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助産院は安全?

2012-01-06

忘れてはならないし、知っておかないといけない知識

先日の当ブログ開業助産師からのメッセージがどう伝わっているのかで、私もきちんと書くべきことだったのに、suzanさんが正してくれました。有難うございます。

もう一度書きますが、病院分娩なら安全、ではありません。

病院分娩だって、妊婦さん自身がきちんと自己管理して分娩にのぞむことが原則であり、

その上で厳重な医学的監視を行い、異常になりそうな傾向がみられたらすばやく対応する、

その上での「安全な病院分娩」です。

助産院や、ましてや自宅で分娩が進行しているとき、

たとえどれだけ「からだづくり」をしようとも、

状態急変してしまえばすぐに気づくことは不可能(監視してないですから)でしょうし、

すぐにすばやく対応することも不可能(医師もおらず医療設備もないですから)ですので、

「あぶなかったけどぎりぎりで助かった」ような、

妊婦さん自身には「結果的に安産でしたね」といえるようなお産を

「結果的に安全」に終わらせることはできないだろう、と考えます。

琴子や琴子のお友達が教えてくれた、とっても大切なことでした。そう、病院分娩なら安全、ではありません。出産は特に問題を感じることがない限り、私たち産む側は幸せな結果しか想像していないことも手伝って、楽しいイベントのように扱うのが主流になってしまっています。でもそれは、

他の国のことはわかりませんが、日本における高い分娩の安全性は、

われわれ産科医師を含む産科医療に関与する人間たちが

必死になって日々作り出しているものです。

と、suzanさんが仰る通りにおもいます。そして、こうやって“死産”というのが滅多にないことになった御陰で、“死産”を不安におもう妊婦さんの数は相当稀と言っても過言ではないくらいに、ほぼ安全に産めるとおもえるようになったんだとおもいます。

でも、だからこそでしょうね、悲しい出産になってしまった場合の落差の激しさ。

否、実際には悲しいというより、『不満なお産』。

病院で産む=大事にされていないでしょ?

そんな感じで悔やませているように私は感じています。


病院なら何もない、安全だというのではなく、出産というのは常に異常と背中あわせだということ。その異常が遂に生じてしまった場合、どれほどスピィーディに対応してもらえるかが重要になる。助産院や自宅出産の場合、緊急時への対応、交通事情はどうなのか。

『救急搬送』で迅速な対応を求めても

私は琴子を出産した後、病院に行きたかった。それがなぜか叶わなかった。物理的な問題ではなく、助産師の判断によって、病院はずっと遠くに追いやられてしまっていた。それに気がついたのは琴子が死んでから。

そして、自分でも反省しながら考えるのだけど、当時の私に「何かあったときにすぐに対応してくれる病院がいいよ」とどんなに説明しても、聞く耳をきちんと持つことができただろうかと…。

もしかしたら、【特別を理解しあえる関係】に酔い、そういう仲間と病院をすすめてくれる人を批判していたかもしれない。情けないようだけど、そういう想像の方が正しいと思える。

そして、病院で起きることはなんでも事故と頭の中のどこかに常にそう思っている考えがあって、何もないと信じて助産院を選ぶのかもしれない。

病院なら安全なのではなく、出産というのはいつ急変するかわからないことだと、そのときにより早く対応出来る環境を選びたいとおもわないのかとか、そういうことを私たちはきちんと学ぶべきだと痛感しています。

haccahacca 2012/01/07 07:16 搬送すらされなかった琴子ちゃんや、明らかに手遅れになってから搬送した事実を作るために自家用車で運ばれたはっか、こういうのが助産院や自宅出産です。ぼんやり思い描くような助産院や自宅出産の幸せなイメージは、覚めてみると「それが何?」という程度のもの。
助産院や自宅出産というとまず琴子ちゃんやはっかたちの事例を思い浮かべるようになるのがその後のあかちゃんがいる生活を実現するために必要なイメージではないかな。確率は低くてもあり得ないような事態では決してないですから。

ふぃっしゅふぃっしゅ 2012/01/07 11:06 琴子ちゃんのお母さん、haccaさん、こんにちは。

「病院分娩なら安全、ではない」についての認識も、haccaさんが「覚めてみるとそれが何?」助産院や自宅分娩の幸せなイメージについても、その情報源が個人的な体験に偏っているからかと思いますね。

