猫を償うに猫をもってせよ

2012-05-09 正宗白鳥「コロン寺縁起」 このエントリーを含むブックマーク

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20100601 

 この件なのだが、何も死去時の「読売」が最初ではなく、1947年に新潮文庫版『若い人』が出た時に、『三田文学』の編集長だった和木清三郎が解説で「軍人誣告罪と不敬罪」と書いていたことが分かった。以後、平松幹夫を中心に広まっていき、二千年の新潮文庫改版の解説で関川夏央も書いている。

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正宗白鳥に「コロン寺縁起」という昭和五年の短編がある(『正宗白鳥全集』第三巻、新潮社)。一二四八年にケルンの大聖堂が起工した際、棟梁となった大工のゲルハルトの物語である。ある時ゲルハルトの前に悪魔が現れ、自分はトレベスからケルンまでの間に地下運河を掘削してそこにアヒルを浮かべてみせる、どちらが早いか賭けをしよう、というのだ。ゲルハルトは恐怖しつつ賭けに応じた。掘割は出来たが、アヒルが浮かばない。悪魔は焦ったが、ゲルハルトはアヒルを浮かべる方法を知っていた。悪魔はそれに気づいて、ゲルハルトの妻に接触して、運河に窓をつければいいのだと知り、アヒルを浮かべ、それを見たゲルハルトは絶望し、高いところから転落して死んでしまう。

 後藤亮の『正宗白鳥 文学と生涯』(思潮社)は、これを紹介して、ネタ本があるに違いないと考えて探したが見つからなかったと書いている。近ごろ、ドイツの作家フランク・シェッツィングの『黒のトイフェル』(ハヤカワ文庫)というミステリーが、ゲルハルトを主人公に同じネタで書かれていたので、調べると、悪魔と取引した伝説が見つかった。

http://www.koelner-dom.de/dieteufelswette.html 

 アヒルは結果的に浮いているようだが、アヒルを鍵とする伝説もあったのかもしれない。

http://en.wikipedia.org/wiki/Master_Gerhard 

 ちゃんと歴史上の人物であった。