猫を償うに猫をもってせよ

2012-03-04 器官なき身体 このエントリーを含むブックマーク

 ニューアカの頃、「器官なき身体」ってのが何だか分からなかった。意味は分かるのだが(ないしは分かるような気がするのだが)、それが何なのか、つまり述語が分からなかったのである。唯一分かったのは、栗本慎一郎が、人間は器官なき身体を持ちたいと思っている、と解説したのくらいだったが、思っていたってそんなの無理なんだから何の意味があるのか、と思っていた。

 近ごろ思うに、これはまあ一種のオカルトだなと。田口ランディみたいなセックス・オカルトの一種なんだな、ということである。

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『セクシィ古文』で田中圭一はホモ場面を描くのが嫌だと言っているが、私は田中のサラリーマン漫画で、新入社員の釜をほる(男への強姦)場面を見てこの漫画家が嫌になったんだが。

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山田晴通より返答がウィキペディア内に書かれている。

http://meta.wikimedia.org/wiki/User_talk:%E5%B1%B1%E7%94%B0%E6%99%B4%E9%80%9A

 「山田による立項である」というのは私の間違いでした。すみません。しかし「特筆性タグ」が何の議論もなしにはがされたのは遺憾とするところである。

 山田氏に問いたいが、日本における責任者の所在が明らかでなく、仮に名誉毀損的な書き込みがあっても、提訴する先がない。山田氏は2ちゃんねるの例を挙げているが、これは刑事事件になった場合であり、民事事件ではまず書き込んだ人間を特定することはできない。いわばウィキペディアは、管理人さえ特定できない2ちゃんねるのようなものである。そこで管理人として活動することを、山田氏はどう考えているのか。

なおご承知の通り、他国のウィキペディアでは、責任者の住所が記されており、その意味で不法性はない。しかし日本のウィキペディアは不法の存在であると考える。これは雑誌書籍などが、発行人住所を記載していることに対応しての判断である。私はこの状態が改善されない限り、ウィキペディア側からの要請に答えるつもりはない。

 また冒頭の著作権問題であるが、山田氏自身が誤った法的判断を行い、それが愚民的な状況で決定したことをどう考えるのか。山田氏は今後ウィキペディアをどうするつもりか、それとも単に学問的関心でスパイ的に潜入しているのか、私のような編集者がブロックを受けることについて良心の痛みを覚えないのか、問いたい。

 なお山田氏に送った文は以下の通り。

質問状

前略

貴殿は二○一一年十二月より、インターネット上事典「ウィキペディア」の管理人を務めており、本年二月二十三日、私が作成した「阿部正路」の項目につき、新聞記事よりの引用であるから著作権侵害であるとして同記事の削除を提案した。しかるに著作権法が定める保護の対象となる著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであることを要し、これをもって足りるとされている。従って単に事実を述べただけの新聞記事の僅々四十文字程度の、阿部正路が国旗・国家法制定に際して国会に参考人として出席し、日の丸君が代の歴史を述べ、かつ国旗・国家法に賛同したという記述は、いかなる判例に照らしても著作権法の違反を構成しないものと勘案する。

 しかるにそのことを述べた私に対し、「ウィキペディア」の他の編集者ないし管理人は、私の編集を不可とする「ブロック」を行った。そもそも私はかねてより、日本版「ウィキペディア」は、他国のそれのように筆頭責任者が存在せず、不法な存在であると考えている。仮に「ウィキペディア」上において私などに対する名誉毀損行為の類が行われても被害者は訴状を送達すべき相手方住所を持たない。私自身は、責任者およびその住所さえ明示されるなら「ウィキペディア」は有用なツールたりうると考えている。

 なおブロックの理由について、貴殿の項目に対し「特筆性なし」とのタグを張ったこと等が「荒らし目的、嫌がらせ」とされているが、私はかねて人物の項目を立てる際、研究者であれば、単著がある、ないし理系の研究者ならば顕著な業績があるなどを目安としているが、貴殿はその条件を満たしておらず、ウィキペディア上に書かれているような、報復ではない。ウィキペディア上では貴殿の項目のごとき、宣伝的な研究者の立項が数多く行われており、私はそのような立項を発見すれば「特筆性なし」のタグを張ってきており、今回も「阿部正路」の件でたまたま発見した貴殿の項目がそのようなものであったに過ぎない。

 貴殿は東大理学博士であり、東京経済大学教授として社会的責任ある立場にある。私はかねて、ウィキペディアが匿名の者たちによって運営され、その責任主体が明瞭でないことを憂えていたものである。従って、上記諸点につき貴殿の思考するところ、ならびに今後の方針について伺いたいと思うものである。

草々

 (小谷野敦