産科勤務していれば当然、出産経過や母乳分泌、あるいは赤ちゃんへの接し方の慣れなどの違いは初産と経産婦さんでは大きく違うということは知っているはずですが、助産院などの体験記を読むと「前回の病院では大変だった。助産院で産んだから全然違った」ととらえた記述がとても多いですね。
お母さんたちがそう感じたとしても、「それは初産と経産の違いによるものが大きい」ことを説明できるのはさまざまな分娩経過や産後の経過をみたり、統計などから客観的にとらえる立場にいる助産師だからこそと思います。
ところが、そこをうやむやにしてお母さんの満足感を「やはり助産院だから・・・」と宣伝に利用している助産師がいることは、適切に「事実」を伝えているとは思えませんね。

また、「からだづくりをしたから出血が少なかった」「つるりとうまれた」「病院と違って血まみれでうまれてくる赤ちゃんはいない」「病院では生まれたあと激しく泣いているのに、助産院や自宅でうまれた赤ちゃんは静か」・・・などなど、本当に病院では違うのか現状を調べているわけではなく、認知バイアスのかかった個人的体験談にすぎないのではないことが夢のように語られていることに、助産師側がもっと懐疑的になる必要があると思います。

病院での対応に比べて自分たちのかかわり方がよりよいお産になっていると思っているとしたら、その思い込みが搬送の判断の遅れにもつながるし、周産期医療の現実を正確に広い視野でとらえる事を妨げてしまうと思います。
助産院や自宅分娩はごくごく一部の正常に経過したお産に対応しただけ・・・ということでしかないと思います。
それを何百例経験しても、正常に経過したお産の経験にしか過ぎないのですから。
異常に対応できなければ、助産師の経験としては不十分。
でも夢のようなことを語る人の方が、優れた助産師のような世の中の錯覚があるのでしょうね。

メイメイ 2012/01/15 06:27 琴子ちゃんのお母さん、はじめまして。
イギリスの国立病院で助産師として働いています、メイと申します。
「助産師 ブログ」というキーワードで検索をしたところ、偶然こちらのブログと出会いました。数日前のことです。それから毎晩、少しずつ、一番最初の記事から読ませていただき、現在2007年の9月まで読み終えたところです。

まずはじめに、お子さんを亡くされるという、私などには想像を絶する辛い体験をされたことに、胸が痛みます。おかけする言葉もありません。記事を読みながら、何度も涙で目が曇りました。
そして、貴重な体験をこうしてブログにして下さったことに、心から感謝いたします。職業柄、お子さんをなくされた方が、どのような言葉掛けを嬉しいと思い、逆に辛いと思うのか、教えて頂けたことは大きな財産です。ただでさえ辛い思いをされている方に、私の不用意な声かけでさらに辛い思いをさせることの無いよう、記憶にとどめておきたいと思います。

私のブログの「ナチュラル志向」という記事を、お時間がある時に読んでいただけるとありがたいです。この記事は、私がこちらのブログと出会う数時間前に書いたもので、琴子ちゃんのお母さんから影響を受けたから書いたものではありません。言いたいことは、琴子ちゃんのお母さんとほとんど同じだと思います。

私は日本でも助産師をしておりました。神谷助産師と同じ助産学校の出身です。でも、助産院ではなく、総合病院で勤務しておりました。2004年に夫の仕事の都合でイギリスに渡り、こちらの大学で再度助産を学び、現在また助産師として働いています。

両国で学び、両国で助産師として働いてみて、日本の助産教育の浅さ、偏り、問題点に気づかされました。日本の助産院についても同様です。日本を離れて8年、最近の動向は良くわからないのですが、自宅出産がブームなのでしょうか?

日本の助産院勤務の助産師は、自分たちのことを病院勤務の助産師よりも上だと思い込む傾向があるように思います。「医師のもとで働いているわけではない、自立した助産師」というイメージでしょうか。それなのに、医師ではないために本来はできないことが多々あり(薬の使用、会陰切開、会陰縫合、ハイリスクの取り扱い、などなど)、それを補うために、処方に規制のないホメオパシーやお灸やテルミー、会陰裂傷にはクリップ、その他科学的根拠のない方法を多々用いているように思います。

そしてそられの科学的根拠のない処置に対して、何の規制も無いことが、日本の法律の大きな問題点だと思います。イギリスでは、例えば私が妊婦さんにテルミーを施したりしたら、それだけで免許剥奪になる可能性もあります。「科学的根拠のない処置を行ってはいけない」という、基本的なルールがあるからです。

他にもここでは書ききれないたくさんのことが、日本ではとても遅れています。先進国とは思えないほどに遅れています。日本の中にいてはわからないことが、外から見ると良くわかるようになりました。私自身、日本で働いていた頃は、助産院の助産師を自分より上だと思っていましたし、素晴らしいと思い込んでいましたから。今はただ、異常を取り扱う十分な教育を受けてもいないのに、助産院でお産を扱えるなんて怖いもの知らずだと思うばかりですが。

