Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

2023年ロンドン旅行記【Stage, Event & Exhibition】その5 - "Paul McCartney : Eyes of the Storm", "Tina: The Tina Turner Musical",

7月15日(土)

E5 National Portrait Gallery - Paul McCartney : Eyes of the Storm

英国肖像画美術館 特別展:ポール・マッカートニー:Eyes of the Storm 

 2回目の鑑賞。今度は十分時間を取って行ったので、オーディオ・コメンタリーもゆっくり聴きながら見られました。ポール自身が語る写真の解説にはやはり臨場感があふれます。この夏に始まる日本の展示ではこれはどうするのでしょう。日本語字幕をつけてポールの声を聞きながら写真を見られるようなツールを用意してもらえたら良いのですが……。

 今回は無料で公開されている常設展示もじっくりと見て回りました。よく教科書で見るシェイクスピア肖像画や、エリザベス一世等王室の人々、エド・シーランのような現代のミュージシャンに至るまで、多種多様な人々の肖像画・写真・彫刻が展示されています。「SIX」に登場したヘンリー8世の妻のうち4人の肖像画もありました。いちばん最後の「生き延びた」妻、キャサリン・パーの肖像画がひときわ聡明な感じに描かれていて、なるほどと思いました。歴史と最先端の表現が共存し融合する街、ロンドンは本当に味わい深いです。

キャサリン・パー

 

S7 Tina: The Tina Turner Musical Aldwych Theatre

「ティナ」オルドウィッチ劇場 

 2023年5月にティナ・ターナーが亡くなったばかりだったので、追悼と思って観に行ったのですが、これも期待以上の素晴らしさでした。5年前にこの劇場で初演だったそうです。「マンマ・ミーア!」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー:ザ・ミュージカル」のような攻めた企画の舞台は意外にブロードウェイよりもロンドンが先だったりします。それぞれ今ではブロードウェイの代表的な舞台にもなっています。

 ティナ・ターナーの人生は人種差別、女性差別、DVとの闘いの連続でした。それをポジティブに勝ち抜いてきた物語が、彼女自身の音楽の内容と直接繋がっているのがとても良く、他のジュークボックスミュージカルとは一線を画していました。ミュージカル化の企画も、本人は全然やる気がなかったけれど、ティナの自伝に勇気づけられていた世界中の女性たちから来たファンレターに背中を押されたそうです。

 ラストのショー場面ではもう劇場内総立ちです。偽物であるにも関わらずそんな雰囲気になるのは演者がちゃんと本物のティナの人生を背負った後にそこに辿り着くからだと思いました。

 初演時のティナ役だったエイドリアン・ウォレンはティナの独特のボーカルスタイルを完全に自分のものにして、芝居も良く、英国オリヴィエ賞では主演女優賞ノミネート、米国トニー賞では主演女優賞を獲得し、ミュージカルの成功の象徴的な存在になりました。第74回トニー賞授賞式の動画で、そのエイドリアンの歌が聴けます。歌声一発でティナが憑依するエイドリアンに後続のティナたちがどこまで挑めるかが、その後の大きな課題だったことは想像に難くありませんが、今回のティナ、カリス・アンダーソンは歌声でエイドリアンに及ばぬ代わりに、ティナの独特な激しいアクションを完全に体得していました。歌は本物のティナより少しまろやかだけれど、「プラウド・メアリー」などで テンポがグイッとあがると、途端にそこでティナ・ターナーそのものになり、会場全体を挑発し、興奮させてくれました。役者がそれぞれの得意な技で表現を競うマルチキャストの醍醐味を感じました。

(※ E=Event & Exhibition、S=Stage Performance)