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円高

2007-01-29

モリー先生との火曜日

たけくま先生のエントリーを見て最近読んだモリー先生との火曜日を思い出した。

昨年暮れ、2度目の脳梗塞を発症して開頭手術を行い、意識を取り戻して、最初に思ったことが「まだ最悪ではない」という言葉だった。なぜかといえば、とりあえずはまず、生きているということ。これだけでもう最悪ではない。そして病気は俺から歩行の自由を奪い発語もやや不自由になったが、それでも他人と不都合なく話せるし、論理的思考にも問題はなさそうだ。目も見え、手先も一応動くので、ワープロを打つこともできる。

たけくまメモ : まだ最悪ではない

モリー先生との火曜日は実際のお話で、ある病気で死が近づいたモリー先生とかつての教え子である著者のやり取りを書籍化したもの。

これを読んで一番心に残った言葉は

「いかに死ぬかを学べれば、いかに生きるかも学べる」

「いずれ死ぬことを認めて、いつ死んでもいいように準備する事。そのほうがずっといい。そうしてこそ、生きている間、はるかに真剣に人生に取り組む事が出来る」

と言う物。

他にも色々あるが、死を間近に控えたこの老教師の言葉の1つ1つが実に重い。

で、たけくま先生のエントリと関連しそうなのが以下の部分

突然モリーが口を開いた。

「死ぬっていうのはね、悲しい事の1つにすぎないんだよ。不幸な生き方をするのはまた別のことだ。ここへ来る人の中には不幸な人がずいぶんいる」

なぜでしょう?

「そう、一つにはね、われわれのこの文化が人々に満ち足りた気持ちを与えないっていうことがある。われわれは間違った事を教えているんだよ。

文化が役に立たないんなら、そんなものいらないと言えるだけの強さを持たないといけない。自分の文化を創ること。多くの人はそれが出来ない。私よりよっぽど不幸だよ。こんな状態の私より。

もうじき死ぬとはいっても、私の周りには愛してくれる人、心配してくれる人がたくさんいる。世の中にそう言える人がどれだけいるか?」

モリーが少しも自分をあわれんでいないことにはほんとうに驚かされた。もう踊る事も泳ぐ事も、入浴も散歩も出来ないモリー。

客の対応に自分の部屋のドアまで出てくる事も、シャワーのあと体を拭く事も、ベッドで寝返りをうつことすら出来なくなっているのに、どうして平気でその状態を受け入れられるのか?

論点をはっきりさせようと手を振ろうにも、もう最初のときのように自由に手を動かせない。ある単語が発音しにくくなっている。

Lの音がのどにひっかかる。2、3ヶ月もすれば、まったく話せなくなるだろう。

「私の気分はどうかっていうと、お客さんや友達がいると、元気が出る。愛情のあるつながりが支えになるんだね。

だけど落ち込む事もある。うそじゃない。何かがだめになっていくのが分かって、おそろしくなる。

手が使えなくなったらどうしようとか、話が出来なくなったらどうなるかとか。ものを飲み込むのは、それほど気にしていない。チューブで栄養を取らせてくれるから、どうってことないよ。

だけど、声と手はねぇ。

これは、私には絶対に必要なものなんだ。

声で語り、手振りで示す。それが他の人への私の伝え方だから」

死へと向かう肉体を自覚し、残り少ない呼吸を数えているこの人は、目覚めている全ての瞬間を思うままに自分自身へのあわれみに費やしてもいいはずだ。多くの人は、はるかに些細な問題しか抱えていないのに、ただただ自分の事ばかり考え、人とものの三十秒程しゃべっているだけで、目に霞がかかってくる。もう頭の中は別の事で一杯なのだ。友達に電話をかけなければ、ファックスを送らなければ、そしてうっとりと恋人の事を思ったり…

話が終わる頃になってやっと相手に注意を向ける。「ははぁ」とか「そうだよねぇ」とか言ってその場を取り繕う。

「問題の1つは、みなさん、ずいぶん忙しいって事だね。人生に意味を見出せないので、年がら年中それを求めて掛けずり回っている。次はこの車、次はこの家と考えるんだが、それもやっぱり虚しいと分かって、また駆けずり回る」

引用ばっかりになってしまいましたね。

出来れば全てを記載出来れば良いんですが、この辺で。

この本では

  • 恐れ
  • 老い
  • 欲望
  • 結婚
  • 家族
  • 社会
  • 許し
  • 人生の意味

をテーマに進んでいきます。

この本を今のところ3回程読みました。

心の中では「いかに死ぬかを学べれば、いかに生きるかも学べる」と言うキーワードが強く残っているが、やはりそう簡単に死について考える事は難しい。

けれども、何を大事にすべきか、何にエネルギーを注ぐべきかと言った事はある程度自分なりに考えて、現在実行中。

今日が死ぬ日かも知れないと思い、無駄な事には時間を使わず大切な事だけに時間を使っていきたい、そんな考えにさせてくれた貴重な1冊です。

たけくま先生が、あのような事を言えるって本当に幸せなんだなと思いました。

普及版 モリー先生との火曜日

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以下もお勧め

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

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