神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』が誕生したその時

長らく積ん読であったヘルムット・ガーンズハイム著、人見憲司・金澤淳子訳『写真家ルイス・キャロル』(青弓社、1998年2月)を読了。一つ面白い記述があった。1862年7月4日ルイス・キャロルはロリーナ、アリス、エディスの三人のリデル家の少女を連れオックスフォードからゴッドストウまで遠足に出かけ、彼女らに「アリスの地下の国の冒険」と題したおとぎ話をしてあげ、これが後に『不思議の国のアリス』として刊行されることになる。その『不思議の国のアリス』の原型が誕生することとなった日の天気だが、ルイス・キャロルは「黄金の午後」と表現し、アリスも後に「焼けるように太陽が照りつけていた」と書いている。ところが、同日のオックスフォードの公式な天気情報では「激しい雨模様」であったという。ボートに乗って遠足に行ってるので晴れていたことは間違いないはずだが、公式の天気情報と食い違っているのは不思議である。本書の著者も「残念なことに、ルイス・キャロルの日記が正しい*1のか当日の天気の記録が正確なのかを確かめる手立てはないようである。この点は、今もって謎である」としている。
謎を解く手立てとしては、その当時のオックスフォードの教員や学生の日記を当たってみればよさそうだが、そのような調査はされていないのだろうか。もっとも、本書の原書は1949年の刊行なので、それ以後天気の謎は解かれているかもしれない。今のところ、『不思議の国のアリス』が誕生したその時、ルイス・キャロルやアリス・リデルらは異次元の世界にいたと解釈するのが最も合理的(?)だろう。

写真家ルイス・キャロル (写真叢書)

写真家ルイス・キャロル (写真叢書)

*1:ルイス・キャロルの日記には「ダックワースと私は、三人のリデルと一緒に、上流のゴッドストウまで遠足に出かけた。ゴッドストウでは、土手沿いで午後のお茶を楽しみ、クライスト・チャーチに着いたのは夜の八時十五分だった。」とあるが、天気についての記述はない。