法昆虫学の話

“虫から死亡推定時刻はわかるのか”というタイトルにひかれ手に取った。
とともに「法昆虫学」ということばも初めてで興味もあった。
しかし、読みだして思わずえらい本を買ったと後悔した。
というのも死体に群がる昆虫の幼虫―うじーから死体の死亡時期、時刻、場所、気候等を推察し、死亡原因を解明するという決して気分よく読める内容でなかったものの、読み進むうちにだんだん興味が湧きえらい仕事があるものだと感心した次第。
TVのドラマ等で見たような気がするものの、現実は日本ではこの仕事に専門で従事する人はいないらしい。
というのも死体解剖などは法医学の分野で専門の医師が携わるものと認識していたからで、昆虫から原因、環境を特定し、解明に結び付けるというこの法昆虫学たるものは当然有資格者であるものと思っていた。
この著者は法昆虫学者として当初から従事したのではなく、いつのまにか専門に携わってきた由。
国としての養成機関がなく独学で研究され、経験を積まれたとのこと。
ご本人はあくまで「自称」と謙遜されているが間違いなくこの分野の第一人者であるのは間違いない。
今後の課題は後継者を育てること、と語っておられるが養成機関も施設もないので実現はむつかしい状況。
現在は岩手医科大学教養教育センター生物学科講師として教鞭をとり、研究されている。
また岩手県警察本部でこれまでの研究、経験を警察官に指導され、多くの実績を上げられている。
それにしても死体に産み付けられた昆虫の幼虫から細かな分析や検分を通して事件、状況の解明に至るプロセスに感動させられた。

「虫から死亡推定時刻はわかるか?」 法昆虫学の話
著者  三枝 聖
発行所 築地書館
価格  1500円+税