私にできることがあれば、ぜひ琴子ちゃんのお母さんや、意志を同じくする方達と協力して、日本の助産の問題点を世間に訴えていきたいです。私自身、昨年3月に、第一子を帝王切開にて出産しました。逆子だったのです。それもあって、琴子ちゃんを亡くされたお母さんの辛さや悔しさが人ごととは思えず、ぜひ協力させていただきたいと思った次第です。

助産の世界は狭いです。出身校によって派閥のようなものもありますし、OBに逆らってはいけないというような、昔ながらの気質もあります。だから、助産師会はまったく役に立たないと思います。彼女たちは、お母さんと赤ちゃんの味方ではありません。助産師の味方です。厚生省に訴えて、助産に関する法律や規制、教育を変えていく必要があると思います。
とは言っても、お役所仕事は遅々として進みませんし、事なかれ主義のために子どものワクチンも他の先進国より20年分くらいは遅れているような国ですから、大した期待はできないのかもしれません。でも、何もしなければ何も変わりませんものね。

琴子ちゃんを助けることをせず、闇に葬ろうとした助産師には、はらわたが煮えくり返る思いです。それと同時に、そんな殺人者がその後も助産師として働くことが可能な日本の制度に絶望します。密室の助産がまかり通っている日本。ありえません。これがイギリスで起きたことだったら、H助産師は免許剥奪は当然のこと、まず間違いなく刑務所へ送られていたでしょう。琴子ちゃんのお母さんが訴えなくても、そうなっていたでしょう。

日本には日本の素晴らしいところがたくさんあります。何もかも外国のまねをすれば良いとは思っていません。でも、助産制度に関しては、明らかに日本は劣っています。こんなことを書いたら日本中の助産師さんたちから総スカンを食らうでしょうね。でも、私はそう思います。少なくとも、化学的根拠のある処置をすることと、常に二人以上が分娩に立ち会い、事故報告などを怠らないこと、この2点くらいはできなくてはいけないんじゃないかと思います。他にももっともっと言いたいことはありますが、きりがないのでやめておきます。

琴子ちゃんのお母さん、もし私にできることがあればぜひ連絡をください。
これからもブログを読ませていただきます。よろしくお願いいたします。

琴子の母琴子の母 2012/01/15 21:51 メイさん、こんばんは。
琴子を想ってくださり、ありがとうございます。
やはり琴子は私にたくさんのプレゼントをくれるのだとおもいました。
昨日はリンズ(琴子の妹)が、今日は私がダウンしてて、まずはしっかり体調を戻します。
近く、必ずご連絡します。
伺いたいことが多くあります。

よろしくお願いいたします。
そして、ありがとうございます。

メイメイ 2012/01/16 15:28 琴子ちゃんのお母さんへ
コメントを返して下さってありがとうございました。
あれからまた少しずつ読み進めて、私が上のコメントに書いたようなことはもうとっくにご存知だと知り、やはり全て読み終えてからコメントすれば良かったと反省しております。助産師さんや医師の方達がたくさんコメントを寄せて下さっているのですね。心強いですね。

体調をしっかり整えて、お時間ある時にいつでもメールください。添付したアドレスはプドバイダーのものではありませんが、私が唯一持っていて、日常使っているメールアドレスです。

今年は日本は寒いと聞きました。早く体調を戻されますように。お子さんがいると母はなかなかゆっくり休めませんよね。それでも、子どもがいる喜びというのは何者にも代え難いと、きっと琴子ちゃんのお母さんは思っていることでしょう。私もそう思います。

ふぃっしゅふぃっしゅ 2012/01/17 10:35 琴子ちゃんのお母さん、こんにちは。お体の具合はいかがですか?震災以降のお疲れが一気に出たのではないかと心配です。ゆっくり休めますように。

琴子ちゃんがまた出会いを作ってくださったのですね。ブログを読む私もうれしく思います。

メイさん、初めまして。
私はいつくかの総合病院勤務を経て、現在分娩を取り扱っているクリニックに勤務する助産師です。
以前メイさんのブログを偶然読ませていただいたことがあります。海外での資格取得、生活、そして子育てをしながら仕事を続けていらっしゃること、どれもすごいご体験ですね。日本からエールを送ります!

