11.繰り上がりのある足し算2 ―五珠の利用―

 前回の10に繰り上がる足し算、10から繰り下がる引き算が理解できたなら、1から5までの一桁の計算はすべてできる。あとは6から9の最後の方法が残るのみだ。
例えば5+6がそれにあたる。6をそのまま足そうとしても、五珠はすでに入っているうえ、一珠が一つも入っていないので、6の補数4を取ることもできない。
どうすればいいだろうか? まずは、今までの知識を組み合わせて利用してみよう。
6を足す場合、補数4を取って10に繰り上がればよかった。6の補数4は一珠を使っては引けないが、五珠を利用すれば可能だ。1を入れて5を取ればいい。これは4を足す方法の逆演算として説明した。
もう一度確認しておこう。五珠を使って4を足す方法は「5をいれ、1を引く」だった。4を足したいのに5を入れたので、入れ過ぎた1を引いておく。この逆が4を引く方法「1を足して5を取る」だった。
これを使えば補数4を取ることができる。そして、10に繰り上がれば、「補数を取って10に上がる」が完成する。
結局、珠の操作は「1を足して5を取って(‐4)、10に繰り上がる(+10)」となる。

この方法で6から9を足す場合、五珠を使って補数を引いてから10に繰り上がる。五珠を使った4から1までの引き方を確認したうえで、すべてをまとめてみよう。

引く4(6の補数)は1を入れて5を取る
引く3(7の補数)は2を入れて5を取る
引く2(8の補数)は3を入れて5を取る
引く1(9の補数)は4を入れて5を取る
 
このあとに「10に上がる」を付け加えると、つぎのようになる。

+6は、1を入れて5を取って、10に上がる。
+7は、2を入れて5を取って、10に上がる
+8は、3を入れて5を取って、10に上がる
+9は、4を入れて5を取って、10に上がる
これが一つ目の考え方だ。

二つ目の考え方は6から9を「五珠といくつ」と考える方法だ。6なら「5と1」、7なら「5と2」、8は「5と3」、9は「5と4」になる。
これを使って先の5+6を考えるとしよう。6を「五珠と一珠一つ」と考え、それぞれを順に入れていく。まず1。そのまま入れられる。そして5。すでに入っている5と、入れたい5を合わせて10になるため、五珠を取って、10を入れる。
5の足し方は、「補数の5を取って10に繰り上がる」だったと考えてもいい。
結局は「1を入れて、5を取って10に上がった」ことになり、先ほどの方法と全く同じ運珠になっていることがわかる。
同じように7は「五珠と一珠二つ」。まず一珠二つを入れ、その後5をたす。5を足す方法は5を取って10に上がる。8は「五珠と一珠三つ」。まず3を入れ、5を取って10に、9は「五珠と一珠四つ」。一珠で4を入れ、5を取って10に上がればいい。
 「五珠を使って補数を取る方法」と「五珠といくつかに分ける方法」 考え方の違う二つの方法だが、珠の動かし方は全く同じ。前者は引き算を基にで、後者は足し算を基にしているといえるだろうが、どちらが分かりやすいか、好みによるところだろう。
 
足し算が理解できたなら、引き算は先の逆演算として捕らえておこう。先ほどと全く逆の操作をする。
引く6は、10を取って、5を入れて1を払う。
引く7は、10を取って、5を入れて2を払う。
引く8は、10を取って、5を入れて3を払う。
引く9は、10を取って、5を入れて4を払う。
こちらのほうも先ほどの二つの考え方で説明することができるのだが、それは読者に考えてもらうことにしよう。
 
これまでの運珠をすべて理解できれば、一桁同士の足し算すべてと、その逆演算の引き算が可能になる。また、一桁なら、49を超えない範囲でなら、いくつでも足し算・引き算が可能だ。
もし、今までそろばんを習ったことにない人でも興味がわいたなら、そろばんをはじいてみてほしい。そろばんを理解するのに、そろばんに触れること以上に、最良の方法は無いからである。