新Jay's時事英語研究

実際の翻訳案件ではよく見かけるものの、一般の辞書や規範文法書ではなかなか理解できない用法などを集めて解説します。 加えて、辞書では見出語だけで例文がないものも集めて用例解説します。

上位互換と下位互換、前方互換と後方互換

非常に混乱している表現に「上位互換」と「下位互換」、「前方互換」と「後方互換」があります。これらを英語で表わすと、それぞれ、lower compatible と upper compatible、backward compatible と forward compatible です。ネットで調べると定義がかなり混乱しているようなので今回はこの点について詳しく説明したいと思います。

【ポイント】
1. 日本語の「上位」「前方」は、「上 (または前) が基盤で、下 (または後ろ) と互換性がある」を、「下位」「後方」は「下 (または後ろ) が基盤で、上 (または前) と互換性がある」を意味しています。
2. 英語の upper および forward は「下 (または後ろ) を基盤として上 (または前) に向かって互換性がある」を、lower および backward は「上 (または前) を基盤として下 (または後ろ) に向かって互換性がある」を意味しています。
3. よって、上位 = lower (上位 upper), 下位 = upper (下位 lower), 前方 = backward (前方 forward), 後方 = forward (後方 backward) となります。

上位互換 (lower compatible): 同一バージョン内で、グレードが上の製品がグレードが下の製品機能を持つことを意味します。
下位互換 (upper compatible): 同一バージョン内で、グレードが下の製品がグレードが上の製品機能を持つことを意味します。
【注意】もちろん、グレードが下の製品がグレードが上の製品機能をすべて扱えるわけではありませんので、機能制限付きになります。

前方互換 (backward compatible): 上位 (=後発) の製品が、下位 (=先発) の製品に対応したデータなどを扱えることを意味します。
後方互換 (forward compatible): 下位 (=先発) の製品が、上位 (=後発) の製品に対応したデータなどを扱えることを意味します。
【注意】当然ですが、先発の製品が後発の製品の機能をすべて扱えるわけではありませんから、機能制限付きになります。

★問題点★
1. 機能が上か下かという点を、「共時」で捉えるか「通時」で捉えるかで、上記の区分になりますが、実際には「前方互換」の意味で「上位互換」を、「後方互換」の意味で「下位互換」を使う例が増えてきています。

2. 「上位互換」と「下位互換」をそのまま英語に変えて解説している辞書もあります。
http://e-words.jp/w/E4B88AE4BD8DE4BA92E68F9B.html
http://e-words.jp/w/E4B88BE4BD8DE4BA92E68F9B.html

3. ここを厳密に解説しているのは下記の辞書です。
http://ejje.weblio.jp/content/backward+compatibility
http://ejje.weblio.jp/content/upward+compatibility

まずは基本的な意味を捉えた上で、最近の「上位互換」と「下位互換」の使い方を理解しましょう。