好対照の2チーム....どっちも、いかがなものか...?

 先日、とあるグラウンドで中学生の試合を観ました。計10点近く入ったのではないかという一方的な試合でした。
 負けているチームの方は、ボール扱いが雑で、いとも簡単にファーストタッチで相手に奪われてしまいます。集中力も乏しく、いわゆる「動き出し」がとても遅くて、パスが来てもすぐに相手に先を越されて奪われてしまいます。挙げ句の果てに、バックパスを受けたGKが素直に蹴り返せばいい場面で、プレスをかけてくる相手FWを足技でかわそうとして奪われ失点。勝ち負けがどこう言うより、サッカーのプレーとしてひどいな~という印象。 
 試合で負ける要因には、生来の運動能力差や体格差など、努力してもどうにもならない部分もありますが、このチームの場合、ミスの多くが上手い下手のレベルではなく、「気をつける」「努力する」という意識のレベルで何とかなるものばかりでした。その点に意識さえあれば...という失点が5点以上あったと思います。
 試合が終わりました。私が気付いたことの幾つかでも選手どうし、あるいは指導者と選手とで話し合い、反省してほしいと思いました。
 ところが、驚いたことに、そうした様子は一切なく、まるで楽しかったイベントが終わったときのように冗談を言い合って談笑しています。俗に言う「ヘラヘラ」している態度。しかも、その異常とも思えるくらい明るい談笑の輪の中に、指導者とおぼしき大人も入っています。あれあれ...何か変だぞ。
 楽しく仲良くサッカーをする...異論はありません。勝ち負けの結果にばかりこだわらない...異論はありません。でも、少なくとも競技としてサッカーをプレーする以上、試合をして明らかになった「足らざるところ」を改め、より良い自分になるために努力していく、という姿勢は必要です。
 あきらかに「サッカーをする以上、それはだめ」というプレーを平気で繰り返し、大量失点で負けているのに、それをまったく意に介せず、反省も一切せず、それこそ「へらへら」と談笑し、「その元気が試合で出せなかったか?」と思うくらい明るく陽気にいつまでも輪になってサッカーとは関係ない話をしている。「楽しさ」のはき違えではないか、と思いました。
 一方、勝ったチーム。さすがに一つ一つのプレーが的確で、大量リードに手を拭くこともなく、黙々と真面目にプレーしていました。
 後半、左サイドから突破を仕掛けた選手が相手のファウルを受けました。ボールに関係なく体当たりされたプレーだったので、「これファウルでしょ」という意味で、選手が両手を広げて審判にアピールします。もちろん、即座にホイッスルが吹かれFKが与えられました。
 その時です「てめぇ、何にやってんだ。アピールなんかしてんじゃねぇーよ!!」。自陣ベンチの指導者が叫びます。叱咤はさらに続きます。「てめぇ何様だ!。偉そうに。だったらてめぇで審判やれよ、こら!」「何なんだよそのアピールは、このやろう!」
 次のアウトオププレーでその選手は交代を命じられベンチに下がります。その後も約10分間、50m以上離れている私にはっきりと聞こえるくらいの大声で指導者は叱責を続けます。「ファウルを受けても振りほどくくらいの迫力が必要だ。それを弱気にアピールし審判にファウルを請うとは何事だ。そもそも判定は審判がするもので選手がするものではない」ということが叱責の趣旨でした。
 その指導者が言っていることはまったく正論だと思います。しかし、だとしても、あのような言葉遣い、態度で指導することで、本当に中学生の心に響くのだろうか...と思いました。即座に交代で退かせ、その後10分以上、自分はベンチに座ったまま、直立不動の子どもに怒鳴り続けるほどのことだろうか...と思いました。 
 そのチームはきっと礼儀も厳しく指導されているのでしょう。試合後、退場する際、次に試合を控えている我々港北FCの成人チームの前を通り過ぎながら、彼らは口々に「こんにちは」と声をかけてきます。見知らぬ初対面の大人にもきちんと挨拶をする、よくしつけられているな、という印象です。
 「ああ、こんにちは」「ご苦労様でした」私も彼らに挨拶を返していると、最後に先ほど怒鳴っていた若い指導者が歩いてきました。視線が合いました。当然、子供たちと同様、彼からも「こんちには」が来るものと思っていると、無視して通り過ぎました(笑)。
 どうなんでしょうね。この指導。