Hatena::ブログ(Diary)

神保町系オタオタ日記

2018-10-15

[]黒岩比佐子さんを好きになった人達

黒岩比佐子さんが亡くなられて7年が過ぎた。日々の雑事に追われて思い出すことも少なくなってしまった。それでも、大阪古書会館の古書展で黒岩さんを古本道に導いた中島俊郎先生にお会いすると黒岩さんのことが思い出されたりする。その他、最近黒岩さんの名前を活字で見かける機会が多かった。たとえば、

東京堂書店の週間ベストセラーでいきなり文芸部門1位、総合2位となったカラサキ・アユミ『古本乙女の日々是口実』の書物蔵氏による解説「古本の新しい価値についてーープギュラタさんを見て思ふこと」にカラサキさんの先輩の女性古書コレクターとして黒岩さんが登場する。実は私も古書会館で黒岩さんの勇姿を見たことがある。名前に合わせたわけでもなかろうが黒いスーツ姿が多かった黒岩さんだが、その時はモスグリーン上着で今も脳裏に焼き付いている(「古本の女神に出遭ふ」参照)。

村井弦斎著・村井米子編訳『食道楽』(中公文庫)の土屋敦氏の解説でエピソード紹介に使用した黒岩さんの『『食道楽』の人村井弦斎』が絶版なのは実に残念としている。

・昨日(10月14日)の京都新聞書評面の「ページをめくれば」欄に白山眞理氏が黒岩さんの遺作『パンとペン』を紹介する中で、黒岩さんが井上孝治の評伝を書くために白山氏の勤務する日本カメラ博物館に通ってきたことから懇意になったことや同書がずっと書棚にあるがまだ読むことができないことが書かれていた。

そして、梯久美子氏の『好きになった人』(ちくま文庫)に収録されている「黒岩比佐子さんの遺作『パンとペン』」。読売新聞書評委員会で知り合い、執筆中だった『パンとペン』で扱っていた堺利彦を熱く語った黒岩さんとの時間を思い出している。なお、梯氏の書は『猫を抱いた父』を改題して文庫化したものである。『好きになった人』というタイトルに変えたのは良かった。私も黒岩さんのことが好きでした。

好きになった人 (ちくま文庫)

好きになった人 (ちくま文庫)

2017-11-17

[]黒岩さん、ありがとう

善行堂経由で某先生の論文抜刷りをいただいていて、御礼を言わないといけないなあとずっと思っていた。先生は古書展でよくお見かけする常連の一人なので声をかける機会は何度かあったのだが、なかなか面識のない人に話しかけるのは難しいものであった。今日も古書会館前でお見かけしてどうしようかと迷ったのだが、ちょうど二人だけになる瞬間があり、思い切って挨拶してみた。先生の方も連絡を取りたいことがあったそうで、勇気を出した甲斐があった。

後から判ったが、今日は黒岩比佐子の命日でもあった。黒岩さんもやってくれるなあ、引き合わせてくれたんだ。

2013-05-14

[]『こころ』の特集「自伝・評伝を愉しむ」に黒岩比佐子さん

『こころ』12号の特集は、「自伝・評伝を愉しむ 「人間」を読むこと、書くこと」で、西木正明氏と梯久美子さんの対談「「人間」を描くということ 小説とノンフィクションのあいだ」が掲載されている。そこで梯さんが黒岩比佐子さんに言及している。

梯 『パンとペンーー社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』は黒岩さんらしく、資料を徹底的に発掘して、うまくそれに語らせています。

 売文社というのは今でいう編集プロダクションなんですね。私もそうなんですが、黒岩さんも編プロ出身なんです。だから私たちのルーツはこれだったって、彼女と盛り上がったことがあります。

  (略)

 わたしも彼女も食べていくためにあらゆるものを書いていました。(略)