イギリスの産科事情を是非是非伝えてくださいね、期待しています。
2011年11月27日のエントリーに王立助産学会の出したメッセージのエントリーがあります。
その中にも私自身の助産師の会陰切開・縫合術に関する考えを書いています。メイさんのブログにメイさんが縫合をできるようになったエントリーがあったので、そちらにコメントしようかなとも思ったのですが、こちらの方が今までの議論の積み重ねがあるのでこちらに書きますね。

日本の中ではここ数年の間に、イギリスやオランダの助産師のように会陰切開・縫合術ができることが「自律した助産師」であるかのような方向に進んでいます。こちらのブログの「会陰縫合術についての意見」のカテゴリーを参照いただければ、その背景がわかるかと思います。
メイさんのブログのほうで、縫合術ができるようになったことで安心されたお気持ちが書かれていました。これはイギリスのように助産師が縫合術をしなければならない、縫合術で医師を呼ぶことはできないシステムであればそうだろうと理解できますね。

取上げ婆とかTBA(Tradisional Barth Attendant)のような無資格の分娩介助者の時代から、産婆や助産師の資格者による分娩介助の時代、そしてさらに医師が立ち会う分娩介助の時代と産科医療は発展しているのだと私はとらえています。
であれば、日本のように産科医という医師の中でもさらに専門医が常時妊産婦さんの医療管理に責任をもってくれる社会は、世界の中でもとても恵まれた社会なのだと思います。(ここ数年で、ようやく自分も気づいたというのが正しいのですが・・・)

あえて助産師が縫合術までしなくても、医学的知識・技術のある医師がどんな小さな傷でも縫合してくれるということは、日本の医療の中で失ってはいけない貴重な財産だと思います。
包丁で指を切って救急外来に行った時に「医師不足」だからと看護師に縫合されたら・・・。私は大きな不安を覚えます。それと同じだと思いますね。

イギリスの場合は11月27日のエントリーにも書いたように、限られた医療資源から国民は我慢することは我慢するという政策を国民の納得の上に選択してきたから、助産師の縫合「でもよい」という結果になったのだと認識しています。
また長い歴史の中でつい最近まで広大な植民地や支配国があれば、なおさら医師に見てもらうシステムが当然限られていたのではないかと思います。
いかがでしょうか?また現地の様子を教えて下れば幸いです。

日本の助産制度の浅さ、偏り、問題点については、本当に「遅れている」と思い同感です。
こちらのコメントでも何度か書きましたが、私は看護師勤務後に助産師になったのですが、同じ看護教育を経たとは思えない独特の助産師の気質に驚くことが多くありました。特に、桶谷式マッサージの中での偏った食事指導や舌小帯切除についての疑問が大きかったのですが、そのような未検証の考えに基づいたさまざまな民間療法や民間資格が跋扈していることが問題だと認識されていないどころか、開業のために利用さえされている現実は、本当に母子のためだろうかと思います。
このあたりはkikulogというニセ科学を考えるブログを参照してみてください。いくつか「自然なお産」とか「ホメオパシー」「助産院」のエントリーがあります。

私自身は琴子ちゃんのお母さんに出会って、「医師の立ち会わない助産師だけの分娩介助はなくそう」ということを強く訴えることが、助産師の仕事ではないかと思うようになりました。
うちのクリニックでも、問題がなければ発露あたりまで先生を呼びません。でもそれは医師がより正常に妊娠経過を送れるように見守っていてくださるからだし、常時医師が陰に日向にお産を見守っていてくださるからですね。
それは「自律した助産師」ということとは、全く関係のない話だと思います。

またご一緒に考えていけたらとてもうれしいです。

メイメイ 2012/01/18 05:23 ふぃっしゅさん、はじめまして。
私のとりとめもないブログを読んで下さったとのこと、ありがとうございます。

会陰切開、縫合術に関してですね。そちらの記事、読ませていただきました。

英国で助産師が切開および縫合をする理由は、大きく分けて二つだと思います。

一つは、「それが元々の業務に含まれていたから」。
英国でも、1950年代頃までは、一部の富裕層をのぞけば、お産は自宅で、助産師の介助ものとに行われるものだったと聞いています。そして、切開も縫合も、その頃から助産師がやって来ました。ですから、産科医が増え、病院でのお産が増えたからといって、助産師の通常業務を制限する理由が無かったのだと思います。切開(現在はほとんど行いませんが)および縫合は、正常分娩経過の一部と考えられています。したがって、正常分娩を扱う助産師の業務に含まれているのは、自然なことかと思います。

第二の理由は、「お産の件数が多いから」。
NHS(国立病院)の産科分娩病棟は、常に満杯状態です。そして基本的には、1対1ケアです。産婦さん1人に対し、助産師1人です。それに対し、医師はチームを組んで病棟中をまわりますので、おそらく数にすれば、産婦さん10人に対し5人ほどかと思います。しかしながら、ジュニアドクターたちは縫合も切開もできないし、一番上のコンサルタントはそのような直接的な処置はしないのが普通なので、実際に処置をするのは中堅ドクター2人(時には1人)ということになります。彼らは予定帝王切開および緊急帝王切開にも対応しています。
そんな状況ですから、ローリスクの普通分娩に毎度呼ぶというのは、実質不可能かと思います。そんなことをしていたら、縫合を何時間も待つことになり、分娩病棟は、あっという間にいっぱいになり、入りきれない産婦さんが廊下でお産する事態になるかと思います。


