どれだけの数の人間データベースがあるか


 30年も生きてると、これまでにいろんな人間と出逢ったり別れたり、まあ出逢いとはまではいかなくても、関わったり知り合ったりしてきたもんだよ。もちろん、その中には運命的に気が合って今でも繋がりのある仲間もいれば、どうにもこうにも厭で避けてフェイドアウトした人もいるし、仲が良かったけどなんとなく連絡がなくなった人間とかいろいろいるわけさ。


 でね、最近思うんだけど、これまでに関わった人のストックというかデータベースみたいなものがあると、新しく誰かと知り合ったときに、「あ、こいつは誰それに似てるな」って思っちゃうことが多いんだよね。もちろん過去のデータベース上の誰かってことだよ。顔や体型ってのももちろん、性格や雰囲気とかね。今度のクライアントさんは大学のサークルにいた誰それに似てるなとか、新しい部署の上司と喋ってると高校のときのバイト先の店長思い出すなとかね。そういうの君もあるだろ。


 でね、そういう経験があると、何かと生きてく上で有利だなって気づいちゃったんだよ。みんなが嫌ってる上司とかでも、ああこういうタイプの人間ならこれまでも付き合いあるから大丈夫、って免疫みたいな感じで、過去の人付き合いが生きてくるわけさ。嫌味をいう客に対しても、あのときのクレーマーに比べればたいしたことないとかね。



 でね、この先楽して生きていこうとするなら、いろんな人と知りあっておくべきなんだよ。君がもし、いつもいつも気の合う同じ人とばっかりつるんでるなら、それはやめた方がいいよ。むしろ苦労すると思うんだ、長い目で見るとね。だって世の中変なヤツばっかだよ。そんで気に入らないヤツらとも付き合っていかなくちゃならないわけだしね。現状君のまわりにも気に入らないヤツって多いだろ。でも無視したり露骨に厭な顔するわけにもいかない環境だったり、立場だったりするわけだよ。


 これまでにどれだけ多種多様な人を見てきたか、知りあってきたかってのが、その人間の可能性の大きさに結びつくんだと思うんだ。そう考えると、生きてる以上は常にいろんな人と知りあって、次知り合う誰かと友好な関係を築くための糧とすべきだなんだよね。