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2005-11-30

[]世界日報でまたまた恣意的な引用

 恣意的な引用をしてしまうのは意図的なのか読解力がないのか、はたまた読者やインタビュイーをナメているのか。

 macskaさんのブログ記事(その1その2)で指摘されていることが、世界日報の署名記事で形を変えてまたくりかえされているようです。

記事を書いている途中でmacskaさんのはてなダイアリの記事の新着情報が入ってきました。

やはり相変わらずのようです。

 電子版もあるようですが有料なので、記事をやや長めに引用しておきます。本日の「メディアウォッチ」という記事です。署名は「山本 彰」(またかよ)。先日の「朝まで生テレビ」について。

母性否定の“男女平等理想論”では少子化解決せず、を知らせた「朝まで生テレビ」

 二十六日の「朝まで生テレビ」(テレビ朝日)は、少子化問題を取り上げていた。出席した野党の女性議員は「父性、母性とは何か」と批判、育児が女性に向いているとする考え方を問題視していたが、そうした考え方では少子化に対処できないことを知らせるのに十分な内容だった。

(中略)

 だが、『子どもが減って何が悪いか!』(赤川学著)によると、こうした統計的「事実」は、政策担当者により恣意的に作られたものが多い。

 著者が、この本を書く動機になったのも、ある時、著名なTVキャスターが「経済協力開発機構(OECD)など先進国では、女性の労働力率が高い国は出生率も高い。日本も考え直さなければ」という、トンデモ発言を耳にしたからだという。

 まず、OECDの比較だと、サンプルに挙げられた国が、こうした結論を出すのに都合の良い加盟国だけピックアップしている可能性がある。フェミニストはまた、国内について「女性の労働力率が高い県ほど、出生率も高い」と指摘する。

 都道府県で出生率が高いのは沖縄、島根、宮城、福島などで、低いのは東京、大阪、神奈川などだ。前者が農村的な地域が多く、後者に都市的な地域が多いことは明白だ。

 また、農村部ほど女性が働きに出ている。一方で、多額の収入がある既婚男性は都市部に居住しており、その結果、専業主婦も都市部に多いというのが実情だ。

 結局、現在の日本の出生率は、「出生率の低下が急速に進んでいない農村地域」によって支えられているわけだ。

 赤川氏は、幾つかの統計調査を基に「健康な高齢女性」、つまり祖母や姑が同居ないしは近所に住んでいることが、子どもの数を増加させる決定的要因であると明言する。これが農村部の出生率が高い理由でもある。

 その上で、赤川氏は「本当に出生率を回復させるなら、三世代同居が実現するような政策を行うべきだろう」とし、今の政策は、「子どもの数を増加させる要因をもっと拡張する」ものではなく、大都市に住み、高学歴、高収入という「子どもを減少させる要因を持つ女性をもっと支援する」ものになっていると論評。キャリア女性を支援する男女共同参画を進めても出生率を高めることにはなりそうにないのは、もはや明白だ。

(後略)

 長くなってしまってすいません。

 赤川さんのデータ分析そのものについては、基本的に正しいとわたしも思っています。そこは別に問題ではないのですが。問題は「その上で」以下。

 彼自身の文章を見てみましょう。

子ども数を増加させる効果的な要因という意味では、「健康な高齢女性の有無」が決定的なのだ。ならば母親や父親の代わりに祖母や姑に育児支援をお願いしたり、三世代同居が実現するような政策を行えば、子ども数増加が期待できるということになろう。

(赤川学、『子どもが減って何が悪いか!』、ちくま新書、59ページ)

 あれあれ? 「行うべきだろう」なんて書いてませんが。これはあくまでも、分析結果から導き出される「論理的な可能性としてはありうる」(73ページ)ということの一例として述べられていることだと思います。だから「行えば」なのです。

 そもそも赤川さんは、別なところでこう書いているのです。

仮に計量分析の「客観的」事実に基づいて、「女性よ、専業主婦になれ」、「女性よ、帰農しろ」*1といった政策が仮に提案されたら、筆者なら真っ先に反対する。

(62ページ)

