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2012-08-02

JCEJ×GLOCOM「データジャーナリズム実践 データから社会問題を発見する」を開催しました

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)は7月28日(土)、オープンデータの活動に取り組んでいるGLOCOM(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター)と協力し、JCEJ×GLOCOM「データジャーナリズム実践 データから社会問題を発見する」を行いました。
ワークショップは午前・午後の2部構成で、午前の部はGLOCOM主任研究員の庄司昌彦さんによるオープンデータについての講義、およびJCEJ運営委員の赤倉優蔵によるデータジャーナリズムの講義を行いました。昼食をはさんだ午後の部では、午前の部の講義内容を踏まえ、オープンデータを活用したグループワークに取り組みました。
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■オープンデータを使いこなせ!
庄司さんは、オープンデータやオープンガバメントについて、特に、日本の電子行政オープンデータ戦略(PDF)を中心に説明しました。

「90年代、IT戦略は行政がリードしていたが、それ以降、NPO活動や情報社会化などによってオープンガバメント論が形成されてきた。現在、日本の情報通信基盤整備は世界最高水準といえる。しかし、その基盤を活用し、国民主導でITの恩恵を受けるというところまではなかなか至っていない。この恩恵を受けるには、政府がオープンにしているデータを活用する必要がある。データを隠すな、もっと出せという話もあるが、重要なことはすでにあるデータを活用すること」

政府は2012年に高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部によって決定された電子行政オープンデータ戦略で、透明性や信頼性、国民が参加し官民協働の推進といったことを掲げています。そのなかで、庄司さんが重要と説明した政府の基本原則が次の4点です。

  • 政府自ら積極的に公共データを公開すること
  • 機械判読可能な形式で公開すること
  • 営利目的、非営利目的を問わず活用を促進すること
  • 取組可能な公共データから速やかに公開等の具体的な取組に着手し、成果を確実に蓄積していくこと

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世界各国で、オープンデータのポータルサイトをひらいていたり、推進していたりしています。日本では経産省がデータを出しているほか、東京下水道局が提供している「東京アメッシュ」といったものもあります。

■データジャーナリズムの時代がきた
運営委員の赤倉はジャーナリズムが大きな転換を迎えていると切り出しました。
「これまでは、今起きていることを伝えるのがジャーナリズムだった。しかし、様々な大量の情報がデジタルデータで公開され、利用することが可能になった。そこで、すでにある情報から、今起きていることにどのような意味があるのかを発見する役割がジャーナリズムに加わった」とデータジャーナリズムが注目されている背景を説明しました。
先駆けとなったのがWikiLeaks。国家などの機密文書を公開し、それをもとにThe Guardianが行った、イラク戦争に関する機密文書やアメリカ外交機密文書からスクープの掘り出しでした。
The Data Journalism Handbook というデータジャーナリズムの手引書が出版されるなど盛り上がりを見せています。さらに、Googleがスポンサーとなり、CNNやBBCといった世界各地の報道機関に所属する編集者らで構成されている編集者ネットワーク「Global Editors Network(GWN)」によってデータジャーナリズムアワード2012が開催されました。このイベントにおけるデータジャーナリズムのカテゴリーは次の3点です。

  • データ稼動調査報道部門(“DATA-DRIVEN INVESTIGATIONS”)
  • データ可視化/ストーリーテイリング部門(“DATA VISUALISATION AND STORYTELLING”)
  • データ稼動アプリケーション部門(“DATA-DRIVEN APPLICATIONS”)

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■ひとりでは× ひとりよがりも×
赤倉はデータジャーナリズムにおいて重要なポイントとして次の3つを挙げました。

  • チームで取り組む
  • 読者目線が大きなポイント
  • とにかくやってみる

「チームで取り組む」についてですが、ジャーナリストのみがニュースを見つけ、記事にするのでは不十分です。アメリカの調査報道を専門とするNPO法人プロパブリカには、プロジェクトチームがあります。編集者、記者、アナリスト、エンジニアといったように、チームを組まなければデータジャーナリズムは遂行できません。
次に「読者目線が大きなポイント」についてですが、どんな内容であれ、読者にとってわかりにくいようであれば意味がありません。例えば、2012年のピューリッツアー賞を受賞した米シアトルタイムスのワシントンのメタドン薬害禍があります。このスクープで、安価だが副作用の強いメタドンが貧困層で多用され、死亡数が高くなっていることを明らかになりました。
もともと、2010年末に「メタドンの副作用で死亡するケースが多い」という情報提供から調査を始め、公共機関が公開している複数のデータセットや文書を調査し、データ分析を行いました。さらに、100人以上の関係者へインタビューを行い、裏どりを行った後、調査結果を公開し、発表しました。地図上でデータを可視化するなど読者にわかりやすい工夫がなされていました。
海外のメディア企業では、優秀な技術者の採用やコロンビア大学のJスクールといったところでもテクノロジーが重視されています。読者、ユーザーを巻き込む動きもあります。ユーザーからのリアクションを受け取るようになっています。ユーザーからの調査に関するデータを受け取ったり、ユーザーにデータを探してもらったり、公開したデータをもとに別の新聞社に記事やアプリをつくってもらうこともあります。

