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日本ジャーナリスト教育センター / Japan Center of Education for Journalist

2012-03-18

Googleがジャーナリズムへ参入?「データ・ジャーナリズムがもたらす4つの変化」参加者報告vol.4


3月3日に東海大学で行った「ジャーナリスト・エデュケーション・フォーラム2012」の参加者報告。第四弾は、データジャーナリズムの八田真行さん駿河台大学経済学部専任講師)による「データ・ジャーナリズムの現在と未来:海外事例から学べること」のセッション。報告は小笠原盛浩さんです。

データジャーナリズムとは?

現在では情報公開が進み、誰でも簡単に生のデータにアクセスできるようになってきました。データを分析するツール、ビジュアルに表現するウェブサービスも無料で提供されています。こうした変化を背景に広がりを見せているのが、生データから意味を読み取り、わかりやすく視覚化して発信する「データジャーナリズム」です。
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データジャーナリズムの実例は?

  • 事例1:ニューヨーク市が公開するハリケーン避難地図がわかりづらいため、Googleマップと組み合わせて危険エリアをわかりやすく表示し、住所を入力すると危険度がわかるインタラクティブ機能を追加したもの(ニューヨーク公共放送)。
  • 事例2:共和党がGoogleドキュメントで情報共有を行っていたことから、共和党本部と交渉してアイオワ州予備選の結果をAP通信より早く一般に公開(Google)。
  • 事例3:米国の人気投資専門家がテレビ番組で推奨した銘柄の値動きを視覚化し、推奨された30日後には株価が下落している傾向を示したグラフ(金融系ニュースサイト)。
  • 事例4:マイケル・ジャクソン死亡報道のわずか4時間後に公開された、マイケルのビルボードランキングをリアルタイムで追いかけられるグラフ(ニューヨークタイムズ)。

すでに公開されているデータが豊富にあるため、多少心得がある人が分析・表現すれば、すぐにデータジャーナリズムができてしまいます。これまでのジャーナリズムとはスピード感がまったく違います。

データジャーナリズムはどう行う?
データジャーナリズムは通常

  1. データ収集(公開情報やウェブなどオープンな情報源から収集)
  2. 前処理(コンピュータで扱いやすい形式へのデータ整備)
  3. 処理・分析(統計ツールやGoogleウェブサービス等を利用)
  4. ウェブ・ブログで公開(読者がインタラクティブに操作できるように埋め込む)

というプロセスで進められます。
このプロセスのどの段階でもほとんど費用はかかりません。分析段階でも高度な専門知識は必ずしも必要とされません。統計学の入門書程度の知識があれば、高度な分析はGoogleなどのウェブサービスが支援してくれます。
つまり、データとやる気さえあれば、誰でもデータジャーナリズムを行うことが可能なのです。

ジャーナリズムがどう変わる?
八木さんは以下の4つの点で変化が生じるだろうと指摘しています。

  1. スキルセットの変化:記事を書く「ライター」だけでなくデータを分析・表現する「アナリスト」がジャーナリズムの担い手となるでしょう。それに伴い、Googleなど異分野からの「ジャーナリズム」への参入が増えると思われます。
  2. ジャーナリズム教育・キャリアパスの変化:オープンソース的な動きがみられます。勉強会が世界中で開かれ、基礎を身につけた人はコンテストで分析・表現技術を競い、名前が売れると仕事が来るというプロセス。コンテンツを公開する場合は、自分がどのデータを使ってどのように分析・表現したか手の内をさらし、他の人が追試可能にします。
  3. ビジネスモデルの変化:データジャーナリズムのようなインタラクティブなコンテンツでは読者のサイト滞在時間が長くなるため、広告収入などを生み出す可能性が高いと考えられます。
  4. メディアの変化:インタラクティブなコンテンツへのニーズが高まると、紙新聞やテレビのような一方向メディアでは対応できないため、電子ペーパー・タブレット端末などを通じたジャーナリズムコンテンツ接触が広がっていくでしょう。

質疑応答
<質問>
ジャーナリストです。1カ月前に民主党政権が年金試算結果を隠蔽していると騒ぎがありました。その背景には年金試算の材料となる出生率等の正確なデータが公開されていないことがあると思います。米国と違い日本の状況はこのまま変わらないのでしょうか?

<回答>
このままも何も、あなた方ジャーナリストがデータを出せとがんがん言わなきゃだめです。海外なら公開データをもとに「年金シミュレータ」などが作られるでしょう。福島原発事故では当初データが出ていませんでしたが、東大の早野先生らががんがん言ってコンピュータが扱いやすいデータが公開され、リアルタイムで各地の放射線量を示すグラフが作られました。どこにどのようなデータがあるかを把握しデータを出させることが、従来のジャーナリストがデータジャーナリズムで強みを発揮できる点だと思います。

感想とその後
八田さんは話の中で何度も「自分でやってみてください」と述べていました。環境は既に整っている、後は私たちのやる気の問題だと。私は数学が苦手なのですが、手始めに八田さんがデータジャーナリズム関係で一推ししていたサイト、英国「ガーディアン」紙のDATABLOGをのぞいてみました。

様々な分析の中で目に留まったコンテンツはこちら。3月4日のロシア大統領選挙の投票結果を分析し、プーチン当選の背景に不正行為があったのでは?と疑問を投げかけています。反論もありますが、「ガーディアン」紙は分析に使用した全データを公開して読者にさらなる検証を呼びかけています。

Russian election does the data suggest Putin won through fraud?(DATABLOG)

データジャーナリズムという新たな動きによってジャーナリズムの内容や範囲が一段と広がりつつあります。政府と従来のジャーナリストと人々の関係も変化しています。そこで私には何ができるのか、まずは勉強しているところです。
(報告:小笠原盛浩)

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