『大河ドラマ入門』の製作工程

 恐ろしい間違いが次々見つかる『大河ドラマ入門』だが、そのほとんどは編集者が勝手に直して間違えたものである。
 これは十月ころ執筆が決まり、ほどなく、新しい大河ドラマが始まる一月に出したいという話で、十一月前半に書き終えたが、普通はまず、著者が書いたものをそのまま校正刷にして、校閲および編集者がそれに朱を入れ、著者が見る。だが時間がなかったため、編集者は私の原稿を勝手に直してゲラにした。するとこちらも、朱ではないから、おかしくなっていても気づかない。それでも相当直した。「紀尾井町は口跡がいいので」とあるのを、編集者は「口跡」という言葉の意味を知らなかったらしく、「紀尾井町は名前の口跡がいいので」と意味不明な修正を施していた。
 それを再度ゲラにして見たが、結局朱入れを見ていないから、どこを直したか分からないまま、書籍になったというわけである。しかも編集者は、自宅でもメールは見られると言いつつ、金曜の夜に出したメールを日曜の朝まで見なかった。急いで作るからこういうことになる、といえばまだ聞こえはいいが、間違いの多くはこの担当編集者の驚くべき無知に基づく。
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 私はしっかり「児玉清」と書いたのに「尾上菊蔵」にしたのもこの編集者で、要するに日本語読解能力もないのである。ちなみにこの編集者は東大卒である。大河ドラマは観たことがないとのことで、別の企画を持ってきたのを私が大河ドラマを提案したのである。
 なお、なぜ奥様がすべての似顔絵を描かなかったのかという意見もある。実は私も当初そのつもりだったのだが、妻も大河ドラマは観たことがないのみならず、日本の藝能人をほとんど知らないため、描けなかったのである。

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平川祐弘先生から恐怖の葉書が来た。『文学研究という不幸』を送ったからである。因縁をつけて私を「幼児的」とか書いているが、返事をすると喧嘩になるから放置して、来月は『天皇制批判の常識』をお送りする。