赤倉による参考資料はこちら

午後からは、ワークショップを行いました。4,5人1組のグループが8つ。グループのなかには、必ずジャーナリスト、アナリスト、エンジニアが入っています。色違いのポストイットをもっていただいてグループ分けをしました。
それぞれ、自分たちでテーマを設定して、約3時間でオープンデータを活用した取材プランを発表してもらいました。加えて、1日でどこまでできるのか、短時間ではありますが運営の赤倉が説明したデータジャーナリズムアワードの3つの部門のどれかに応募することを目標にしました。

8つのグループが5分程度で発表を行いました。発表内容は次のようにグループごとにまとめました。
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■8つのデータジャーナリズムの実践(ワークショップまとめ)
1)データから見るクラブと風営法問題:「クラブが治安維持に有効になっていて、犯罪の閉じ込め効果があるのではないか」という仮説のもとでデータを収集。使用したデータは都道府県・市町村の犯罪発生場所など。クラブの営業情報は風営法に届け出と民間のポータルサイトから集めた。渋谷にクラブをマッピングし、赤い点の部分で犯罪増加率を表すと、マッピング部分からはみ出していないことがわかったので犯罪の閉じ込め効果があるのではないかと推測した。

2)原発補助金付けの自治体は脱原発についていけるのか?:原子力発電所が立地されている自治体は財政が潤っていると知っていたが「実際どれくらい潤っているのか」ということを可視化しようと。財政力指数のデータなどを使用。1を超えるところは国から交付金をもらっていないところ(例えば、東京)で、1以下は交付金をもらっているところとした。数値が大きくなるほどその自治体が潤っている。北海道の泊村が1.47、青森県の六ヶ所村が1.58、宮城県の女川町が1.28といったように原子力発電所をもつ自治体が突出する結果が出た。
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3)復興予算は必要なところで使われているか〜復興予算の流れを見せる〜:参加者の方が書かれた雑誌記事を深堀するというかたちで、復興予算が必要なところで使われているか。都道府県、市町村からの要望といった情報や復興交付金の申請。供給側のほうは、復興交付金の実施計画や東日本復興支援各明細書を扱った。

4)ナニワの自動車事故をなくそう:大阪で無灯火での自転車運転など乱暴な運転が多いと感じたことから他の地域より交通事故が多いのではないかと考えた。データからなぜ多いかを見つけ、どうしたら減らせるかの提言までを目標にした。人口統計や自転車協会が提供している自動車保有台数、県警などが提供している自転車事故死者数を利用。東京、愛知、大阪、福岡でデータをグラフ化して比較してみると、福岡が突出して多いことがわかり、大阪はそれほど高い数値ではないことが分かった。
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5)東京都幸せ向上プロジェクト:参加者同士で行ったランチタイム中に区のサービスについて話したことがきっかけ。政府や自治体の統計データをもとに、東京23区の住みやすさをランキングにして出そうと考えた。実装案としては、条件項目を設け、例えば、治安ランキングや医療、育児支援、防災などの条件を組み合わせるなどして、利用者のニーズにあったランキングを作成できるよう考えた。

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6)電動アシスト自転車のデータ公開を!:電動アシスト急拡大の功罪というサイトからテーマを拡張。市町村別、地域毎の保有台数や経産省・県警・警視庁などの防犯登録データを確認したが、東京で盗まれた自転車が千葉で盗まれたら管轄が異なるので検索ができないなどの問題点があった。データが明らかになれば、観光や地域の特性で活用や商圏、駐輪場の設定、介護支援などの計画をたてるのに役立つ可能性がある。

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7)「知られざる保育格差」‐貧困と子育て環境の負のスパイラル‐:地域によって保育園の数が違うといったこともあり、所得によって格差が生まれているのではないかと考えた。横浜市による民営、市営といった実際の保育所の収容人数を確認。横浜市がマップ上にドット化して提供しています世帯収入、親子の収入、一人親といった世帯別の区ごとのデータがあったので利用。実装案として地図上であらわすものがあったら可視化をし、スターグラフで利用率などを表そうと考えた。

8)いじめをなくそう!Hack Against Ijime:日本のいじめの実態についてデータからアプローチして問題解決する。文部科学省のいじめ調査の発表やいじめ認知件数、校内暴力の推移などを利用。「いじめ」自体を文科省が10年ごとに定義をかえていること、認知件数も佐賀県が、1000人当たり認知件数0.6件で、熊本県が27.6件といったように、発表データを疑ってしまうようなものもあった。そのため文科省だけでなく法務省の同じような調査で多角的にみることに努めた。

ワークショップの最後に庄司さんから「これで終わったらもったいない、フェイスブックでつながっているので活かしていきましょう」とまとめがありました。今回のデータジャーナリズムのワークショップは、8月末もしくは9月に続編を実施する予定です。詳細は後ほどお知らせいたします!
(学生運営委員・福武 亨)

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