現代日本語文法概説

主語について

主語subject・主題theme(題目topic)・主格nominative case

1主語
叙述構文の補足部の一つ。述語と対応し、述語の表す動作・作用・存在の主体、あるいは性質・状態・関係などの帰属する主体を表す成分。
(例)
風が吹く。(動詞文)
風が涼しい。(形容詞文)
風がさわやかだ。(形容動詞文)
風がある。(存在詞文)

2主題
風は、空気の移動だ。
3主格
風が吹く日

4主語廃止論−三上章『現代語法序説』−
a英語のように、述語動詞に強い影響を与えない。
b「甲ガ 乙ニ 丙ヲ 紹介する。」の例文において、「甲ガ」は「乙ニ」「丙ヲ」などと比較して、「紹介する」との関係が絶対的に優位にあるわけではない。一般化すると、主語とされているものは、他の補足部(連用修飾・保護・補充成分)と本質的な差はない。
c「風があるらしい。」において、「風が」は「ある」とは関係するが、「らしい」の部分にまで力を及ぼさない。一般化すると、主語とされているものは、必ずしも述語の全体と関係するわけではない。
d「2に2を足すと4になる。」の文のように、主語が最初から予想されていないような文が日本語には多数存在する。
北原保雄は主語を「主格補充成分」とした。

5主語を認める立場−柴谷方良−
a主格の相対的優位
b基本語順で文頭に起こる。
c再帰代名詞の先行詞として働く。





ヴォイスについて

ヴォイスvoice(態)

1能動態・・動作主を主語にして述べる方法。
母親が娘を褒めた。
祖母が死んだ。
2受動態・・被動作主を主語にして述べる方法。
a直接受動・・対応する能動文がある。
母が娘を叱った。→娘は母に叱られた。
b間接受動・・対応する能動文がない。
雨に降られた。
※受動文の作れない動詞・・自動詞
ある・要る・できる・聞こえる・読める・書ける(可能動詞)
さずかる(自他動詞)・足りる・勝る・売れる(自動詞)
非情の受身
ビルが建てられた。
迷惑の受身・持ち主の受身
私は財布を盗まれた。
3使役態
a強制
太郎を買い物に行かせた。
b許容・放任
太郎に買い物に行かせた。
c責任・手柄
娘を死なせた。娘を大学に入学させた。
※使役受動態
ボクサーはセコンドにストップさせられた。
無生物主語の使役
彼の一言が彼女を落ち込ませた。
4可能態
子供が漢文を読む。→子供には漢文が読める。
彼は上手に文字が書ける。
5自発態
啄木が故郷を偲ぶ。→啄木には故郷が偲ばれる。
自然と昔のことが思い出される。



アスペクトについて


アスペクトaspect(相)

アスペクト・・話し手が動作の過程をどのようなものとして考えているかを示すもの。
進行相progressive aspect
完了相perfective aspect

1次アスペクト・・未然(未完了)と既然(完了)。
ル形とタ形

2次アスペクト・・継続・存続・状態
動詞+テイル・アル・テシマウ
太郎が本を読んでいる。(動きの継続)
灯火が消えている。(結果の状態の存続)
彼は痩せている。(結果の状態の存続)
今、花子が服を着ている。(動きの進行過程)
花子がすてきな服を着ている。(結果の状態)
何度ものぞいている。(反復状態)
すでに終わっている。(完了状態)
過去に読んでいる。(経験)
※「ある・要る・居る」「うますぎる・小さすぎる」・・テイルがつかない
「似ている・優れている・そびえている」・・テイルを伴うことが一般的

3次アスペクト・・始動・継続・終結
動詞+ハジメル・ダス・カケル(始動)
動詞+ツヅケル・ツツアル・テイルトコロダ(継続)
動詞+オワル・オエル・ヤム・テシマウ(終結










テンスについて

テンスtense(時制)

現在時制present tense
過去時制past tense
未来時制future tense


1ル形
【動作動詞】
明日、映画を見る。(未来の動作・出来事)
最近、よく眠る。(現在の習慣)
地球は公転する。(真理)
年頃の女性は、よく笑う。(物事の性質)
まず、湯をかける。(説明)
女思わず振り向く。(ト書)
【状態動詞】
男がいる。(現在の状態)
男がずっといる。(現在までの状態)
明日、試合がある。(未来の状態)
必ず勝つ。(意志・決意)

2タ形
子供の頃、よく遊んだ。(過去の習慣)
彼は昔はよく食べた。(過去の事物の性質)
そこにあった。(発見)
宿題は出てた?(確認)
忘れてた。宿題があった。(想起)
さあ、買った。買った。(命令)
しまった。忘れてしまった。(後悔)
※連体形の「ル」「タ」
騒音を立てる飛行機を見上げた。(進行中の動作)
両国を分断する川がある。(状態)
折れ曲がった(ている)鉄骨を見た。(状態)




モダリティについて

ムード(法)・モダリティ(法性)

ムードmood
発話時における話し手の心的態度に関する情報。
述語動詞の活用形や述語動詞に続く助動詞などの形式。
モダリティmodality
発話時における話し手の心的態度に関する情報。
終助詞・陳述副詞・文型・イントネーションなどを含めた文の述べ方を決定づけるもの。

1言表内容に対する話し手の捉え方

a認識的なもの
○無標形式による話し手の判断(確実なことの述べたて)
彼が張本人だ。
○不確実なことの述べたて
彼が張本人だろう・にちがいない・のようだ・らしい・だそうだ
b情意的なもの
本を読もう・むつもりだ(意志)・みたい(願望)・むべきだ・んだほうがよい・
まなくてはならない(当為)


2聞き手に対する働きかけを表すもの

a情意的な働きかけ
命令・禁止・依頼・勧誘
b聞き手に情報を求める問いかけ
○判断の問いかけ
君が張本人なの?誰が張本人なの?
○聞き手の心的態度の問いかけ
本を読みたいの?
c伝達態度を示す・・終助詞(さ・ね・よ・ぞ・わ等)
本を読むだろうさ・みたいだわ・めよ・ものね