 ……おそまつさまでした。

 なお、議論の中身についてですが、簡単に結論だけ書くと、「女性労働力率と出生率に正の相関がある」ということを因果関係に置き換えるのは、やめたほうがいいでしょう。ただし、出生率の回復と女性労働力率の上昇を「両立させる」ことは可能である(両立させたいなら、ですが)、ということはいえるのではないかと思います。その限りでデータそのものを今後も使い続けることに問題はないのではないかと考えます。さらに、少子化対策や子育て支援を実施する際に(実施するなら、ですが)、ジェンダー平等の視点を入れていくことは重要であるはずです。いわゆる「ジェンダー主流化」の考え方ということで。

*1:なんで女性だけなのか不明ですが。まあ筆が滑ったのでしょう。

赤川赤川 2005/12/01 14:21  Juneさま。お久しぶりです。

 『世界日報』など、私はまったく読まないものですから、こんな風に引用されているとは、まるで存じませんでした。どうもありがとうございました。

 「恣意的な引用」というのは、まったくおっしゃる通りで、こういう使い方はやめてくれと、何度もも書いてるつもりなんですがね。なかなか伝わらない。

 Juneさんのコメントに特に申し上げることはないのですが、

>ただし、出生率の回復と女性労働力率の上昇を「両立させる」ことは可能である(両立させたいなら、ですが)、ということはいえるのではないかと思います。その限りでデータそのものを今後も使い続けることに問題はないのではないかと考えます。

やっぱりここだけは納得できませんね。このデータを「女性労働力率が高い国ほど出生率も高い」という解説つきで流し続けることの「政治的効果」とやらも、少しは考えていただきたい。サンプル抽出の恣意的さも含めて、こうした「恣意的な引用」を続ける限り、『世界日報』だけを「恣意的な引用」と批判するのは難しいと思います。

june_tjune_t 2005/12/01 14:32 どうも。ログみながら「あ、赤川さんがアクセスしてる」と思って見てました。(笑)
>このデータを「女性労働力率が高い国ほど出生率も高い」と
>いう解説つきで流し続けることの「政治的効果」とやらも、
>少しは考えていただきたい。
因果関係を厳密に排すならば、当然その「解説」も抜きです。サンプル抽出については、一定の基準があることを明示すべきでしょうね。その基準の吟味も含めて。
わたしとしても「福島県は出生率が高い、女性労働力率も高い、女の人はがんばってる。」みたいなデータの政治的利用を、県知事とかにしてほしくはないのです。

赤川赤川 2005/12/01 14:37  わかりました。

june_tjune_t 2005/12/01 14:53 赤川さんの「わかりました」はあとがこわそうですね。(笑)
(念のために申し上げますが、IPで赤川さんが読んでると特定できるわけじゃなくて、キーワードで飛んできて中をじっくり読んで、あ、何かコメント書いてる、という動きがご本人ぽかったというだけですので。)

TamuraTetsukiTamuraTetsuki 2005/12/02 03:28 少子化対策や子育て支援を、もしするならば、ジェンダー平等の視点を入れていくこと重要、というのは、全くそのとおりだと思います。「子育て支援」は往々にして「母親・女性の」子育て支援とみなされがちですよね。
 もっとも、juneさんにはわざわざ申し上げるまでもなく、「ならば」として前提とされる政策自体のよしあし問題を考えなくてよい、というわけではもちろんないのですが。
 あと、ふと思ったのですが、「少子化対策」と「子育て支援」も、本来は(または、少なくとも考えようによっては)別個の取り組みとも言えますよね。「子育て支援」が「少子化対策」として行われることも、別の理由で行われることもあり得るわけですから。当たり前といえば当たり前のことですけども。

june_tjune_t 2005/12/02 05:06 はい、わざわざ「実施するなら」とカッコ書きで入れていたりするのは、「ほんとうにやるべきかどうかは議論の余地がある」ということを意識していますし、「少子化対策や子育て支援」と2つを並べて書いているのは、別個の取り組みである(という部分がある)ことを意識しています。当たり前ですけどね。
たとえば、不妊治療への援助なども少子化対策には入っている場合があったりしますが、これは別に子育て支援じゃないですね。(笑)さらにそこで、女性の自己決定権が尊重されたりすることも、もちろん必要なわけです。
# って、なんか原則論ばかり書いてるな。

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