神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

クライン文庫の古書目録『クラインの壺』

古書店も閉店するとすぐに忘れられてしまう。勿論例外的に伝説として残る古書店もあることにはあるが、極一部に限られる。大阪にあったクライン文庫も四天王寺の古本まつりなどででよく拾えた古書店ではあったが、閉店して数年たち、もはや話題になることもないようだ。昨年下鴨の納涼古本まつりだったと思うが、その懐かしいクライン文庫の目録を拾った。『クラインの壺』2号(クライン文庫、1995年11月)である。68頁、2318点の古書が収録されている。池崎書店出品で100円。
「あとがきにかえて」によれば、クライン文庫は古本屋になって1年が過ぎたとあるので、1994年開業である。住所は大阪市都島区都島中通3丁目*1。古書の分類は、幻想文学の周辺、小説(純文学・大衆文学を含む)、推理・時代小説、評論・随筆・エッセイ・その他、詩・俳句・短歌、本の本・その周辺、雑学といろいろ、芸術・映画・音楽・演劇、太陽・ユリイカ・雑誌関係、絶版マンガの周辺となっている。1番目はマンディアルグ著・澁澤龍彦訳『城の中のイギリス人』(白水社、昭和57年)。米倉斎加年銅版画『黒ミサの女』サイン入り一葉入、限定200完本、米倉・澁澤両者署名入、帙・外函少痛で13万円。本目録中で最高の値段である。最近は澁澤も売れないらしいが、今だったら幾らだろうか。
目録のほか、特別企画として座談会「21世紀の古本屋」が載っている。出席者は、松宮邦生氏(松宮書店)、古川敏正氏(クライン文庫)、嶽本野ばら氏、西尾俊一氏(バー、フェネガンズ・ウェイク店長)、上念省三氏(大学図書館員)、進行役はライターの柳井愛一氏。古川氏の発言。

古書組合に入っている古本屋さんが、コンピューターネットワークを使うことを真剣に考えているんです。なぜかというと、新しいタイプの古本屋がどんどんできているんです。郊外型のフランチャイズシステムの大型店舗で、大量にリサイクル本を買ってきて流通させるので、僕らのような個人商店と違って古書組合に入る必要はない。個人経営が中心だった古書業界にとっては脅威ですよね。コンピューターネットワーク等もふくめて、なんらかの対応策が必要なのです。

時代を感じさせる発言である。古書組合によるネットの「日本の古本屋」も始まり、ネット専門店も組合に加入できるようになり、新古書店はどんどん撤退していく状況でその後の情勢は大きく変動している。クライン文庫が古本屋として戻ってくることはないと思われるが、お元気にされておられるだろうか。

*1:その後、籠目舎・光国屋書店と梅田古書倶楽部をやったり、日本橋に移転したり、ネット中心になったりした。