猫を償うに猫をもってせよ

2011-08-01 アインシュタイン・ショック このエントリーを含むブックマーク

 翻訳のひどさがニュースにまでなるというのも珍しい。私も、いくつかの、ひどい翻訳というのを見てきたが、まあそれはいいとして、

 『アインシュタイン その生涯と宇宙』は、

監訳:二間瀬敏史(ふたませとしふみ、1953- )

 東北大学理学研究科教授、東北大理学博士 

訳者:松田卓也(1943- )

 神戸大学名誉教授、京大理学博士 

訳者:関宗蔵(1944?- )

 東北大名誉教授、天文学 

訳者:松浦俊輔(1956- )

 元名古屋工業大学助教授、翻訳家 

 であるが、上の二人は「アインシュタイン」ないし宇宙物理学の専門家である。松浦は「駒場学派」で、多くの科学系の翻訳を出している。二間瀬、松田も、翻訳は出している。ただし、松田は単独でも出しているが、二間瀬は松田と一緒か、誰かと一緒である。関は、一冊も翻訳はない。著書もない。国内で論文は英文のものが三本あるが、まあ海外で発表したものがあるのだろう。なんで翻訳したことのない60過ぎの人を選んだのかは、知らん。

 さて、松田は、アマゾンレビューで事情説明をしている。しかし不思議なのは、松田自身が、5-11章を担当した、と言っているように、数名で翻訳する時は、まず分担を決めるはずである。

本書の翻訳は数年前に監修者の二間瀬さんから依頼されました。私は自分の分担を2010年7月に終えました。翻訳権が9月に終了するので急ぐようにとのことでした。ところがいっこうに本書は出版されず、今年6月になり、いきなりランダムハウスジャパンから、本書が送られてきました。そして13章を読んだ私は驚愕しました。

私は監修者の二間瀬さんに「いったい誰がこれを訳して、誰が監修して、誰が出版を許可したのか」と聞きました。二間瀬さんは運悪くドイツ滞在中で、本書を手にしていませんでしたので、私は驚愕の誤訳、珍訳を彼に送りました。(略)

先のメールを送ってから、監修後書きを読んで事情が少し分かりました。要するに12,13,16章は訳者が訳をしていないのです。私は編集長にも抗議のメールを送りました。編集長の回答によれば12,13,16章は、M氏に依頼したが、時間の関係で断られたので、別途科学系某翻訳グループに依頼したとのことです。ところが訳のあまりのひどさに、編集部は監修者に相談せずに自分で修正をしたようです。12,16章の訳はひどいなりにも、一応日本語になっているのはそういうことだと思います。ところが13章は予定日までに完成しなかったらしく、出版期限の再延期を社長に申し入れたが、断られた編集長は、13章の訳稿を監修者に送ることもせずに、独断で出版したらしいです。

 ではいったい、12、13、16章は誰の担当だったのか。ここに「M氏に依頼した」という不思議な文がある。まったくの第三者であれば「M氏」などと書く必要はないし、これは要するに松浦俊輔のことであろう。松浦は翻訳家だから、自分の分担分(おそらく17章以後最後まで)はとっくに終わっていた。しかし、誰かやらない人がいた。そこで松浦に泣きついて、本来その人の分担だった12-16章を訳してくれと言われ、松浦は14、15はやったが、本来やるべき人が全然着手しないので、腹を立てて、もうやらないと断った、ないし、全部自分にやらせるなら関の名前を訳者から削除せよと要求して断られ、自分もこれ以上やるのを断った、と推定するしかあるまい。二間瀬は、強硬な抗議文を送ったというから、担当部分をやらなかったのは二間瀬ではあるまい。

 つまり担当部分をやらなかったのは、関宗蔵である可能性が高い。推測でものを言うな、と言われるかしれないが、せっかくアマゾンレビューに登場しても、問題の章はそもそも誰の分担だったのかを言わない松田氏の責任であろう。