが、いまは『明治のご慶事』という展示で、教科書に出てくる明治憲法発布式典の絵などが展示されており、あまり面白くはない。施設も小さくて貧弱である。有名な、伊藤若冲の『動植綵絵』を持っているのはここなのだよね…。国や都が予算を出して美術館を建てて、年に一度ずつくらい展示してくれればよいのではないかと思うのだけれど。


 富士見櫓。中には入れない。このあたり、下にある堀の向こう側は、一般人の入れない皇居である。


 江戸城の遺構である、本丸天守台。江戸城は、明暦の大火で焼けてから天守が再建されなかったわけだが、それはそれで見識だったのだろうと思う。しかし、御殿のたぐいが何も残っておらず、歴史をしのばせるものがほとんどないのは、残念ではある。ただ非常に立派な石垣のみ残っている。


 二の丸の雑木林。東京の真ん中とは思えない、気持ちのよい場所だ。

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 平川門から出た。東西線竹橋駅の近くだ。これまた思い立って、東京国立近代美術館へ。

東京国立近代美術館生誕150年 横山大観展

 大混雑だった。正直なところ、横山大観がこんなに来場者を集めるとは思っていなかった。そこまでいいか? 最後の渦巻になだれ込む『生々流転』は嫌いじゃないけど、他の絵は、技法はたいしたものだけれど、構図が崩れているような絵が多いよね…。

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 そのあとは地下鉄を乗り継いで上野へ。

東京都美術館プーシキン美術館展 ─旅するフランス風景画

 トロワイヨン、アルピニー、レルミットなどの、印象派の直前、コローと同時期くらいのフランスの画家の絵が並んだところ、よい絵が多かったなあ。アルピニーの森の絵、レルミットの『刈り入れをする人』など、しみじみとよかった。──パリを描いた作品を集めたセクションでは、電灯がキラキラしてたり、貴族のパリピ(笑)がピクニック!みたいな、豊かな都市生活の景観を描いた絵が多いなかで、『パリ環状鉄道の煙』という大きな絵が目をひいた。煙にまみれた、灰色の郊外。鮮やかな色彩などない。この時代にすでに、都市と郊外の格差みたいなものが示唆されている、と、ちょっと衝撃的だった。

 そのほか、シスレーの絵なのにちょっと狂気じみている『フォンテーヌブローの森のはずれ』とか、アンリ・ルソーの変な顔した馬とか、ちょっと一癖ある絵がいくつも来ている。面白い展覧会だった。ちなみに音声ガイドは、水谷豊氏が「はいぃ?」とか言ってたり(言ってない)、上坂すみれさんがコラム解説していたりと、これまた一癖も二癖もあるものだ。──音声ガイドにすみぺのシークレットトラックがあったそうで、知らなかったな…残念(笑)。

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 余勢を駆って、東京国立博物館へ。今日はどの博物館も夜間延長開館していて、遅い時間まで楽しめる。

東京国立博物館特別展『名作誕生 つながる日本美術』

 『名作誕生』展、気の毒なくらい空いている、とネットで若干評判になっていた(?)。雪舟の『破墨山水図』、状態がものすごくよい上に、この、ざくざくと筆をなでつけたような筆致で山水なんだからすごい。伊藤若冲の『雪梅雄鶏図』は、前にも何かの展覧会で見た覚えがあるが、木の枝にべったりとついた雪が、まるで甘い砂糖のようで、なんだかいい(笑)。──『八橋蒔絵螺鈿硯箱』は、ざっと斜めに横切る抽象化された八橋が、斬新なデザイン。目玉はやはり等伯の『松林図屏風』だろう。これは、見るたびに、「泣いている」と感じる…。毎年正月に東京国立博物館で公開されるのが恒例だったこの屏風、今年は出なかったと思うが、この展覧会で展示するためだったのね。

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 本館の日本の陶器も見物。


 野々村仁清ですわよ


 しかし、こういうののよさは、あまりよくわからないな…


 蒔絵、螺鈿、すごい


 東洋館。殷墟から出てきた“石彫怪獣”だそうだ。なんだこれは…


 宋代の白磁に、雍正年間の青磁。きれい


 これは宋代のもので、犀皮という、彫漆の技法だそうだ。


 ええ、なにこれ! 清代の、犀の角の細工だそうだ。あの国の宮廷工芸は、本当にすごいな…。

 一日でこれだけ見て回って、20時過ぎ。湯島から千代田線、小田急に直通する急行伊勢原行きに乗って、帰宅。さすがに少し疲れたが、充実した休日だった。