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2009-09-22 ロックの歴史…

ザ・スミスの歴史

ロックの歴史というところがブクマに上がってて、まあそれはそれで良いのですが、ザ・スミスの項で引用されてる"Cemetery Gates"の訳があんまりなので、一言苦言を。イヤだなあ、こういう高齢者的指摘、と自分でも思うのですけれども。



元歌詞の該当部周辺を少し引用します。*1ある晴れた日に、友人と墓地で会う…という話です。

So we go inside and we gravely read the stones

all those people all those lives

where are they now ?

with loves, and hates

and passions just like mine

they were born

and then they lived and then they died

Whisch seems so unfair

and I want to cry

(”Cemetry gates”,The Smiths,1986)

※太線部が引用された部分

ざっと訳してみますね。

 そして僕らは(墓地の)中に入り

 厳粛に(gravely)に墓石(gravestone)の墓碑銘を読んだ

 これらの人々は、その人生は

 今どこに?

 僕と同じように

 愛し、憎み、

 心揺さぶられて、

 彼らは生まれ、

 生き、そして死んだ。

 それがとても不公平なことに思えて

 そうして僕は泣きたくなった

さて、これが「ロックの歴史」ではどう訳されていたかというと、

「彼らは生まれ 生き そして死んだ なぜだかとても不公平な気がして 僕は泣きたくなった」

Byセミテリー・ゲイツ

(ザ・スミス(The Smiths)モリッシーによる弱者の反逆)より引用

…となっています。



別にそれほど大した違いはないじゃん、と思えるかもしれませんが、「なぜだかとても」という接続はちょっといただけない。ひどい。安易すぎます。



ひょっとしたら、"Which seems〜"を"It seems〜"と聞き違えたのかもしれないけど*2歌詞の流れからいって、ここでunfairに感じた理由が当人にとって「なぜだか」といった『不明な理由』であるはずがない。自分と同じように生きた人々が、自分と同じように今ここにいないことにunfairを感じて、そのunfairが我ながら奇妙で理不尽であることは理解しているからseemと弱めて表現しただけであって、このseemは「なんか〜ぁ○○なカンジ?てゅーか、△△みたいな?」じゃないんですよ。*3そこを「なぜだか」とつないでしまうのは、単に訳において安易なのか、Cemetery Gatesという曲を聴いてないか、理解してないか、 その一行だけどこかのひどい評論家の文章から引っ張ってきたか、あるいはその全部か……いずれにせよ、余り褒められたものではない事情があるのではないかと思いますが、できれば再考願いたいところです。



ちなみに、このunfairがまた皮肉(というかhumour*4という方が正確か。)なニュアンスを帯びるのは、このアルバム全体が「死」への傾斜によって貫かれているからです。*5つまり、死者を前にして「僕たちが生きていてあなた達が死んでて、可哀想ですね」と言ってるのではなく、sunnydayを見てdreaded(怖い、気色悪い)としか感じられない鬱屈した青年が、綺麗に整えられた墓石を見ながら「自分らだけ死んでるなんて不公平DA!」とまでは言わないまでも、「なんかズッルぃよなぁ…(泣)(Which seems so unfair I want to cry)」というようなニュアンスを含んでくるわけですね。



引用者はこの辺りのことを本当に理解してこの一節を選んだのか、それにしても訳のずさんなことよ……とちょっと悲しくなった連休中のできごとでした。



ああ、またなんか師匠に突っ込まれそうなネタを書いてしまったぞ、と。

師匠元気かなー…。*6

*1:まあ、もともと徹底してsense of humour に満ちた彼の歌詞を日本語訳する困難というのはあるわけですが…

*2ググるとそう誤って書いているサイトがあった。だが、元のアルバムを確認しても、歌詞は"Which"となっている。ちなみにザ・スミスはオリジナルCDに必ず律儀に全曲の歌詞カードを付けて(多分Morrissey的には『詩集』だからだろう)いたので、確認が可能なのです。

*3:要するに、「なぜだか」が不公平にかかっちゃマズいわけです。従って、「とても不公平な気がして なんだか僕は泣きたくなった」なら可、と言い換えても良いですね。

*4:イギリス人の「ユーモア」については、ここなど参照。

*5:一曲目&アルバムタイトル曲"The Queen Is Dead"のラストでは、「人生はとても長い、お前が孤独なら。」とうたわれ、3曲目のタイトルは「もう終わりだ、って分かってる。"I Know It's Over"」、5曲目がこの『墓地でデートするゲイ・ボーイズ』の歌、で、7曲目「心に茨を持つ少年」ときて、9曲目で「あなたとドライブしながら2階建てバスが突っ込んできたら、こんな幸せな死に方ってない」、「決して消えない光がある"There Is A Light That Never Goes Out"(=『死』という希望)」…とうたう……まあそういうアルバムなので。

*6:いつの間にかブログのプライベートモードが取れて、オマケに昨日付で更新してるようなのでお元気なのでしょう。(以下私信)すいません、こないだ2泊3日で東京でしたm(__)m。…まあ研修みたいなヤツで、暇は全然なかったんですが。「いつか飲もう」という話、まだ一方的に覚えてますよー。