あうとわ~ど・ばうんど

Radio Song

clean feedの勢いが止まらない。「Radio Song/Carlos Barreto Trio」。全11曲56分。Barretto(b)Mario Delgado(g)Jose Salgueiro(ds,per)+Louis Sclavis(bcl,cl,ss)。
7日のミッシャ・メンゲルベルグの新作がそうであったように、特別驚くようなことはやっていないながら、飽かずじっくり聴かせてくれる。流し聴きでもかなり耳に残って、タイトルはなるほどそういうことかと唸らせる。スクラヴィスが加わった①「Distresser」⑩「Asa Celta」の2曲が、とりわけイイ。またトリオによる曲では、⑤「Searching」から⑨「Final Searching」にかけてのギターに味がある。

My Funny Valentine

昨年の今日は、マイルスの「My Funny Valentine」を聴いたのだったが、今年はこれを聴く(わざわざそんなことしなくたってよいのであるが)。「スイングしなけりゃ意味がない山下洋輔」(diw)の3曲目だ。
録音は84年2月12日。83年いっぱいで自己のグループを解散した山下は『充電』期間に入る。が、そのうち、人前でピアノを弾きたいという感情が高まってくる。2月に新宿ピットインで気心の知れた仲間を集め、ソロを録音することになっていた。その前日。山下の元に、知人から電話がかかってくる。家にピアノを弾きにこないか、と。人前でピアノを弾くことに渇していた山下は、「喜んで伺う」と返事する。以下は山下の文章から引用する。

川上家での演奏は、至近距離的緊張感と家族的気楽さが同時に存在する不思議な時間だった。この時にリクエストされた、「マイ・ファニー・バレンタイン」と、「ラウンド・ミッドナイト」は、久しく弾かなかった曲だったが、この日のおかげで、翌日の本番でも急に弾いた。その後、今にいたるまで、ソロピアノコンサートの大事なレパートリーとなっている。(「音がなければ夜は明けない (知恵の森文庫)山下洋輔」光文社知恵の森文庫・18頁)

そこで、本盤の「My Funny Valentine」だ。なんとも『ファニー』で感動的な演奏である。演奏する喜びと緊張感はほどよく溶け合い、アルバム全体を包んでいる。好きな作品だ。