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2011-12-02

オリンパスが再生できない理由

| オリンパスが再生できない理由を含むブックマーク

 オリンパス損失隠しが発覚してから1ヵ月半が経ちました。この間、居据わる役員全員を解任し、マイケル・ウッドフォード氏を社長に迎えて再生させようとする改革派の動きがある一方、余計な告発をして会社を混乱させたウッドフォード氏に反感を抱き、現体制を維持したまま最小限のペナルティで切り抜けようとする反改革派の動きが鬩ぎ合っています。面白いことに、改革派は"社外"、反改革派は"社内"の人という風に、ほぼはっきりと分かれます。これはどういうことでしょうか。

 元専務取締役の宮田耕治氏はオリンパスの再生を願い、「OLYMPUS grassroots」というサイトを立ち上げ、ウッドフォード氏の復職を求めた署名を現役社員に募っています。12月1日現在の集計結果では、539名の賛同者の内、現役社員は217名しか署名していません。皮肉なことに、現役社員に対して募った署名の半数以上は、現役社員以外からのものでした。賛同数だけ見てもオリンパスの従業員数は約43,000人ですから、(その内、社員の肩書きを持たない非正規職員を差し引いたとしても)かなり少ない数字です。集計だけを見るとオリンパス社員は再生したくないと言っているかのようです。

 オリンパス損失隠しの他に、内部通報者への報復人事・いじめ問題というスキャンダルがあります。詳細は通報者−濱田正晴氏のブログに書かれていますので是非お読みください。本来は経営陣の不正を監視し、内部通報した社員をいじめから守るのが労働組合の務めですが、オリンパス労働組合は典型的な御用組合で、守るどころかいじめに加担して、濱田氏を追い詰めようとしています。そして絶望的なのは、辞任した菊川剛元会長が、この社員一人すら守らない労働組合の元委員長だったということです。

 今回の損失隠し問題では、経営陣の責任や上場維持・廃止による損得ばかりに注目が集まっていますが、仮に会社は軽い行政処分で済ませ、現経営陣が退陣し、ウッドフォード氏が社長になったとして、オリンパスは再生できるでしょうか。悪いのは経営陣、社員は騙された被害者? それは違います。

 少なくとも損失隠しを財務部の社員が知らないわけがなく、濱田氏への陰湿ないじめは今でも同じフロアで働く300人近い社員たちの目と鼻の先で行われ、一人として濱田氏に声をかける者はいません。社員たちは毎年雪だるま式に増えていく有利子負債や会社の利益にならない企業買収、内部通報者へのいじめを長年見て見ぬ振りをしてきました。不正があっても黙認すれば出世や内視鏡シェア70%の独占的利益、粉飾決算によって吊り上げた株価の恩恵に与れると、経営陣と社員が一体となって、いわば"オリンパス村"という利益共同体を築き上げ、村の掟を社会の法律や倫理より上位に置き、それを破る者は村八分にして排除してきたのです。このような組織に自浄能力があるわけがありません。いくらトップを挿げ替えても実際に会社を動かす社員の意識が変わらないままでは、また同じような不正を繰り返します。

 オリンパスが今後どうなるかはわかりませんが、損失隠しの責任は一部の経営陣だけではなく、社員一人ひとりの責任でもあることを認識した上で、諸悪の根源である"オリンパス村"を解体しない限り、真の再生には程遠いでしょう。しかし、長年村社会で生き、それに合わせて人生設計をしてきた社員たちが、これまでの自分の人生を否定し、生き方を変えるというのは、とてつもなく困難で勇気がいることです。現実的に見て社員の大多数は変われないと思います。

 オリンパスが抱えている問題は、すべての企業や国家全体にもいえることで、私たちに重要な示唆を与えています。悪いのは偉い人たちだけではなく、末端で働く大勢の労働者たちも直接的ないし間接的に不正に加担しており、それらが相互に癒着する関係を絶たないことには、決して再生できないのです。