室生犀星記念館に行って来た


 かねてより行ってみたかった室生犀星記念館に行って来た。


 といっても、別に室生犀星の作品はひとつだってまともに読んだことがない。ただ一遍の詩を知っているだけという程度だ。

ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや


――「小景異情」その二


 石川啄木が書いたとよく勘違いされる詩だが、この「ふるさとは遠きにありて〜」は室生犀星が金沢のことを思って書いた詩である。で、またなんとなく勝手に「ふるさとというものは、やっぱりいいものだなぁ。遠く離れたふるさとに早く帰りたいものだ」ということをうたっているのだと勘違いしてたのだが、まったく逆で、「ふるさとというものは、遠くから思い偲ばせるものであって、決して帰る場所ではない」というような気持ちを読んだものである。


 まあ、犀星のその複雑な出生や生い立ちのせいでの、故郷に対する愛憎半ばする思いをうたっているという説もあるが、でも確かに故郷という場所は、遠くから思を馳せるものであり、たまに帰るからこそ美しく思えるものなのじゃないかなと、強く共感できる。もちろん今さら共感したところでどうしようもないのだがね。


 室生犀星徳田秋声泉鏡花は、金沢の三文豪と呼ばれている。と言っても明治生まれの文豪なので僕にとってはまったく馴染みがないし、興味も薄かった。でもまあせっかくなので、少しは関心を持ついい機会かもしれない。犀星はその名の通り犀川と縁が深く、犀川でよく遊んだ僕にとってはそもそも好感があったのだが、彼の「庭」に対するこだわりや、金沢のいくつかの学校の校歌の歌詞を描いているという部分にも愛着を持てた。今度またいつか、秋声と鏡花の記念館にも行ってみようと思う。


◆室生犀星記念館


※参考
◆ふるさと 室生犀星<合唱でYEAH!
◆室生犀星金沢市立野町小学校ホームページ