ですが、助産師には縫合できない裂傷もあります。それは3度以上(肛門に達している)の裂傷の場合です。この場合は、産婦さんを手術室に運んだ上で、麻酔科医立ち会いのもと、硬膜外麻酔をしてから産科医が縫合します。つまり、手術の扱いになるわけです。

私は、個人的には、助産師の縫合技術が医師よりも劣っているとは思いません。ですから、みんなが医師に縫合してほしいのに、助産師で我慢している、という図式には賛同できかねます。今までの経験でも、あえてお産を担当した助産師でなく、医師に縫合してほしいという方には、未だにお会いしたことがありません。

ちなみに、英国では、看護師が傷の縫合をすることもあります。もちろん、きちんとプラスαの教育を受けてからです。


私個人としては、日本でも、助産師が縫合できるように教育を見直す必要があると思っています。そして、必要最低限の薬を処方する権限も与えた方が良いと思っています。そうすることによって、助産師が法の隙をぬって、違反すれすれの民間療法を頼ったりする必要がなくなると思っています。

でも、それをするためには、徹底した助産業界の改革が必要だと思っています。過激ですが、今ある助産院はすべて廃止するくらいの覚悟が必要だと思っています。助産師と産科医が協力し合って、同じ判断基準を持ち、同じ危機管理意識を持ち、すべての処置はエビデンスベースド(研究の結果明らかに根拠があるもの)であるべきだと思います。
今の日本の状態では、助産師にそれらの権限を与えることは、危険すぎると私も思います。

こちらのブログを読み進めるほどに、日本の助産院の助産師たちは一体どうなってしまっているんだと、まったく理解不能です。本当に、カルト集団のようですね。恐ろしいです。

ここに書ききれないこともたくさんありますが、また徐々にいろいろ意見交換をしていきましょう。

suzansuzan 2012/01/18 05:45 日本とイギリスでは、産科医師の仕事からしてすでに、日本とは異なっています。
国ごとに医療現場での医師の役割が違うのは、ある意味当たり前でしょう。
異なる文化的背景の中で医療制度ができてきたのですからね。

医師免許だって、ある国で取得した免許が他の国では使えない、のも普通の話です。

イギリスで助産師や看護師が縫合を行うことは、ですから
イギリスの中では当たり前のこと、不自然でないこと、
国民の合意を得ていることでしょう。
イギリスでは「医師にやってほしいけど看護師や助産師の縫合でがまんする」という認識はないと思います。

ただ、だからといって
「イギリスでは助産師が切開縫合をしているから日本でもやらせるべき」とは
いえないと思います。
全く異なる医療制度、医学教育なんですもの。
「助産師」という名前が共通だから同じ仕事をすべき、といきなり言えるわけはない。
でも、最近の日本の助産師業界の動きを見ると、
「アメリカではこう、イギリスではこう、だから日本もこうすべき」な論調です。
ついに産婦人科医師がわから「助産師は切開縫合を今の時点で行うべきでない」という
抗議文まで出る始末です。

「お産」という同じ現場にいる仲間、協力しあうべき関係だというのに。

いいすぎかもしれませんが、日本の開業助産師の方々は、
産科医師不足、お産ができる病院の現象という困った事態を逆手にとって、
今こそ自分たちが勢力を拡大しようとしている、としか思えません。
お産する本人の産婦さんたちのからだや心の安全がなおざりにされているように思います。
(心の安全とは、たとえば「からだづくりさえすれば病院でなくても安産できる」などの間違ったお産イメージ植え込みなどです。)

遠い将来、日本におけるお産の現場における産科医師の役割も助産師の役割も
医学教育とともに変化することもあるのかも知れません。
ただ、それはどう考えても数十年単位で変化することで、ここ数年でどうにかなるものではない。
助産師学校で鶏肉を縫合させる実習を行ったから、どうなるものでもないと思います。