梯さんも、黒岩さんのことをいつまでも忘れない存在の一人だ。

なお、同特集の「私の本棚からーー自伝・評伝の図書館」で河合香織氏は、『パンとペン』を十冊のうちの一冊に選んでいる。

かぐら川かぐら川 2013/05/14 22:00 おっ、オタさま、ブログ世界に2カ月ぶりに登場ですね。
黒岩さん、“食べていくため”というプロライター根性も、テーマを探り・語るプロライター矜持もいよいよ全開という時期に私たちの前から消えてしまわれました。でも読み返し、発見する愉しみを私たちに残してくれています。グスン。

エイヴリエイヴリ 2014/02/26 11:08 jyunkuさん、お久しぶりです。
このブログを、アメリカの古史古伝の研究本に引用しました。
写真はこちらです。➡ http://imgur.com/3hKtIC9
詳しくは、こちらです。➡ http://avery.morrow.name/chokodai/

2013-02-17

[]すごいぞ、鳥取県立図書館の橋浦泰雄関係文書

以前「発見された売文社の機関誌『パンとペン』創刊号」で紹介した『パンとペン』創刊号発見の件。『トスキナア』13号、2011年5月の「うわさの風」欄の「【『パンとペン』は何処にありや!】」(中岡)で公表されたものである。引用すると、

売文社の宣伝用の機関紙『パンとペン』は残念ながら発見されていないという。(略)私はたまたまその創刊号(大正八年八月一日発行)の現物を数年前に手にすることが出来て、興味ある部分だけ筆写していた。

(略)所蔵先は鳥取県立図書館二階郷土資料室。その書簡類だけでも一万通を超える膨大な量にのぼる『橋浦泰雄関係文書』の中に埋もれていた。

いつの日か、黒岩さんに代わって、鳥取県立図書館へ閲覧に行きたいものである。

2013-02-12

[]ツヴァイクに伍する黒岩比佐子さん

以前猫猫先生に御教示された安宅夏夫「夏目漱石と堺利彦」『群系』26号を読んだ。黒岩さんの『パンとペン』に讚嘆した次第が書かれていて、最後には、

在野の歴史家として、また評伝作家として、黒岩比佐子は、かのツヴァイクに伍していける人であった、と思う。

とある。ツヴァイクって、読まないので、ピンとこないが、最大級の賛辞なのだろう。黒岩さん、喜んでいるだろうなあ。

なお、ネットで全文が読める→http://blog.goo.ne.jp/ataka720/e/1e91bde5bf9d4f05f50ec5466bda98c8

2012-11-23

[]黒岩比佐子と花田紀凱

石井光太責任編集『ノンフィクション新世紀 世界を変える、現実を書く。』(河出書房新社、2012年8月)の「ノンフィクションベスト30」は、柳田邦男、角田光代、鎌田慧、上杉隆ら様々なジャンルの16人の表現者がベストノンフィクションを選出。そのうち、花田紀凱氏は、黒岩さんの『パンとペン』と『「食道楽」の人 村井弦斎』を選んでいる。同一の著者から二冊も選ぶとは、破格の扱い。前者だけでなく、後者の本もあげるとは、我が意を得たり。

黒岩さんは、「古書の森日記」2008年2月24日のコメント欄で、花田氏により『編集者国木田独歩の時代』が『WiLL』や「夕刊フジ」で紹介されたことを喜んでおられたから、今回も喜んでおられるかしら。

2012-11-21

[]黒岩さんだからこそ書けた『パンとペン』

『寄せ場』24号、2011年5月に中西昭雄氏による黒岩比佐子パンとペン』の書評*1

こんにちまで、堺については、幸徳秋水や大杉栄といったラジカルな存在に比べると語られることが少なかったことも、黒岩のようなフリーランスのライターにしてはじめて「売文」の苦衷を知ることができる、という事情を反映しているのだろう。

確かに、本書は、従来の研究者ではなく、ライターでかつ古本者だった黒岩さんでなければ、書けなかった力作だ。

*1:「「文を売って、志を守る」を開拓した先駆者の評伝ーー黒岩比佐子パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』を読む」