月魚 (角川文庫)(三浦しをん/角川文庫)

月魚 (角川文庫)
最初の数ページ読んだら、まるで北森鴻の作品を読んでるように感じた。ただ単に舞台が古書店だったからなんだけど。それはさておき。
老舗の古書店『無窮堂』の若き店主・真志喜と、同じ業界で<卸屋>として名を売る瀬名垣。同い年の幼なじみでお互いを唯一無二の存在だと思っているが、二人の関係には幼いころに背負ったある罪の意識が常に付きまとう―。
ひゃー、久しぶりにどっぷり浸かった恋愛小説。二人の関係は今にもあふれそうなコップの水。「罪の意識」というスパイス。十代の女の子が好みそうな美少年同士の恋愛漫画のような猥雑な雰囲気もあり。文章もこれまた綺麗で引き込まれる。
文庫書き下ろしの「名前のないもの」より―

「所有欲も愛着も、本当はものすごくあることを自覚してる。いつまでも撫でくりまわしてじっくり味わいたいし、だれにも渡すもんかと、いつもいつも思ってるんだ」
ちょうどリンゴ飴をかじっていた真志喜は、甘さのためか、眉を寄せた。

読んでるこちらが甘いため息をつきました。
あさのあつこによる解説より―

『月魚』は魂を持つ本だ。それは、どこまでも熱く、どこまでも冷えていく。人の魂の不可思議さに戸惑いつつ、畏れつつ、やがて、読み手はこの一冊に捉えられていく。

堪能させていただきました。他の作品も読んでいこう。