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人事組織の研究ブログ by jinjisoshiki このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2017-05-19

権力を手中に収めた人の行く末はどうなるのか

組織行動論においては、組織やチームの人々を動かすために必要能力として「リーダーシップ」が思い浮かぶことでしょう。しかしそれは一面的見方に過ぎないかもしれません。現実的には、組織を動かすのに最も重要なのは「権力」だという考え方もあるでしょう。権力とは、対人関係のような関係性における重要な資源のコントロールの度合いを意味します。重要な資源をコントロールできる側が権力を持ち、コントロールできない側は、重要な資源を得るために権力を持つ側に依存することになります。つまり、権力を持つということは、他者に対して影響力を行使することができる、すなわち他者を自分意志に従わせることができるわけです。したがって、組織を動かしていくためには権力を手中に収めることが最も効果的な手段だということもいえるわけであり、実際、組織内において権力を手に入れるために「社内政治」のような状況が生まれるわけです。


では、特定人物が実際に権力を手中に収めることに成功した場合、その人の行く末はどうなるのでしょうか。権力を維持し、成功を続けることができるのでしょうか。あるいは、失墜したり没落したりして最終的には権力を手放さざるを得なくなるのでしょうか。Anderson & Brion (2014)は、権力に関する研究を整理し、以下のような見解を導いています。まず、世の中の仕組みや特徴として、権力を手に入れた人々は既得権益を守るために現状を維持しようとします。意外なことに、権力を持っていない人々も、現状の状態容認し、現状維持に傾くとのことです。このように、社会的構造が現状維持に向かう場合には、権力を手中に収めた人々にとっては、権力維持に有利に働くことになります。また、権力を手に入れることによって、本人の感情認知、行動に変化が生じ、それが権力維持に貢献することもAnderson & Brionは指摘します。例えば、権力を持っている人ほど、ポジティブな感情状態を維持し、精神的に健康であってストレスを感じにくく、第三者からもポジティブな評価を受けるといいます。これらの傾向は権力維持に貢献します。また、権力を持っている人ほど、長期的に目標を設定しやすく、楽観的に構えて目標の追求を行いやすくなります。さらに、権力を持っている人ほど、機会追求的な行動をとり、束縛されにくく、政治的能力に磨きがかかり、自分に有利なかたちで政治行動を行ったりすることができるようになります。これらもすべて、権力維持に貢献すると考えられます。


一方、Anderson & Brionによれば、権力を手に入れることで生じる考え方や行動の変化は、権力を失う可能性を高める方向にも働きます。権力を失う理由としては、非倫理的な行動に手を染めやすくなること、意思決定バイアスがかかることで過ちを犯すこと、競争関係に巻き込まれて敗北することが挙げられます。例えば、社会的な特徴として権力者複数存在し、否応なしにライバル関係が生じます。権力争いが起こるわけです。また、権力を手に入れることで、非倫理的な行動に手を染める可能性が高まるということもいえます。権力を持つことで、他者をモノのように扱ったり、公正かつ丁重に扱おうとする意識が薄れたり、より高圧的に接するようになりがちです。また、権力を手に入れることでより自己保身的になり、それがデータ改ざんや騙しなどの不正行為を引き起こす可能性を高めます。さらに、権力を手に入れることで傲慢になって意思決定にバイアスがかかったり他者のアドバイスに耳を貸さなくなることで重大な過ちを犯す可能性を高めます。それ以外にも、権力を手に入れることで安心したり油断したりして脇が甘くなることで、ライバルに弱みにつけこまれたり足元をすくわれる機会を与えてしまうことにもつながりがちです。これらはすべて、権力者が堕落し、失墜し、最終的に権力を失ってしまう可能性を高めると考えられます。


上記のように、権力を手に入れた人物は、権力を維持することに有利な状況を獲得するのと同時に、権力を失墜する可能性を高める思考や行動を発展させる可能性も高めることをAndersen & Brionは指摘するのです。では、どのような条件のときに権力が維持され、どのような条件の時に権力が失墜するのでしょうか。Anderson & Brionのレビューによれば、まず重要な条件が、権力を手に入れた人物が、それを自己利益の追求や自己保身のために用いようとするのか、あるいは集団や組織のために用いようとするのかにあるということです。権力者が自己利益の追求や自己保身的な行動を増大させれば、それは非倫理的な行動、不正、意思決定の過ち、ライバルとの競争の激化を招き、権力を失う可能性を高めるでしょう。一方、権力者が、集団や組織に献身的な行動を増大させれば、それは周りからの信頼や支持を勝ち得ることにつながるため、権力を維持させることにつながるでしょう。


では、権力を手に入れた人物が、自己利益追求的あるいは自己保身的な行動に出る場合と、集団や組織に貢献しようとする行動に出る場合を分ける要因は何なんでしょうか。Anderson & Brionのレビューによれば、まずは、そもそも権力を手に入れようとする動機が何かによります。権力を手に入れたい動機が、自己利益の追求や自己保身ということであるならば、とうぜん権力を手中に収めた後にはそのような行動が待っていることでしょう。一方、集団や組織に貢献するために権力を握ることを志向した場合には、権力掌握後もそのような行動が期待されることになります。権力を手に入れれば、もともとの性格すなわち本性をさらけ出しやすくなるので、その人物がもともと自己中心的で自己利益追求的な性格の持ち主なのか、社会的で他者に対して協力的な性格なのかが権力への動機にも連動していることでしょう。

参考文献

Anderson, C., & Brion, S. (2014). Perspectives on power in organizations. Annual Review of Organizational Psychology and Organizational Behavior, 1(1), 67-97.

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