神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

昭和14年京都のみやび会に結集した10人のコレクター群像

『わたく誌』(みやび会、昭和14年4月)は、全大阪古書ブックフェア2015において図研の出品で1000円。18頁の非売品の小冊子。巻頭には、

このたびわたくし達集りてみやび会てふもの作りいだして親しみふかくおの/\すきな道にいそしみ、をなじ道ゆく皆さまのおちから添へを乞ふになん
昭和十四年卯月
京都 み や び 会

とある。その後に、みやび会同人10人の顔写真と自己紹介が続く。同人は、
田中緑紅
武田修
中山香橘
藤井好浪
神楽
宮脇楳僊
矢野光祥
的場喜三郎
米谷徳太郎
若林壽之助
で、全員京都市内在住。
自己紹介によると、
田中緑紅は、郷土趣味社主宰。『郷土趣味』、『鳩笛』、『人魚の家』、『京都』、『郷土資料』等の雑誌を発行。本名俊次、ペンネームとして富士見雪太郎、水島清二郎、柳緑山花紅寺、緑廻家紅子。(はてなキーワードを参照されたい)
武田修は、拙ブログ「純研究蒐集趣味誌『京都寸葉』創刊号(京都寸葉会、昭和11年9月)」参照。
中山香橘は、京人形屋の老舗。
藤井好浪は、本名藤井直造、明治28年生。業種は不明だが、屋号は紀之國屋。逓郵会設立。
神楽は、神楽の屋号で代々北野で料理を業とする。『京都寸葉』47号「みやび会同人蒐集展記念号」(京都寸葉会、昭和14年6月)によると、姓は宮本。
宮脇楳僊は、本名新兵衛、明治26年1月生。賣扇庵の商号で扇子を業とする。
矢野光祥は、本名豊次郎、明治30年3月生。長兄の財産管理を業とする。
的場喜三郎は、京表具春芳堂勤務。
米谷徳太郎は、大阪生まれで絵葉書の蒐集家。米谷(よねたに)の絵葉書コレクションは大津市歴史博物館に寄贈され、平成21年の3月から4月にかけて、「道楽絵はがきーーコレクターたちの粋すぎた世界ーー」展が開催された。ちなみに、同展の「展示作品一覧」によると、本書も展示されたが、所蔵は「旧九十九黄人コレクション」である。ビックリ。
若林壽之助は、日露戦争時コロタイプ刷の美人絵葉書の流行に耽溺したのが蒐集の始まり。『京都寸葉』6号、昭和12年1月の新年挨拶に「のむらや 若林壽之助」とある。経歴は、拙ブログ「日本蔵票愛好会々員若林壽之助」参照。ブログ書物蔵の「辻井甲三郎ふたたび」によると、辻井、中山らとともに日本蔵票愛好会を創立したメンバーである。
本書と同じ内容が『京都寸葉』47号に掲載されているが、そこでは、「和多久誌」というタイトルである。同号の「みやび会同人展経過」によると、みやび会の結成は、同年3月15日。4月23日から25日まで京都駅前の丸物5階で「みやび会同人蒐集展覧会」が開催されたという。また、23日は招待者に貯金玉、同人の紹介を兼ねた名簿、出品目録を贈呈した。この「名簿」が、私の入手した冊子と思われる。そして、京都府立総合資料館が所蔵する『同人展観茂くろく』(みやび会、昭和14年)が「出品目録」と思われる。更に、同号の「みやび会展来観者芳名」に「川崎巨泉」の名があるが、ネットで見られる「おおさかeコレクション」の「人魚洞文庫」(川崎が遺した自筆写生画帳)の「京都みやび会創立記念貯金入」が「貯金玉」に当たるのだろう。