双生児 (プラチナ・ファンタジイ)(クリストファー・プリースト)

双生児 (プラチナ・ファンタジイ)

双生児 (プラチナ・ファンタジイ)

ひゃーもう面白い面白い面白い!!! 

まだ五月だけど、個人的2007年翻訳部門ナンバーワンの作品に早速出会ってしまったのではないか!? もうね、こんなに興奮したのは久しぶりかもしれない。小説という世界のなかで、完璧かつ複雑なミラーハウスの遊び。すげーよプリースト!最高だよ!……としかいいようのない読後感でした。


物語は歴史ノンフィクション作家であるグラットンの書店でのサイン会から始まる。客の少ないそのサイン会で彼に、ある女性が父ソウヤーの手に訪ねてくる。少し前からグラットンは、チャーチル首相の回顧録のなかで触れられている「英空軍爆撃操縦縦士でありながら、同時に良心的兵役拒否者である」ソウヤーという名の元空軍兵士について広く情報を求めていたのだ。「英空軍爆撃操縦縦士でありながら、同時に良心的兵役拒否者」? 果たして彼女が手にした手記は、グラットンが求めていたものなのか……?


ソウヤー自身の手記、関係者による様々なメモから、壮大な「『双生児』版史実」が構成されていく。二人のソウヤー、二つの物語は、常にそばで並行し、ときに交わって、読者を翻弄する。どちらもがパラレルワールドという浮遊感に酔いながら、次々と謎が解決されるミステリチックなハラハラもあり、思いもかけぬかたちでバラバラなピースが一気に組み上がる……。


いやもう、わたしの下手な感想文なんか読んでるヒマがあったら、書店に走ってこの本を買って即読め!ってくらい。プリーストの緻密でで大胆な構成力に操られるままぐいぐい読まされて、読み終えたあとはもうなんだかね、転がり回りたい気分でしたよ。「Truth is stranger than fiction」を素で否定しますね。"without 'Priest'!"ですよ。読書専門のアドレナリンが存在するなら、それがこんなにも上がったのは久しぶり。個人的にはこの三年でベストといっても過言ではないという一作でした。


でも実はプリーストは『魔法』しか読んでないんですよね。もうすぐ映画化される『奇術師』も近いうちに読んでおきたいです。


ちなみに本作はハヤカワの<プラチナ・ファンタジイ>シリーズの一作らしく、その帯にある宣伝で知ったのだけど、同シリーズで7月には大好きなケリー・リンクの『初心者のためのマジック』という単行本が出るようで、今から楽しみだ! 『スペシャリストの帽子』以来、日本では二作目ですね。SFファン以外の人にも受ける作風だと思うので(だいたいわたしがSFファンじゃないし)、たくさんの人に読んでもらえるといいなぁ。