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言語散歩

2010-10-13

スイスの言語事情

21:57

一応念のために書いておくと、スイスには「スイス語」などという言語は存在しない。じゃあ何語が使われているのかというと、現時点で4つの公用語が定められている。すなわちドイツ語フランス語イタリア語ロマンシュ語の4つである。

このうち最も広く話されているのがドイツ語で、スイス全人口の64%がドイツ語話者であるという。テレビ・ラジオなどのマスコミで用いられているのは高地ドイツ語ドイツの標準語)であるが、実生活でスイス人が用いるのは「スイスドイツ語」という言葉で、これはドイツ語方言の中でも相当訛っているものである。ドイツ人でも聞き取れないことがある、といわれるくらいだからよほど訛っているのだろう。

アルプスの少女ハイジ」の舞台は、このドイツ語使用地域である。そもそも「ハイジ(Heidi)」という名前自体、ドイツ語圏の人名であるし、ペータークララにしても、やはり典型的なドイツ語圏の人名である。ハイジが一端スイスを離れ、フランクフルトに行く話があるが、フランクフルトスイスハイジにとっては外国であるにも関わらず、同じドイツ語圏であるので、言語面では問題ないことが分かる。


人口面でドイツ語の次に話されているのがフランス語である。といっても使用人口比は19%で、ドイツ語に比べると大分少ない。国連の施設が多いジュネーヴは、フランス語使用地域である。

スイスフランス語には特徴がある。以前話をしたように(http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1053969786&owner_id=17005225)、フランス本国では70、80、90についてsoixante-dix、quatre-vingt、quatre-vingt-dixという実に特徴的な呼び方をするが、ここスイスでは呼び方はとてもフツーで、それぞれseptante、huitante、nonanteと呼ぶ。


イタリア語スイス南部の諸州で用いられていて、その使用話者の人口比は8%ほどである。フランス語地域と同様、ここでも本国(イタリア)のイタリア語とは異なる形のイタリア語が用いられており、イタリア北部・ロンバルディア地方(ミラノのある辺り)の方言がここスイスでも話されている。むしろ北イタリアよりもこちらの方が方言本来の姿がよく保存されているほどである。


ロマンシュ語スイス南東部グラウビュンデン州の極一部の人間(人口比0.5%)の間で使われているのみであり、世界の「絶滅に瀕する言語」の中の一つに数えられる言語である。現在スイス政府の間で保存策が講じられているところである。

ロマンシュ語は、その名の通りロマンス諸語(ラテン語の子孫言語。フランス語とかイタリア語とか)の一つであるが、スイスの他の言語(独仏伊)の影響を強く受けており、その結果このような独自の言語が誕生した。


スイスでは、異なる言語使用地域に行った場合、共通語としてかつてはフランス語が用いられていたらしい。しかしながら21世紀現在、フランス語を用いるのはもっぱら高齢者で、若者を始め多くの人々は英語を共通語として用いるらしい。「国際語」英語の浸透は、こういう形でも見られるのである。

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