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2016-01-18

沖縄から一人で乗り込みチャレンジ 「無名の一地方記者」の転機になったジャーナリズム・イノベーション・アワード

「一人でとても緊張しながら、沖縄から大荷物を抱えて行きました」。前回のジャーナリズム・イノベーション・アワードをそう振り返るのは、沖縄タイムスデジタル部記者・與那覇(よなは)里子さん。ほかの出展者と比較してしまい「背筋が凍る思いだった」と言いますが、出品した『地図が語る戦没者の足跡』(戦没者の死亡地域を地図に落とし込んだウェブサイト)は決勝プレゼンへと勝ち進み、見事データジャーナリズム特別賞に輝きました。その後、アワードで出会った首都大学東京システムデザイン学部准教授・渡邉英徳さん(最優秀賞)と共同制作した『沖縄戦デジタルアーカイブ』は第19回文化庁メディア芸術祭などに入選。與那覇さんの「大きな転機」となったアワードの感想を伺いました。

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▽「参加賞狙い」で沖縄から参加

Qアワードに出展された経緯を教えてください。

きっかけはJCEJの方からの出展依頼メールに、沖縄タイムスのウェブページに掲載していた『地図が語る戦没者の足跡』について最上級の褒め言葉が寄せられていたことでした。戦後70年の年に、住民の4割が戦死した具志頭(ぐしかみ)村出身者の戦没地を落とし込んだ地図から足跡を追ったデジタル記事なのですが、東京で見てくださる方がいたという実感と感激から、部内で相談したところ、アワードにチャレンジしてもいいのではないかとの結論でまとまりました。

年明けにエントリーした時は8組ほどしかいなかったのですが、応募した翌日から朝日新聞や毎日新聞、そして電通PRなど大手企業が応募しているのを見て背筋が凍る思いでした。プレゼンなど今までしたことがなく、「本当に行って大丈夫なのだろうか」と参加することすら怖くなりましたね。でも、なかなか多くの人に見てもらえる機会はないので、「参加賞狙い」で営業マンとして行こうと思うようにしました。

Q当日はお一人で参加されたんですよね?

出展した作品を一緒に制作してくれたGIS沖縄研究室の渡邊康志さんも参加予定だったのですが、急きょキャンセルになってしまいまして…
私たちの作品は動きを見てもらわないといけないので、沖縄からPCを2台送りました。出展場所はくじ引きで決めるのですが、隣が朝日新聞で向い側が神戸新聞でした。ドキドキ緊張しながら行ったのに、朝日新聞の担当の方は大量に飴を用意していて、「見てくれた人に配るんだ」と言っているのを聞いてすごい余裕があると思いましたね。本当は3人くらいでゆっくり回る時間が欲しかったのですが一人で約3時間、ノンストップで説明し続けました。他にも個人で出展されている方が多いな、という印象を受けました。


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▽記事の作り方に、新しい視点が持てた

Qアワード参加後、何か変化はありましたか?

新聞社はその中で完結しようという雰囲気があるのですが、色々な所とコラボした方が記事の書き方や見せ方などがもっと活性化されると思います。ニッチなところを攻めるしらべぇさんや、斬新な切り口のヨッピーさんの作品を見て「こういうやり方もあるんだ」と、正解が1つではないことを実感できました。沖縄タイムスで例えると、沖縄戦は王道かつ昔からのテーマですが、ウェブでもっとカジュアルに見せる方法があるかもしれないなと思いました。

ほかにも、Yahoo!のイベントやG空間EXPOなどに出ることができました。無名な地方新聞記者がイベントにも呼んでもらえるようになったし、アワード出展がとても大きな転機になりましたね。

Q「ジャーナリズム」に対する考え方は何か変わりましたか?

アワード後、「ジャーナリズムって何だろう」と疑問を持ちながら帰りました。色々な人に聞いたり、「ジャーナリズムとは?」という本も買いましたし(笑)新聞社に所属していることもあって、ジャーナリズムは政治思想の類いであると思っていましたが、色々な視点があって良いし、むしろ代替があることで質が担保され、クオリティの高いものができると思います。


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▽「ご縁」から生まれた新たな作品

Q、首都大の渡邉さんとは、どのようにして『沖縄戦デジタルアーカイブ』を共同制作することに?

渡邉先生とは檀上でしか話してないんです(笑)トロフィーをもらいながら、横で「こんなワンツーで並ぶ機会はないですね。ご縁なのでやりましょう」って言って降壇しました。その後、3月に沖縄で打ち合わせをしました。戦没者の足跡に加えて、沖縄戦の体験者の方が戦中どのような軌跡をたどったのか、それも可視化できないかという意見も出て、編集局の記者30人以上が体験者に取材に行きました。白地図に、3カ月以上の移動状況を手書きで書いてもらいました。6月23日の沖縄戦終結「慰霊の日」に向けて急ピッチで4月の半ばから進めて、5月のゴールデンウィークにコンテンツを集め終えた感じですね。首都大の渡邉先生とGIS沖縄研究室の渡邊先生の技術、記者、プログラマー・・・。一人欠けても作ることはできませんでした。

今まで、戦争で亡くなられた方に焦点が当たる記事はあまりなかったのですが、データでしか可視化できない事実を積み重ねることで、一緒に軌跡をたどることができました。1つ1つの魂を感じることができ、亡くなられた方と向き合うことができたかな、と思いました。


▽自分の作品を高めたい人は参加必須!

Q.応募を迷っている方に一言お願いします!

ネットコンテンツを作る人にリアルに会えたことで、ぬくもりを感じられました。皆さん作品への愛を語るので、会場がすごい熱気で!
自分の作品をもっと良くしたいと思う人は絶対参加した方がいいです。作品を知ってもらえる絶好のチャンスであり、ガチ勝負の場!しびれる場所でお会いしましょう!

今回、與那覇さんにインタビューをして沖縄に関心を持ちました。アワードは、今まで接点がなかった人を身近に感じ、視野を拡げるきっかけにもなります。2016年もどんな出会いがあるか楽しみです。
(JCEJアワード運営サポート・小野ヒデコ)


来年3月12日に開催する「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2016」は、今回で2回目。作品の作り手と受け手が直接交流し、優れた作品をみんなの投票で選ぶイベントです。組織や業界の垣根を越えて、切磋琢磨する仲間と出会い、語り合える場にしたいと考えています。ぜひ、あなたの作品を応募してみませんか。この作品が良かった、という推薦も受け付け中です。

詳細はアワード特設サイトから!

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