パンドラ (再掲載)


 「パンドラ」


 ぺこり、猫山猫治です。
 死ぬちょっと前に父さんが、「俺の葬式でうたえ」と言って
こんな歌詞を書いてよこした。


(音楽始まる)


パンドラの箱開けちゃったんだ~ ( パンドラの箱開けちゃったんだ~)
ルビコン河も渡っちゃったんだ~ ( ルビコン河も渡っちゃったんだ~)
へい (へい) へい (へい)


煙吐き出す奇跡の星は
僕らを乗せて何処へ行く
人間の凄い破壊力でかなりグロッギー
地軸ぐらぐら大丈夫か the Earth?
ダイジョブじゃないかも


パンドラの箱開けちゃったんだ~ ( パンドラの箱開けちゃったんだ~)
ルビコン河も渡っちゃったんだ~ ( ルビコン河も渡っちゃったんだ~)
へい (へい) へい (へい)


 前の晩、父さんと視ていたテレビで軍事評論家という人が
核兵器をいつまでも米ソ冷戦時代のような戦争抑止のツールと思ってもらっていては困ります。現在我々は既に実戦での限定的使用が可能な限定核の時代を迎えているのです」
 と言っていた。
「やれやれ、広島、長崎に逆戻りですかい?」と半可通な茶々をいれると父さんそれは聞いてなかった様子で
「俺はもうすぐ死ぬからいいがお前たちはこれから大変だな」
 と、ホントに気の毒そうに僕を見たんだ。


パンドラの箱開けちゃったんだ~ ( パンドラの箱開けちゃったんだ~)
ルビコン河も渡っちゃったんだ~ ( ルビコン河も渡っちゃったんだ~)
へい (へい) へい (へい)
 
 そのあと軍事評論家の話は
「今こそ我が国全土を覆う迎撃ミサイル網の整備構築を急がなければなりません!」
 という方にいっちゃって、最新の迎撃ミサイルシステムがいかに優れものかペラペラと喋りだした。このおっさん軍需産業の回し者臭さが露骨過ぎやしないか?などと思いつつも
「父さん安心しなよ、スーパーハイテクミサイルが僕らを守ってくれるって」
 と、またも半端な軽口を叩くと、父さん何故か今度はマジに受け止めて
「おまえ、気は確かか?あんなやつの言うことを真に受ける馬鹿が何処にいる、Stupid !stupid ! 」
 と、えらい剣幕で僕をなじった。


パンドラの箱開けちゃったんだ
ルビコン河も渡っちゃったんだ


今度また世界のそこここで
大きな赤いキノコ雲がわき上がる時も
別に最終戦争でもなんでもなくて
世界はどうやらそう簡単には
すっきりくっきり終わっちゃくれねえみてえだ


(転調)


No future no cry (No future no cry)
Stupid future no cry ( Stupid future no cry)


No no no no no no no
Fu fufufu turturturturture
No cry (no cry)


Stu tu tu pi pi pi pid
Fu fufufu turturturturture
No cry (no cry)


No future no cry ,stupid future no cry
(No future no cry ,stupid future no cry)
No cry, no cry,no cry, no cry, no cry,no cry, no cry no cry!
(出口なしを泣~か~な~い~で~)
ニャー~~


(音楽終わる)


結局僕はこの歌を父さんの葬式で歌わなかった。
父さんが僕に出した生前最後の注文だったのにね。ぺこり








パンドラ