Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

マスコミとヘイトスピーチ

 在日韓国人朝鮮人に対するヘイトスピーチを規制すべきという声が高まりつつある。原則として、私も人種や属性をのみを理由にしたヘイト行動を支持はしないことを表明しておく。在特会を良い団体などとは思わないし、彼らの行動を是とするつもりは全くない。
 こうしたヘイトスピーチなどの暴力を用いない威圧行動に対して、規制法を設けるべきという意見が一部から出ている。大部分のマスコミも倫理的立場より賛同の意を示しているようにも感じられるが、法制化の動きが現実的になり始めるとは果たして現在のスタンスを続けられるかどうかは疑問に感じている。
 というのも、何を持ってヘイトスピーチと呼ぶかを規定することは非常に難しいということがまずあろう。その上で、今回裁判により在特会が敗訴したことも大きな理由となる。わざわざ新たな法制化をしなくとも既存の法律できちんと裁かれている(http://www.huffingtonpost.jp/2013/10/07/zaitokukai-hate-speech_n_4055915.html)。そこで、なぜ法制化を急が無かればならないのかという疑問が生まれる。

 最初にも書いたが、私はヘイト活動が社会でまかり通ることを良いとは考えない。しかし、それを理由に言論が大きく制約されることも同時に望むところではない。ヘイトスピーチ規制法が導入されるとすれば、おそらく受け手がヘイトと感じた場合にそれを取り締まるという形になるだろう。現状取り扱われているハラスメントと同じような扱いになることが予想される。もちろん大部分は実害があるので規制の効能がないというつもりはないが、拡大解釈の余地は残されやすくこうした恣意性は実のところマスコミがもっとも嫌うものでもある。
 例えばマスコミが何らかのキャンペーンを張った場合、よほど明確な事実がなく疑いレベルで報道すればヘイトと認定されてもおかしくはない。だからと言って、法律を在日韓国・朝鮮人に対するもののみに限定するなどと言う馬鹿げて規定なども導入できるはずはない(ナチスを賛美など特定例に限る規制は存在するが)。
 結果として、現状は好意的なマスコミ(http://www.huffingtonpost.jp/2013/06/01/hate_speech_n_3370141.html)も具体的な法規制の議論が動き始めると、徐々に掌を返すであろうことは予想に難くない。もちろん急にスタンスを変えて反対に回ることはないだろうから、法の問題点を懸念として示す形から入ることになるであろう。「ヘイトはダメだが言論の自由は守られなければならない」と言った感じであろうか。自らの行動がヘイトと指摘されるのを拒むが故である。
 しかし何度も書くがこの線引きは非常に難しい。最終的には明確な反対はしないが、法案が成立しないことを実質的に容認しながら規制を導入できない政府を叩くと言った感じで収まるのではないかと予想する(公人である政治家へのそれのみは認めろと言った話になるのではないか)。

 現在のヘイトと呼ばれる活動は、ほぼ在日韓国・朝鮮人に対するものに限られている。もちろんこうした活動が野放しにされれば、攻撃対象が広がっていく危険性は否定できない。現状のヘイト活動にしても、日本に害をなす活動をしている人間を直接的に対象にするのであればいざ知らず、大多数の普通の人を巻き込むのは日本人として許されるべきものではない。
 よく比較に出される韓国内の過激な反日活動(日章旗を焼いたり、総理などの仮面をつけた人を土下座させるなど)は、韓国内のごく一部の人間がやっていることで全体がそのようなことをしているわけでは無いとされる。確かにそうなのだろうが、日本の場合にも結局はごく一部の在特会などがそれを行っているという点では何も変わらない。異なるのは威圧行動をしていることであり、それこそが問題とされている。
 ただ、強いて言えば国家としての韓国が日本をディスカウントする行動に勤しんでいるが、日本はそれに対して韓国を貶めるような活動を直接的に行っているわけでは無い(韓国の嘘に抵抗しようとはしているが)。日本国民に広がる本当の意味での嫌韓感情はむしろこちらの方からきている。国家そのものがヘイトスピーチをしているに等しいのだから。
 細かな面に目を向ければ在日韓国人朝鮮人の犯罪率が高いとか、生活保護受給率が高いなどという面は確かにあるだろう。ただ、金額面を見ても犯罪率の変化を見ても日本全体を揺るがすようなものではない(だからと言って取り締まらないというものではない)。ヘイトが問題とされるのは、国からのヘイトという大きな問題に対して八つ当たり的に弱い存在に当たっていることが最も重要なことなのである。

 だからこそ、日本人としてはヘイトスピーチなどと言う弱いものいじめに走るのではなく、本当の問題である韓国という国家自体が日本に対するヘイト活動を表に裏に行っている状況に対する明確な対応を推し進めるべきことが必要なのだと思う。日本が韓国と同じ倫理レベルに落ちる必要はどこにもない。腹立たしい部分は今後も続くであろうが、お互いさまというような安易な妥協に陥らないことが肝要だろう。
 あと、すぐに出てくるのが韓国との断交という言葉であるが、これも現実を見ればできる話ではないことは誰でもわかる。地理的な近さは決して無視しえるものではないし、日本に来る観光客の大部分は中国と韓国からである。一部の観光客のマナーの悪さは確かに問題ではあるが、これも気長に対応していくしかないだろう。そもそも日本人のマナーが向上したのもそれほど昔の話ではないのだから。
 ちなみに、反日が本当の意味で問題であれば企業は徐々に徐々に離れていくものである。実際、韓国や中国に対する投資は急激ではないもののじりじりと低下していると聞く(2013年の日本から韓国に対する投資額前年比40%減:http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000005986.pdf)。要はビジネスであるから儲かるならば利用するし、儲からなければ離れていくということに過ぎない。

 ヘイトスピーチは直接的で卑劣な行動だと思うが、それをもっと巧妙に行っているのがマスコミだと私は考えている。マスコミが根拠の薄い(ヘイト臭プンプンの)キャンペーンを張ってもヘイトではなく、個人もしくは一部の集団が根拠の薄いスピーチをすればヘイトスピーチに合致する。
 要するに、公人と私人あるいは特定の集団をターゲットにするかしないかというギリギリの線を巧みに使い分けながら、あたかも社会正義が自分にあるが如く立場で時に極々一般人を奈落の底に突き落とす。これはヘイトスピーチよりも汚い行為だと私は思うのだがどうなのだろうか(法的には名誉棄損程度にしかならない?)。

 ヘイトスピーチ規制法は、マスコミ自身の首を絞める存在でもあると私は思うが、これからどのように報道が推移していくかをゆっくりと見ていきたいと思う。