ふぃっしゅふぃっしゅ 2012/01/18 10:39 メイさん、こんにちは。お返事ありがとうございました。

イギリスでも、1950年から60年代の分娩の施設化の時代には、そうとう助産婦の反対は多かったようですね。これは世界中の流れでした。
おそらくですが、日本が一気に施設分娩化に向かったのに対してイギリスがある程度助産婦の独立性を保ってきたのは、GP(家庭医)の存在ではないかと思います。産婦人科医という専門医にかかれるのはGPを通してでなければかかれない。
すべての医療を無料で行うためのシステムが、助産師の独立を保てた要因だったのではないでしょうか。
助産師にとっては納得がいかないかもしれませんが、全体の医療コストを抑えるために医療の質を落として(お産の質とはまた別の意味で)、医師ではなく助産師に分娩をさせているということではないかと。

がんになっても専門医にかかるまで何ヶ月も待たされる。
日本の社会からみたらありえないほど「我慢させられている」システムでも、イギリスの人はそれが当たり前だと思うでしょう。
どちらがよいかではなく、国民が選択してきた結果なのですから。
少なくとも、今の日本で医師免許もない助産師が縫合をすることを国民が受け入れるかどうか、「医師不足でしょうがない」と思うことは「我慢」という感覚ではないかと思います。
また、どの本に書かれていたのかすぐにわからないのですが、イギリスの自宅分娩でも裂傷ができるとGPを呼んで縫合してもらうということを読んだ記憶があります。

私も助産師になる前に難民キャンプで一緒に働いていたカナダとオーストラリアの助産師が縫合をしているのを見ていました。
すごい、日本もそうなるのかと思っていました。
>助産師の縫合技術が医師よりも劣っているとは思いません。
ここは、もう一度メイさんがどうしてそう考えていらっしゃるのか、それを日本の社会に納得させられることができるのか、ゆっくり考えていかれたほうがよいかもしれません。
本当に、医師の技術に劣らないのでしょうか。

これに懲りずに、また意見交換を楽しみにしています。

メイメイ 2012/01/18 18:32 suzanさん、ふぃっしゅさん

私は、求められたのでこの国での体験をもとに私自身の思いを書いたまでで、それ以上の議論をするつもりはありません。誰を納得させるつもりもないし、賛同してほしいわけでもありません。
こういう場では質問されたことについては冷静にかつ丁寧にお答えするのがマナーだとは知っているのですが、現実問題としてあまり時間が取れません。それに、こういう議論はとても疲れてしまって本当に苦手なのです。申し訳ありません。

イギリスがこうだから日本もこうした方が良い、などとは思っていません。ただ、琴子ちゃんのお母さんが望むなら、情報として提供したいと思ったまでなのです。

ご理解いただけると大変ありがたく思います。

suzansuzan 2012/01/18 21:45 誤解されてしまったなら大変に申し訳ないのですが、
わたくしは、メイさんというお方に議論をふっかけたつもりはありません。
純粋に、自分の意見を書き込んだだけです。
今の日本では助産師が会陰縫合をするのは時期尚早である、という意見は
ある意味ではメイさんと同じなのではないですか?
それでもわたくしは別に、メイさんに自分の意見を認めてほしいとか思っていません。

もう一度書きますが、わたくしは自分の意見を書き込んだだけで、
メイさんにお返事を求めてもいませんし、議論をいどんだつもりもありません。
誤解なさらないよう、お願いいたします。

医師X医師X 2012/01/19 05:22 琴母さん、お久しぶりです。
今年も宜しくお願い致します。

今(朝4時ですが)、お産が終わり帰ってきました。ただ昨日、重症妊娠高血圧症候群(P.I.H)の方の緊急帝王切開をやったのですが、お母さんの血圧が少し変動するため、今晩は寝ずに経過観察です。赤ちゃんは元気!!。

メイさん、はじめまして。私は東北で産婦人科医を営んでいる開業医です。イギリスのお産事情、体系を詳しく教えて下さりとても参考になりました。

その国々によってお産を含めた医療体制、また新生児あるいは乳幼児医療体系はかなり違います。それまでの歴史、医療や保険制度の仕組みも全く違ってきます。

メイさんが勤められている病院はかなり恵まれた環境にあると推測できます。ただ、イギリスの場合、体外受精(IVF)などの高度生殖医療に関しては、世界の先陣をきり、2010年世界で初めてIVFを成功させたRobert Edwards氏がノーベル賞を受賞しました。

ただ、イギリスの場合、どういう事情あるいは考え方なのだったのかよくわかりませんが、20年位前までは、新生児医療に関してはそれほど積極的な考え方ではありませんでした。周産期医療従事者はおそらく日本よりはるかに多いはずです。しかしWHOのデータをみますと、妊産婦死亡率、新生児死亡率や乳幼児死亡率、いずれも日本よりも高い死亡率です。まぁ、一概に周産期死亡率などだけで、その国の医療レベルを判断はできませんが、なにか根本的なところが日本と違っているのだろうと思います。

