精神医療に葬られた人びと (光文社新書)

精神医療に葬られた人びと (光文社新書)

精神医療に葬られた人びと (光文社新書)

数年前のラジオでこの本が紹介されてたのを聞いて読みたいなと思いメモしてたものの、実際に書店で探すまでにタイムラグがあったのと新書なので入れ替えのサイクルが早いこともあって、本屋では見つけられなかった本書。最近ふと思い出して図書館で借りてみた。


本書は精神病等に入院した著者のルポを切り口に、精神病患者に対する社会の変容を的確かつ多面的に論じている。しかしまぁ読んでいて気持ちが暗くなるのよね。この国はどうしてこんなにも弱者に冷たいのかと。


本書でも触れられてる『ルポ・精神病棟』は15年くらい前に読んで、入院患者へのあまりの扱いのひどさに鳥肌が立ったのを今でも覚えてる。もちろん当時に比べたら今の患者を取り巻く状況は良くなっているとは思うけど、それでも最良の形にはまだまだ遠いのよね。


だけど本書を読んで感じたのは、精神医療に対する病院や国の問題点はもちろんだけども、それを受け入れる社会、わたしたち個人の考え方が一番の問題なのではないかということ。同じようにマスコミの報じ方もね。「精神病」は怖いものだと思い込んでる。ブツブツ独り言を言いながら笑っている人とは出来るだけ距離をとる。本当はそんなに怖がる必要なんてきっとない、でもそれを知るにはやっぱり直に触れ合うしかないのよね。だから現状にいたるまでの閉鎖的な医療方針ではどうやっても解決しない。社会になんて入れない。


心の病は決して他人事ではない。明日は我が身、我が家族の身。
だから患者が人間らしく生きられるように、そういう社会を目指さなくちゃいけないんだと思う。タテマエは失っちゃだめよ。