報復 (ヴィレッジブックス)(ジリアン・ホフマン/ヴィレッジブックス)<29>

報復 (ヴィレッジブックス)
先日買った「IN★POCKET」文庫翻訳ミステリーベストの読者部門で第8位だったこの作品に興味がわいたので買ってみた。デビュー作。
マイアミで若く美しいブロンドの女性ばかりを狙った凶悪な連続殺人事件が起こっていた。レンプされたうえナイフによって心臓がえぐりとられていたのだ。警察は血眼になって事件解明を急いだが、手がかり一つ見つからないなかで、犠牲者の数だけが増えていく……。そんなおり一人の若い警察官がスピード違反で止めた車のトランクから新たな犠牲者が発見される、という偶然によって被疑者が逮捕。本書の主人公である女性検事補、C・Jはこの事件の担当として法廷で被疑者に会うが、その声を聞いて驚愕する。それは忘れもしない、C・Jを学生時代にレイプし殺しかけた覆面の男の声だったのだ。すでにレイプ事件の出訴期限は過ぎており、C・Jは自分だけが気付いたその真実を隠したまま、事件の有罪を確定しようと必死になる。証拠もそろい死刑判決は間違いないと思われたが、事件は意外なほころびを見せはじめた…。
うぅぅ〜怖い!冒頭のレイプ事件も恐ろしいのだが、物語全体にわたって心理的恐怖感があおられる。これがデビュー作かよ。上手いなぁ。過去の悪夢にさいなまれ事実が発覚することを恐れ綱渡りをしてでも有罪確定に躍起になる主人公に感情移入してしまえば、戦々恐々としながらページをめくる手を止めることができない。とどめに意外なラスト。たまりません。今後が楽しみな作家の登場だ。

報復ふたたび (ヴィレッジブックス)(ジリアン・ホフマン/ヴィレッジブックス)<30>

報復ふたたび (ヴィレッジブックス)
上記の「復讐」を読み終えた後、面白い本読んだなぁと余韻に浸りながら本屋をぶらついてたら、翻訳文庫の平台にこの本が…!! まったく知らなかったので嬉しいオドロキで、そりゃ速攻で読んじゃうでしょう。
前作から3年、C・Jは変わらず検事として多忙な日々を送っていたが、ある連続殺人事件が彼女の人生を揺さぶりはじめる。被害者はすべて警察官、しかも前作の"あの事件"の関係者ばかりが次々と殺害されていくのだ。精神のバランスを崩し始めたC・Jはマイアミを離れるが…!?
前作のラストからして割り切れないものはあったが、まさかここまで引っ張るとは! 前作とあわせて「復讐(上下巻)」としても良かったんじゃないかと思えるほどに前作とのつながりが強い。しかも本作のラストシーンからするとまだこの事件は続きそう…いい加減バントリングは死んでほしいのだけど。
前作に比べて集中力が感じられないのは、視点が安定しないせいだろう。両作とも、幾人もの登場人物が視点になって物語が進行する。前作はC・Jの視点を作品の<核>にしていたからこそ、サスペンス性が高まったし集中力が感じられた。今作は後半に進むにつれ、一番サスペンス性をあおるC・Jを視点としたストーリーからずれていくから物足りなさを感じたのかもしれない。でもこれも含めて次の作品への伏線かもしれないのであまり強くはいえないが。
先に注文を付けておきながらなんだが、実は面白かったんだよね、これも。もうちょっとラストに意外性が欲しかったとか、主人公狙われ過ぎとか、いろいろ言いたいことはあるんだけど、心理描写は上手いし、もと検事であるからして法廷シーンも迫力あるし。この二作の共通した魅力はやっぱ卓越したサスペンス性だろう。頭上はるか上を綱渡りしてるサーカス団員を見るかのごとく、一歩も動けない状態でストーリーの行方を追ってしまう。
著者はかなりC・Jに自分を投影しているらしく、そういう意味でもまったく違う作品をぜひ読んでみたい。法廷モノとか? とりあえず二作ともかなり面白かったです。