おせっかい (新潮文庫)(松尾由美/新潮文庫)★★★

おせっかい (新潮文庫)
冴えないサラリーマンである古内繁は、入院中に差し入れてもらったミステリ雑誌の連載小説「おせっかい」の主役である女性刑事に恋してしまう。その想いが高じたのがきっかけか、繁は小説の世界に出入りすることができるようになってしまった。一方で、その著者である橘香織のまわりでは不可解な事件が相次いでおり……。現実をフィクションが交差する、ファンタジーミステリ。

読み応えはあって悪くないんだけど、登場人物たちの心の動きがよくわからない。なんかみんな狂ってるんじゃないかとすら思う。もうちょっと人物像にリアリティが欲しかった。

the TEAM(井上夢人/集英社)★★★★

the TEAM
この人の作品を読むのは初めて。以前は<岡嶋二人>というペンネームで共作を出してた人らしい。読んだことはないけど、この岡嶋二人の著者名で出された『99%の誘拐』ってたしか、昨年末に起きた乳児誘拐事件の現金引き渡しの元ネタになった作品じゃなかっただろうか。小説からその手法をパクるというのはあまりに芸のない犯罪者ではあるが、ミステリ作家にとってはどうなんだろう。不謹慎ながらちょっぴり嬉しかったりして。ま、大きなお世話ですが。

そんなことはさておき。
タイトルの<the TEAM>とは、TVでも人気の霊媒師・能城あや子とそのサポートスタッフの「チーム」である。あや子のマネジメントをはじめチーム全体の指揮を執る鳴滝、調査対象者の尾行から家宅侵入までこなす賢一、主にネットを中心とした情報収集を行なう悠美。……そう、能城あや子は完全にパチモンの霊能力者なのだ。とはいえこのスタッフの完璧な仕事ぶりゆえ、当然ながら的中率は高く、あや子の人気は高まる一方だ。このチームが関わることになった様々な事件が、テンポよく痛快に描かれた連作短編ミステリ。

適度な人情とチームの鮮やかな仕事ぶりが読んでいて楽しい。それぞれに後味がいいからもっともっと読んでいたいような気になるが、ラスト2編でこの物語全体を上手くまとめてあって、とても満足。物語の終わらせ方も鮮やかでした。

この人の他の作品も読んでみたいなと思った。