メイさんがおっしゃている、日本の助産師教育の見直しには大賛成です。イギリスのように助産師さんにある程度の権限を持たせるためには、その教育制度の大改革が必要だと思います。ただこれも一朝一夕にはいかないでしょう。

そちらでは話題になっているかどうかわかりませんが、日本が約10年後を目処にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に入るかどうかの議論が始まっております。これは、貿易だけだはなく、我々の医療界にも当然、影響が及んできます。TPPに加入となれば、医療界全体の教育も見直さなければなりません。イギリスはユーロ圏には積極的には関わっておらず、独自路線の道を選択しました。もし、その辺の事情もわかりましたならば、教えて下さい。

メイメイ 2012/01/20 15:31 suzanさん
ご丁寧にありがとうございました。
コメントしてから、なんだか失礼な書き方をしてしまったかなと後悔しつつ、一方で、ネット上での意見交換ではとても消耗することが多いので、このまま見ないでおこうかなどと、うじうじ一日悩んだあげく、意を決して戻って参りました(大げさですみません)。

2010年9月30日の記事まで読ませていただきました。
助産師の会陰縫合に関しては、ずいぶん前から皆さんで意見交換をされていたのですね。そういった背景をしらず(ふぃっしゅさんがご指摘くださったのに読んでいませんでした)、また、日本の情勢も知らないままに、不用意な意見を書き込んだことを反省しています。
suzanさんのおっしゃる通り、助産師が会陰縫合をするのは、時期尚早だと、私も思います。なんというか、根本的に教育や制度を見直してからでないと、危険すぎるという感じがします。つまり、今導入することには、私も反対です。

ふぃっしゅさん
私が「助産師の縫合技術が医師よりも劣っているとは思わない」理由について、よく考えてみました。そして、今まで見て来た感想としか言いようがないという結論に達しました。研究結果などがあるわけではないので、あくまでも私的な感想です。
医師でも、ベテランでとても上手な人もいれば、まだ経験が浅く上手でない人もいます。助産師も同様です。つまりは、職種に関係なく、上手な人も下手な人もいるということでしょうか。ジュニアドクターとシニアミッドワイフなら、シニアミッドワイフの方が上手だと思います(私的な感想です)。
患者側の気持ちになれば、上手な人に縫合してもらいたいですよね。でもそうすると、人材が育ちませんし、第一今の英国の現状では、業務が立ち行かなくなってしまいます。だから、ジュニアドクターもジュニアミッドワイフも、自分の技術の未熟さを知りつつも、経験を積ませていただいているというのが実情だと思います。

これで質問への答えになっていますでしょうか?


医師Xさん

初めまして。寝ずの経過観察、お疲れさまです。緊急帝王切開、間に合ってよかったですね。お母さんも、無事に血圧が安定すると良いですね。

東北で開業されているとのこと、震災の影響があったのではないかと、心が痛みます。私も東北出身ですが、ありがたいことに家族友人はみな無事でした。

WHOのデータに関しては、私も不思議に思ったことがありました。こちらで勤める前は、日本の医療水準の方が上なんだと思い、誇らしく思っていましたが、勤め始めてみて、設備的にも人材的にも英国がそれほど劣っているようには思えず、自分なりに理由を考えてみました。

そこで自分なりに出した結論は、移民が多く、他民族、多文化であるということと、英国人の貧困層の教育レベルが低いということ、この二点が影響しているのではないかと思いました。

日本では常識となっている(今はもう過去形でしょうか)、「妊娠したら病院へ行って妊婦検診を受ける」ということは、ある文化圏の人たちおよび貧困層の人たちにとっては、まったく想定外のことだったりします。特に移民に対しては、言葉が通じないために、それを浸透させるのにかなりの努力を要したようですし、今現在でも苦労しています。
健康管理に対する考え方も違い(日本は健康管理大国ですよね)、肥満が異常に多いです。なにしろこちらには健康診断を受ける習慣がありませんから、妊娠して初めて自分の体重を知る人もいます。血液検査も、病気をしたことがなければ、人生で初めての経験のようです。
西アジア圏の妊婦さんは糖尿病を合併することが非常に多く、管理に苦労しています。
アフリカからの移民では、sickle cellや thalassemiaを持つ妊婦さんも多いです。
イスラム系では、DVによる周産期死亡事故もあります(honor killing)。
アイリッシュ系トラベラーの人たちは、移民ではないのですが、妊婦検診を受けないという独自のこだわりがあります。
英国人にはドラッグアビューズもあり、乳幼児の死亡事故は、ドラッグやDVが絡んでいることもあります。
そういった諸々が、すべて統計に影響するのではないかと思います。

