数学的にありえない 上 数学的にありえない 下(アダム・ファウアー)★

数学的にありえない 上 数学的にありえない 下

やられた……やられましたよ。時間のムダとはまさにこのことだ。
「超絶ノンストップ・サスペンスの傑作!!」? ヘタクソなSFじゃないか。


わたしが一番嫌だったのは、この小説にはまったく「人間」が描かれてないことだ。作者は登場人物をゲームを進めるコマとしてしか扱っていない。サスペンスであろうとSFであろうと登場人物に魅力がなけりゃ面白くも何ともないというのに。分厚い上下二巻であるにもかかわらず、読み終わっても登場人物たちがどんな人間だったのかさっぱりつかめない。それがもっとも顕著にわかるのは、上巻のラスト、17ページに渡ってナヴァという女の半生がつらつらと書かれているところだろうか。そこには「事実」しか描かれていない。ナヴァのキャラがわからないのだ。意識してやってるとは思えない。この表現が薄っぺらさ加減は。
小説はプロットだけじゃダメ。かといってこの小説のプロットがそういいとは思えないけどね。アイディアは買いたいが。


これを読むなら、これを映像化したものを見たほうがマシだった気がする。
柊ちほさんのブログで紹介されていた(http://d.hatena.ne.jp/sagara17/20060831伊坂幸太郎の言葉を読んだばかりだったから、ふとそんなふうに思った。

映像にはできない、小説でしか味わえない喜びというものがあると思うんです。(中略)映像にしたら消えていってしまうところに小説の喜びがある気がします。(P.43)〜活字倶楽部04春号〜

「映像にしたら消えていってしまう」部分がこの小説にはまったくない。伊坂幸太郎はものすごく当たり前のことを言ってるだけなんですけどね。



……と超辛口になりましたが、世間の評価は高いみたいです。世界16カ国で出版されて、それぞれベストセラー入りしてるみたいですし。エンタメ作品として楽しめるからかな。読みやすいし、話の展開のスピードが速いですしね。面白くない作品はすぐに放り出すわたしも読み通せたし。ま、それは「サスペンスの傑作」なんだからラストがめちゃめちゃ面白いに違いないと信じて頑張ったんですけどね? わたしの予想ではダン・ブラウンとか好きな人の好みっぽい。わたしはダン・ブラウン読んでないですけど。でもそこんとこ確かめてみたいので読んでみようかなと思いました。