学生時代の曖昧な記憶ですが、英国内の妊産婦死亡の第一の要因は肥満(BMI40以上)、第二の要因はコミュニケーション不足。それと、亡くなった方には、英語が第一言語ではない方が多かったと記憶しています。

第二の要因のコミュニケーション不足というのは、我々医療者側のコミュニケーションが取れていないということです。
英国では、それぞれの職種によって細かく分担が決まっています。
たとえば、妊娠期はコミュニティミッドワイフの担当、血液検査はフレボトミストの担当、エコーは超音波技師、腰痛があればフィジオセラピスト、異常が見つかったら産科医、精神的に不安な要素があれば精神科医、社会的に不安な要素があればソーシャルワーカー、分娩担当は分娩病棟の助産師・・・という具合です。それなので、お互いのコミュニケーションがうまく取れていないと、リファーしたつもりがされていなかったり、診察結果が他のチームメンバーに行き渡らなかったり、いろいろな問題が生じます。ミッドワイフやドクターも大勢いるために、毎回担当者が変わったり、産前産後を比較できる人がいなかったりで、包括的なケアがしにくい状況です。

それを改善するために、産前産後の助産師に関しては受け持ち制を導入したり、リファーのあり方を見直すなど、努力している次第です。



TPPに関しては、非常にお恥ずかしいのですが初耳です。最近ろくにニュースも見ていなくて、情けない限りです。何か耳に入りましたらまたお知らせいたします。

すべて私の曖昧な記憶と、個人的感想から書きました。ですので、確実なデータに基づいたものではありません。そこをご了承の上、世間話程度のことと思っていただけると幸いです。
長々と失礼いたしました。

医師X医師X 2012/01/20 17:38 メイさん、ご丁寧なお返事ありがとうございました。

多分、私も移民が多いからだろうと想像しておりました。
日本は「妊娠したら病院へ行って妊婦健診を受ける」は、以前より徹底しております。と言いますのは、日本の少子化をなんとか食い止めようと各自治体で多少の違いはあるものの、妊婦健診の大部分は補助金がでるようになりました。また、日本の医療体制で最も後れていた予防医学(特に子供のワクチンなど)も、ここにきてようやく一部補助金がでるようになりました。しかしながら欧米先進国と比べますと、予防医学に関してはまだまだです。ご存知のように日本は「病気になった」時の医療システムは秀でたものがあります。ただしこの程度では少子化に歯止めはかからず、ヨーロッパのように「子供は国の宝」という考え方が日本に根付き、それに伴う法や設備整備を行わなければ、我々、周産期医療に携わっているものがいくら頑張っても限界があります。

ただし、今回の震災でもはっきりしましたが、日本にはまだまだ底力があります。人類史上、稀にみる大震災で、多くの方が亡くなり、多くの方々が今尚、避難生活を余儀なくされていますが、着々と復興が始まってきています。他国であれば暴動や略奪が起き軍隊出動だったでしょう。

しかしながら、国民は一流、政府が三流(表現が悪いかな?)であるため少子化問題も遅々として進展しておりません。

TPPは、何しろアメリカが絡んでいる問題で、まだどうなるかは判りませんが、イギリスのようにあくまでもポンドにこだわる!!というような、日本独自路線でもいいのかなとも思いますが・・・・。
また、色々、教えて下さいね。

琴母さん、へんな話になり申し訳ありません。

ふぃっしゅふぃっしゅ 2012/01/20 19:55 琴子ちゃんのお母さん、こんばんは。

メイさんが戻ってきてくださって、本当に安心しました。私が「意見交換しましょう」と書いてしまったので、議論を挑まれたように感じてしまったのですね。ごめんなさい。文章ではうまく表現できないニュアンスですが、「語り合える方が出現してうれしい!」という思いで長々と書いてしまいました。お気持ちの負担にさせてごめんなさい。あやうく、琴子ちゃんのプレゼントである出会いを台無しにするところでした。

会陰切開・縫合にしてもメイさんは、これからもイギリスやオーストラリアの制度に従って働かれるのですから、どうぞ誇りを持って技術を磨き続けてくださいね。

私の問いかけはすぐに答えをという類のものではなく、また制度の違う国に対してのことや熟練度のことでもないのです。
今の日本で「なぜ会陰切開・縫合という医療行為を助産師は自分たちでもできると思えるのだろうか」という問いかけです。
医学知識のレベルが全く違うのに、助産師で大丈夫と思うのはどうしてだろうと考え続けています。

気持ちの上でもお時間の面でも無理のないようにして、是非、また他のエントリーでもやりとりできたらうれしいです。

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